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クロスステッチの魔女と中古ドールのお話  作者: 雨海月子
9章 クロスステッチの魔女と魔女の掟
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第178話 クロスステッチの魔女、おさらいをする

 お茶を淹れて一息ついて、《ドール》達の様子を見ながら私は裁縫箱を開いた。グレイシアお姉様からいただいた魔法の図案の一部、攻撃魔法の練習を始めることにする。


「使いどころを考えないといけない魔法ばっかりだけれど、確かに覚えておいて損はないのよね」


 と言っても、おとぎ話や寝物語に聞かされていた魔法程凶悪なものではない。あくまで、今までの私が使っていたものよりは強い、という程度だ。取り扱いを間違えれば危険なのは、大体の魔法に対して元からそうなのだし。


「夢芯草の実の汁で染めて、火ノ粉石を一昼夜晒した水に浸した魔綿の糸。薄紅色に染めた布で、炎の紋様を刺す、と……お師匠様やグレイシアお姉様は布に刺しているけれど、やっぱりリボンの方が持ち歩きがしやすいのよね」


 リボン刺繡の二等級魔女アルミラ様の弟子として拾われて、二十年。二十年の間、私は結局リボン刺繡を教えてもらえなかった。クロスステッチの魔女、を名乗るだけで、クロスステッチしか使えなかった。


(多分、最初はお師匠様の手首に巻かれていたのを見たからだった)


 今思うと、あれは恐らく巻尺か何かを巻きつけていたのだろう。でも、手首に魔法を結んで動くのは悪い考えではないと思ったのだ。その分細かい刺繍が必要にはなるし、リボンにするには難しい魔法もある。だけど、私はこれが嫌いではない。


「マスター、イヴェットにも何か作ってあげてください。飛ぶ魔法とか!」


「今作りかけてるのが終わったらね。《浮遊》があれば、空を自在に飛ぶ……のは難しいかもしれなくても、落ちて怪我をすることはないだろうし」


 ルイスの提案を、どうして自分ではすぐに思いつけなかったんだろう。私はそんなことを思いながら、金と赤に光る糸をリボンに刺していった。糸の始末をしてから、イヴェットを抱き上げて重さを確認する。


「これくらいの大きさと重さなら……うん、今家にあるもので作れるわね。イヴェットはちょっと待ってて、ルイスは荷物持ち手伝って」


 倉庫部屋から必要な素材を出してこようかと思ってみると、今回使ってしまったらストックがなくなってしまいそうだった。素材そのものはあるので、一緒に出してきて作ることにする。イヴェットを載せてる作業机の上には小型の織機があって、リボンはこれで織ることもあった。お師匠様から、そう教わったのだ。


「また今度、色々買いに行かないとね……」


「すでに結構色々あるように見えますよ……?」


 そうは言うけど足りないのよ、と言いながら戻る。使える魔法が増えたからこそ、買っておきたいものも多かった。

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