第1051話 クロスステッチの魔女、若い魔女と話す
私に話しかけてきた四等級魔女は、かぎ針編みの魔女と名乗った。四等級なので、まだ名前を名乗ることは許されない。淡い金色の髪に、薄い空色の目をしている、全体的に白っぽい魔女だった。見た目は私より少し下の、十代くらいだろう。服も黒というより灰色で、とてもよく似合っている。自分に合う色というものを、しっかり把握しているのだろう。魔法を編んでいると思われる、編み物の付け襟もいい趣味をしていた。
「私、四等級になってからまだあんまり経っていないんです。それで、お金と経験のために色んな依頼を受けているところで」
「なるほどねえ。私はクロスステッチの三等級魔女、キーラよ」
「早く名乗れるようになりたいものです」
彼女はうんうんと頷いた。「名前を名乗れないの、なんだかすごく変な感じがして」と呟いた。
「それに、早く私の《ドール》も欲しくて! 挨拶させてもらっていいですか?」
「ルイスといいます」
「アワユキだよー」
「キャロルですわ」
「ラトウィッジです」
四人がそれぞれに挨拶したのを見て、彼女は「すごい!」と目を輝かせた。
「いいなあ、迷うなあ、私、自分の《ドール》をどんな子にするか、全然決められないんです」
「あなたのお師匠様とかはどうしろって?」
「直感で決めたって……」
まあ実際、私も縁と直感で決めたので、決めた基準に対してあんまり若い魔女に物を言うことはできないのだけれど。
「ルイスは、中古で売られていた子だったの。あちこちちょっと怪我をしていたんだけど、私の師匠が修復師をしている魔女でね。一緒に直したの。アワユキはちょっと特殊なコだから、あんまり若い魔女には真似しづらいかな」
「あの、では残りの二人は?」
「キャロルもルイスと同じところで。ラトウィッジは、クジで当たった瞳と縁あって手に入れた体に、買った《核》を入れているわ」
本当はルイスとキャロルの《核》は特殊な物だったりするのだけれど、それを離すことは刺青で縛られているし、そもそも初対面の魔女にそこまで事情をぶっちゃける気もない。というわけで、一般的な魔女と《ドール》の話をしておくことにした。
「あの、お服は……」
「マスターが作ってくれました!」
「刺繍の魔女だからね、作った物を縫い付ける感じで、こう」
「なるほどー……」
編み物だと冬服か装飾品になりがちで、と魔女は少し残念そうに言った。確かに、私が刺繍した魔法を服に縫い付けるようには、編み物を取り入れるとなると難しいのかもしれない。
「でも私、細い糸で小さいものを作るのは上手なんです。早く、自分の子に着せてあげたいなあ」
そう言う彼女の顔は、見た目とほとんど変わらないようだった。




