表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
クロスステッチの魔女と中古ドールのお話  作者: 雨海月子
44章 クロスステッチの魔女と彼女の故郷

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1015/1070

第1015話 クロスステッチの魔女、謝られる

 バア様の家で話し込んでいるうちに、気づけば、窓から入り込む日の光は随分と傾いていた。そして、家の外から人の話し声がちらほらと入ってくる。


「そう、魔女様って村の……」


「本当にいたんだ……」


「村長が走って……」


 等等、うんぬん、かんぬん。そもそもこんな村で隠し事も難しいから、すぐに広まるとは思っていた。とはいえ、広まるなら明日くらいだと思ってたんだけどなあ?


「お前、村にそのまま住む気か?」


「温泉に入りにきたのも、半分本当。半分は……私が知っている人が、一人くらいはいるうちに、村を見ておこうと思ったの。知ってる人が誰もいなくなったり、村自体がなくなってしまう前に、一度くらいは、ね」


 だから冬の備えの邪魔にならない程度で帰るわよ、と言うと、義兄さんはホッとしたような、残念そうな、寂しそうな顔をした。それも一瞬のことで、すぐに元に戻る。


「そうか。魔女が村にいれば、何かあった時安心だと思ってしまったが……魔女のことを、井戸や道路のように考えてはいけないからな……親父に殴られる」


「ああ、村に魔女が来てた時、そんなこと言ってたわね」


「あ奴にはたっぷり、そうやって痛い目を見た者の物語をしておいたからのぅ。語り部の婆の話を聞いて、思い直せるのであれば、それは婆の覚えている物語が役に立っておった証拠じゃ。キーラ、あんた達魔女の方にだって、そういう物語はごまんと伝わってあるじゃろう」


 私たちの会話に、さらりとバア様が新事実をぶち込んできた。後半は確かにそうだったので、頷いておく。軽い気持ちで頼まれごとを無償で引き受けているうちに、段々とそれが過剰になって潰された魔女や、魔女が逃げたために破滅した村や町の話は沢山あった。


「魔女は長く生きるゆえ、そういう問題がある、か。キーラ、もし俺やサーシャの子孫が無茶なこと頼んできたら、俺の名前出して断っていいからな」


 ――元々この村でのお前をそういう風に扱っていた、俺達が言えたことではないけれど。

 その言葉に、私は少し首を傾げた。物憂げな顔で見られてはいるけれど、今ひとつしっくり来ない。後半には同意するものの、そういうのは一応、元から断っているつもりだ。


「マスター、どうしてそんな不思議そうな顔をされてるんです?」


「そういう風に考えられるって、あまり思ったことがなくて……豆パンは嫌だったけど」


「俺も嫌いだ。だからとりあえず、豆パンを食べずに済む村を目指しているんだ」


 私の言葉に少し、義兄さんは笑ってくれた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ