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クロスステッチの魔女と中古ドールのお話  作者: 雨海月子
9章 クロスステッチの魔女と魔女の掟
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第165話 クロスステッチの魔女、攻撃の魔法を作る

「それと一応、『守る』魔法だけでなく『攻める』魔法も覚えておおきなさいな。何か使えるのはある?」


「えーっと……、《発火》とか《流水》とか《つむじ風》、《石礫》とかの、ちょっとした魔法しか教わってないです。それより強い魔法は、お師匠様の本に載ってましたけど……使いそうな機会がなかったから、作ってなくて」


 護りを固める魔法を作った後の心地よい疲労を、温かい紅茶がじんわりと緩めてくれる。見せて、と言われたので、お姉様に私が刺繍したリボンや小さなハンカチ程度の大きさの布を見せた。グレイシアお姉様は、また別の図案の絵を飛ばして持ってくる。


「じゃあ、そろそろこういうのも作っておいた方がいいと思う。フラフラあっちこっち出かけるようにもなったんでしょう? この世には悪い人間もいるし、悪い魔女もいるし、そもそも魔物に襲われる危険性、認識してる?」


「う」


 あまり大事にならないでいたから、気にしないでいた。最近は投げるための石もカバンに入れてるし。魔女なんだから魔法で攻撃できるようになれと言われたら、確かにそうだ。


「また石投げてたの?」


「投げてました。投石器に刺繍をした布を張るのも考えましたが、手で投げた方が早いし……」


「じゃあせめて手に巻く布に魔法を刺しておきなさい」


「はい」


 攻撃魔法の図案をいくつか見ていると、実際に刺したものをグレイシアお姉様が持ってきてくれた。お姉様はリボン刺繍をよく使うけれど、クロスステッチもされる。というか、お師匠様は最初は皆にクロスステッチを教えるのだそうだ。その後に、リボン刺繍などを教えられる、はず、だった。私には教えてくれなかったけれど。『あんたはクロスステッチだけやってなさい、他は無理だと思うから』と言われてしまったけれど。いつかリボン刺繡も教えて欲しい。


「グレイシアお姉様、この《風の刃》を刺してもいいですか?」


「いいわよ。取り扱いには気を付けてね」


 素材は手持ちで足りているから、リボンに刺繍を刺し始めた。これに魔力を通すと、どういった形で《風の刃》が出るのかはちょっと気になるけど、それは今度じっくり試してみることにしよう。

 私の手元をグレイシアお姉様が見つめている、やや緊張する時間が流れた。刺繍を半分ほど刺した辺りで、グレイシアお姉様がふと顔を上げられる。私も、何か気になる感覚があった。頭の一番上の髪の毛が、ぴりっとしたような感覚。冬場に小さな電気を浴びた時のそれに近いけれど、電気の元になるようなものは近くにないのに。


「グレイシアお姉様、これは……?」


「結界の魔法が作動して、誰かが玄関から来るみたい。あなたはここにいなさい」


 グレイシアお姉様の顔は硬かった。

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