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クロスステッチの魔女と中古ドールのお話  作者: 雨海月子
45章 クロスステッチの魔女、「家」に帰る

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1063/1069

第1063話 クロスステッチの魔女、思いきり寝過ごす

 思ったよりも疲れていたのか、それとも『家』に帰れて安堵したのか。食糧庫の残りと旅で食べきれなかった分をスープに煮て、簡単な夕食にした。それから買い揃えるものを書き出して、ベッドに入って、すぐに眠ってしまって。


「あれ、夕方……?」


 朝ではなく、夕方に目が覚めた。


「あ、おはようございますマスター。お疲れかと思って、そのままにしておりました。丸一日と半日が経っています」


 丸一日寝た後の、次の日の夕方……つまり、帰ってきてから三日経っているらしい。ルイス達はすでに掃除をしてくれていたらしく、私の寝ていたベッド以外は綺麗になっていた。前にもこんなことがあった気がする。あった。絶対に。


「そこまで疲れてないと思ったんだけれどなあ」


「でも主様、おうちに帰って来れたの楽しそうだから、安心したとかー? 巣穴に帰った狼みたいだった!」


「あらま。もう夕方だと門も店も閉まってるだろうから、買い物は明日だねぇ……」


 今から近くの街に行こうとしても、夕暮れの鐘が鳴れば街は門を閉める。もちろん天井を覆っているわけではない街のことだから、魔女の箒で上から飛び込むこと自体は可能だ。とはいえ、夕方となれば店は一日の商売を終えた後。大した品は残っていないだろう。二度手間になるくらいから、最初から明日の朝に行った方がいい。


「本でも読むかあ」


 お師匠様に見つかったら叱られるだろうけれど、私が私の本をどう扱ってもいいはずだ。多分。元はお師匠様のだけれど。というわけで、簡単に食べて体を清めてからは、分厚い魔法の本を枕元に広げて眺めることにした。いつの間にか、開けるページも増えているような気がする。

 基礎の魔法も、あの小さな布で作り溜めたいのでおさらい。それから、今まで作ってきた魔法や、これから作っていく魔法を見ていく。時々、刺繍の技法についてページを割いている場所や、単なる美しい刺繍――魔法としての効果が今のところ確認されていない、と但し書きのされた図案の説明があったりした。やっぱり、こういうものを広げて考えるのは楽しい。とりあえず、魔法のない普通の布と糸を使って、一部の刺繍をちくちくと刺してみることにした。


「こういうのから魔法が出たりした事例もあるって、お師匠様、言ってたっけ」


 魔法には色や素材も関わるから、変えてみたら魔法になった、ということもあるらしい。魔法のないただの布と糸で作れば、本当に魔法として成立はしない。ただ、そこで魔力を感じたりしたことで、『この模様には魔法の力がある』ことは確定するとか、しないとか。生憎、私はまだ経験したことがなかった。

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