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クロスステッチの魔女と中古ドールのお話  作者: 雨海月子
7章 クロスステッチと魔女志願の乙女
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第132話 メルチの乙女、占い結果を聞く

 突然現れた、姉様のお師匠様だと魔女。見た目の年は姉様とそこまで離れていないように見える彼女は、私の前に三枚の伏せたカードを並べた。その、向かい合わせで見ている私から見て右側……魔女から見て左側のカードは、青い星型の花を糸が囲んでいる絵だった。誰も何も言わないまま、真ん中のカードがめくられる。今度は、糸切り鋏が黒い糸を切ろうとしている絵。三枚目は……糸車が、生成と白の二種類の材料から縒り糸を作る絵だった。


「おや」


 魔女はそう呟きながら、爪でコンコンとめくらなかったカードの山と私が渡した髪の毛をつつく。すると髪の毛はひとりでに浮き上がり、しばらくくるくると回ったかと思うと、針が何かのようにまっすぐと倒れた。しばらく彼女は口の中でぶつぶつと呟いていたかと思うと、「わかったよ」と気負わない様子で言った。


「さすが、お師匠様! それで、どうだったんですか?」


「この子は魔女にはならない」


 私としては、魔女の生活も悪くなさそうだと思っていたところだったのに。なのにそんなことを言われて、気に障らないわけではない。とはいえ、詳しく結果を書かなくては詳細がわからないだろう。だから大人しく、聞く姿勢を取った。父上に見つかって帰される、とかだったらなんとしてでも逃げないと。


「この子がメルチを求めてここに来たのは、ひとつの大きな運命の転機だ。けれどもう一つひっくり返って、あんたは人間の世界に帰っていく……そんな顔をするでないよ、いい出会いがあるからさ。春になったらここから西の森に行って、しばらく木のうろで暮らすんだ。そうしたらあんたに出会いがある。いいものだから、恐れずにお行き」


 魔女の目には何がどのように見えているのか、私にはさっぱりわからなかった。彼女が見ているように話す内容は、私には自分のことではないように思える。けれど姉様の様子を見ると、信憑性の高い話だと言うのはわかった。


「その時は千匹皮と名乗って、胡桃にドレスも入れてお行き。そいつらが道を開いてくれるから」


「わかり……ました」


昔見た占い師は、曖昧な言い回しをすることが多かった。具体的にどういうことかはぐらかそうとしても、教えてくれなくて。占い師の大体は魔女ではなく、ただその辺りの感覚が鋭いだけの人間だという。つまり、これが魔女の中でも優れた占い手ということなのだろうか。この占いの結果には、煙に巻くような言葉はほとんどなかった。


「そんな顔しないの。春までまだ時間はあるし、何より家事は変わらずやってもらうからね!」


 姉様はそう言って、私の背中を叩いていた。

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