表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
クロスステッチの魔女と中古ドールのお話  作者: 雨海月子
44章 クロスステッチの魔女と彼女の故郷

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1007/1070

第1007話 クロスステッチの魔女、故郷で休む

 温泉から出て、魔法を使わずに風や空が髪を乾かすのに任せる。今が、心地よく乾くのを待てる唯一の季節だろう。女達の大半が髪を短くしているのは、長い髪の手入れと維持が大変だから。そして長いと、乾くのに時間がかかるからだ。今はいい、まだ夏だから。しかし、秋から冬にかけて髪の毛が冷えてしまうと、風邪を引く。そして、風邪ひとつでも、医師や薬草に乏しい村では命取りだ。

 だから、女達は髪を伸ばさない。長い髪を結って現れる来客を珍しがりつつ、自分達は伸ばさないのだ。私なんかは、乾かすためにのんびりする時間もないし服を濡らしたくない、とかなり短くしていた。髪が伸びるまでは、ちゃんとした女物の服を着ても違和感がすごかったものだ。


「髪の毛乾くの、大変そうだねぇ」


「長くしてると遊べるのは楽しいんだけどねぇ」


 体を拭くための布で、軽く髪の水気も取った。髪を拭くための布を用意する魔女もいるけれど、別にこれで足りているから大丈夫だろう。大まかに水気を取った後は、村長の、すなわち義兄の娘であるサーシャに連れ回されていた。髪の毛が乾ききるまではベッドに入れないのよね、と軽く呟いたら、彼女に家中を案内されることとなったのだ。事実、村の中では、村長の家だからかなり大きい。


「ここがあたしの部屋で、お兄ちゃんとも一緒なの!」


「へえー、ああ、置いてあるものがきっぱり違う……」


 置いてあるものの系統で領域がはっきりと分かれた部屋を見せられたり、食糧庫を覗いたり。台所も見た。家具のいくつかは新調されていて、気に入って掻き回していた鍋はなくなっている。薪置き場には薪が記憶の光景よりも随分となかったけれど、これは去年の冬に使い切ってしまったかららしい。今は男達が、毎日のように薪を割っているそうだ。


「でもねえ、ご飯作るのに使っちゃうからねぇ。大変だってお兄ちゃんが文句言ってたよ」


「そっかあ……」


 日々、使うものは使う。その残りがここに置かれる。木は毎日切り倒されているわけではないのだから、割るべき丸太のない日は、ここから使う。それで、数が少ないのだ。私がいた時も、そんな話を誰かとした記憶があった。あれは、誰だったかな。もう思い出せない。


「髪の毛乾いたみたいだね?」


「うん、そろそろ寝ようかな」


 髪が乾いたのを確認してから、私はサーシャと別れて与えられた部屋に戻った。ここは、私のいた部屋とは全然違う。昔に魔女をもてなした、客人用の部屋だ。不思議なほどふかふかな布団で、気づいたら眠っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ