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クロスステッチの魔女と中古ドールのお話  作者: 雨海月子
7章 クロスステッチと魔女志願の乙女

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第116話 クロスステッチの魔女、占いをする

 メルチが私の家に転がり込んで来て、二人の生活にも慣れた。彼女には日課として《パン作り》や《砂糖菓子作り》の刺繍を教え、時々それに魔力を通してもらう。「自分の食べるパンくらいは、自分で出してもらわないと」ということで、練習をさせていた。


「姉様、姉様、見てください。《砂糖菓子作り》の魔法、今日こそは成功させてみせます!」


「その前にちょっと見せて……うん、正しく刺せているようね」


 やってみてごらん、と言って確認した刺繍を手渡すと、メルチはむむむ、と唸る。刺繍に弱々しい魔力が通って、刺した模様の一目一目にじっくりと渡っていく。まだ見習いとしてうちに来て一年も経っていないのに、彼女は少しずつ魔力を扱えるようになっているようだった。彼女は今日も失敗してしまって、出てきたのはお砂糖の粉だけ。とはいえ、最初に試した時よりは量が増えていた。そのうち、うまく形になれるかもしれない。そう考えたところで、首を横に振る。


(メルチは、あくまで問題が解決するまでうちにいる立場。魔女として本当にこちら側に踏み込むとしても、私が師匠にはなれない)


 そう思いながら、私は彼女のためにできることをしようと思った。アワユキの中身に使いたい青空胡桃はメルチが予備で持っていたものをもらったけれど、他にも集めたい素材はある。そちらも合わせて。


「今日は占いをするわ」


「占い、ですか? マスターは今まで、占いをするのを見たことがないですよね」


 ルイスの言葉に「そうね」と簡単に頷く。実際、私は今まであまり占いというものをしたことがなかった。これは深い理由があるわけではなく、気ままに出歩いたり、調べた情報で出かける方が好きだったからでもある。だけど、メルチのことやアワユキのことを考えると、ある程度の指針が欲しかった。


「魔銀に導き石の占い針に、星の砂。アワユキの雪のひとひらと、メルチの髪を一本。星の砂で満たしたボウルへ雪を入れて、メルチの髪を通した針をぶら下げて……」


 今回は占いたいことが二つあるから、手順が少し複雑だった。ひとつひとつについて別に占えばいいと人に言われるかもしれないけれど、星の砂の量が心もとないのだ。そこに二つのことをまとめて聞ける手順があるのだから、それを採用することにした。あまり占いをする気がないからと言って、星の砂の手持ちが少なくなった時に補充しておかなかったのは痛い。海辺に行かないと採れないから、冬には行きたくない場所だった。だって寒いんだもの。


 魔力を通すと、針が震える。《探し》の魔法に似ているが、《探し》よりも漠然としたものを探したいときに使うのが占いだという。震える針は、何かの図を描いて私に何かを示そうとしているようだった。

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