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クロスステッチの魔女と中古ドールのお話  作者: 雨海月子
8章 クロスステッチの魔女と春
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第160話 クロスステッチの魔女、姉弟子の家に滑り込む

「グレイシアお姉様ー! クロスステッチの魔女ですー!」


 箒の房から小枝がぽろぽろと零れ落ちるのを感じながら、なんとか着陸する。《引き寄せ》と《加速》を振り切ったらすぐ外しても、箒には負担が大きかったらしい。少しガタが来ているようだったので、後で修復した方が良さそうだ。

 箒から降りて、グレイシアお姉様の家の戸を叩く。すぐにお姉様自身が出てきてくれた。


「よかった。クロスステッチの魔女、ちゃんと来れたのね。《身代わり》はちゃんとできた?」


「はい、できました。あの雲は投げた手鏡を追いかけていったので、その隙に」


「教えてあげるからここで《身代わり》や《気配消し》を作っていきなさい。役に立つから」


 グレイシアお姉様の家の中に私たちが入ると、念のためだろう。お姉様は家の外に刺繍された布を投げて魔法を発動させた。私では作れないような、細かく強力な結界だ。お姉様の《ドール》達の何人かが、武器を持って玄関の近くに散らばる。今日のお姉様は気合を入れてか、男物の服の中でも動きやすそうな……兵士のような服だった。


「それにしても、あれは何だったんでしょう? 魔女組合では、何かこう……捕物のようなことがあると聞きましたけど」


「じゃあ、その一環で相手の魔女が張った罠かもしれないね。その場合は恐らく、魔女を追いかけるように命令が縫い込まれていたんだと思う」


「マスターは運がなかったんですねえ」


 ルイスの言葉に「そうみたいね」と言っていると、私達を見つけて駆け寄ってくる小さな影があった。ルイスに剣を教えていた《ドール》、ルークだ。


「ルイス! 剣の練習はしてた?」


「はい、ちゃんとやってました、ルーク先生! 木剣でこの間、魔兎も倒せたんですよ」


「それは成長したな。……魔女様方、ルイスをお借りしてもいいですか? おれの剣も貸すので、魔女様方の護衛を教えたいと思いまして」


 丁寧に私たちに礼をして聞いてくるルークの視線を受けて、グレイシアお姉様が私を見る。私が頷くと、ルイスは「マスターのお役に立てるように頑張ります!」と一礼してくれた。


「ルーク、それならあれを渡してしまおうか」


「はい、持ってきます」


 ルークが一礼していなくなったかと思うと、細い木箱を抱えて戻ってきた。ルークが箱をルイスに渡したので開けさせると、中に入っているのは金属の輝きを持った剣だ。本物の、刃のついた剣。


「魔兎を狩れたというなら、渡してもいいだろう。きみのマスターを護るために振るってもらう、本物の剣だ」


「わぁっ……!」


「すみませんお姉様、いつ普通の剣に切り替えるべきかわからなくて用意できなくて……」


 私がグレイシアお姉様に頭を下げると、「いいのよ私の趣味のようなものだし」と笑ってくれた。

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