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クロスステッチの魔女と中古ドールのお話  作者: 雨海月子
45章 クロスステッチの魔女、「家」に帰る

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第1047話 クロスステッチの魔女、お買い物する

 それからの旅路は、夏を終え、秋が来るのを感じながらのものだった。少し鈍くなった魔女の肌にも、冷え込みつつあるのを感じてくる。そんな頃合いになってくると、旅の身空であまり資源を取りすぎてはよくないだろうと、いつも以上に気にするようになった。とはいえ、人間には価値がなくても魔法に使える素材はあるので、そういうものを時折、見かけては摘み取った。全部ではなく、来年もそこに生えそうなくらいの少量にしたのは、念のためだ。近くに私が知らないだけで魔女がいる可能性だって、まったくないわけではない。

 《探し》の魔法は、せっかくなので少し大きめの魔女組合支部を探させている。地図にも出させた感触から見て、そこまで寄り道がひどい旅にはならないだろう。道なりにそのまま、とはいかないようだったけれど、まったく見当違いの方向ではなかった。


「あるじさま、そろそろ日が暮れてしまいますわ」


「さっき通りがかった街で泊まっておくべきだったねー?」


「そうねえ、次がそんなに離れてないみたいだから強行しちゃったけど、もうすぐ秋なんだったわ。暗くなるのが早ぁい……」


 などといううっかりで野宿をすることもあったし、翌日にその反省で、少し早い時間に宿を取ったりもした。


「ちょっと早……早す……まあいいか、街を見て回れば」


「組合はこの街にはないんですの?」


「魔法の気配がないから、小さいものもないわね。普通に市場を見ていくことにしましょうか」


 ……ということで市場を見て回っているうちに、ついつい余計な買い物をしてしまうことも少々。


「魔女様、もうすぐ冬だけど冬用の服はあるかい? 魔女様なら作るんだろうが、この毛織りの布は使うかね。一巻き、お値段はこれくらいだよ」


「これは中々いい羊の毛織り……買うわ!」


「あとここに、服にするほど大きくはないけど押し布もあるよ」


 羊の毛をよく叩いて重ねた後、石鹸の粉を溶いた水に濡らして押し固めることで面白い素材になるのだ、と説明された。確かに厚手の布なので、面白いから買うことにする。何に使うかは……これから考えよう、うん。


「新しい服の仕立ては、やるなら家で一気にやりたいわね……」


 そんなことを考えながら歩いていると、今度は布に使う染め粉の店があった。染め粉は今買った押し布にも使えるそうなので、ちょっと青や赤を買ってみることにする。


「早速染めるんですか?」


「まさか! 干して乾かすにも時間がかかりそうだし、帰ってからよ」


 冬にやることがどんどん増えてる気がした。

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