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クロスステッチの魔女と中古ドールのお話  作者: 雨海月子
44章 クロスステッチの魔女と彼女の故郷

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1010/1070

第1010話 クロスステッチの魔女、気づかれる

「なんだか、その……バレるとすごく、照れるというか、恥ずかしくなるというか」


「その青い目は、珍しいから覚えておるわ」


「え、え、どういうことなの?」


 混乱した様子のサーシャや、お茶を出そうとして戸惑った様子のネエ様の様子が面白い。私は慣れた様子で椅子に座った。


「昔、村長の家の養いっ子が魔女にもらわれていったと聞いたけれど……」


「こやつがそれ(・・)じゃ」


「バア様、それって三十年前って言ってなかった? 魔女さま、そんなにお年寄りじゃないよ?」


 三十いくつは人間でもお年寄りとは言わないと思うよ、サーシャ。


「魔女は魔力が育てば、年を取ることをやめるのよ。だから、何百年だって生きることもできる……そうよ。私は養いっ子だった村娘のキーラ」


 木の玉を見せると、ネエ様はそれで納得してくれたようだった。物語を覚える度に与えられる玉。これを沢山持っているのが、語り部の証だ。私も一個だけ覚えられたからって、玉を貰えた。


「なんで言ってくれなかったの? あのお話の養いっ子なら、お父さんの友達でしょう?」


「友達かはちゃんと確かめたことないけど、まあ、同じ家には住んでいたかな? ……ちょっと恥ずかしくて」


「気づかないとは、あやつもまだまだじゃな」


 バア様が、ふんと鼻を鳴らして椅子に座る。


「まあ確かに、三十年前のあんたは髪の毛だって男の子みたいに短くて、細っこくて、かなり小さかった。女らしい振る舞いも落第だったから、早々に匙を投げられて帰ってくると思っておったよ」


「……魔女のお師匠様には最初、髪を伸ばすところと立ち居振る舞いと、言葉も全部直されました」


「その割には、発音がこちらに近いぞえ」


「う」


 文字にすると差はないのだろうけれど、いくつかの言葉の発音が戻ってきている実感はあった。お師匠様に再会する前には、言葉を戻しておかないと怒られるだろうな。間違いなく。


「マスター、でも、気づいてもらえてよかったですね。心配してらしたもの」


「なんで言うかなあ!」


 ルイスにバラされて、私はつい顔の前で手をバタバタと振ってしまった。ネエ様が出してくれたお茶を飲むと、昔と変わらない味がする。ちょっとだけ山羊のバターを落としたお茶は、この家でしか出なかった味だ。山の外だと牛の乳のバターが主流で、山羊の乳のバターの方が出回っていないから、この味にはならない。


「……懐かしい。この味」


「三十年どころか五十年以上、この味は変わらぬからの」


「三十年も経っていないとはおもうのだけれど」


 私がそう反論すると、バア様は「たわけ、それくらい経っておるわ」と昔のように怒った。

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