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クロスステッチの魔女と中古ドールのお話  作者: 雨海月子
7章 クロスステッチと魔女志願の乙女
119/1023

第119話 クロスステッチの魔女、みんなでお出かけする

 次の日は綺麗に晴れていた。抜けるような青い空の下で、私はぐるりと空模様を見渡す。雪雲の見えない、綺麗な空だった。天気が崩れる心配は、あまりしなくて良いだろう。よかった。


「天気も大丈夫そう。メルチ、防寒具の具合はどう?」


「大丈夫です、姉様」


 まだ《肉あり》とはいえ、魔女になってからの年月の方が上回ってきている私には、この冬の寒さが人間にはどれくらいのものかわからない。だから、私の靴と外套を着て家を出てきたメルチが「服のおかげで、雪の中なのに過ごしやすいです!」とくるくる回ってみせたのに少し安心した。


「ルイスもメルチも、もしも《防寒》が足りてなさそうだったら、重ねがけするから言ってね」


「わかりました」


「はい、マスター」


 頷く二人に対して、アワユキは雪の中をころころと転がるのに夢中であまりこちらの話を聞いていないようだった。まぁ、別に構わない。今はまだ雪兎に宿っているアワユキにとって、新鮮で柔らかい雪というのは良いもののようだった。春になって雪が溶けるまでに体になるぬいぐるみを作れれば、こういうことはもうしなくなってしまうのかもしれない。かわいい様子を覚えておかなくては。


「南にとりあえず歩いて、アワユキに使える素材を探しまーす。今回は『紫色の石』をアワユキに使うつもりで探すけど、それ以外に面白そうなのがあったら教えてね」


 三者三様のいいお返事が返ってきたので、私は箒を鞄にしまいながら出発の音頭を取った。ルイスとメルチは手を、アワユキは耳を上げるので、ゆっくりと歩き出す。ルイスとメルチには、それぞれポシェットを渡していた。寒いし素手で触れると危ないものもあるから、手袋は三人必須だ。箒にルイスを載せるだけならともかく、アワユキやメルチを載せて落とさない自信がないから、さくさくと雪を踏んで歩いている。


「姉様、寒いとあまり動物もいませんね」


「種類によっては、寒い中歩き回ってる動物から魔法を使ってでも全力で逃げないといけないのもいるから、何か見かけたらすぐ言うように」


 メルチの言葉にそう言ってると、私の足跡をなぞって歩いていたルイスがかわいらしく首を傾げた。


「どういうのがいるんです? 冬に歩いてて、魔女でも逃げないといけない生き物って」


「魔物、も怖いけど動物にね。一種類いるのよね。冬眠できてないクマは、下手に出くわすと真面目に危ないから……」


 グレイシアお姉様のところの、戦いに長けた《ドール》達も進んでは戦いたくないと言っていた。そんな話をしている間にも、魔力のありそうなものや、単純に役に立ちそうなものを私が率先して拾う。そうしながら三人の様子を横目に見ていると、アワユキの気になるものをルイスが自分のポシェットに入れてあげていた。かわいすぎる。

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