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星降る夜に君の願いを  作者: 雨宮礼雨
第二章 過去への旅立ち編
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新たな出会い

 朝食を食べ損ねたミトラは、身支度を済ませて部屋を出る。ミューを探したが、部屋にちょうど戻るところだったアレイディアによると、ライラメアと一緒に外に食べにいったとのことだった。


 仕方なく一人で外に出ようとした時、宿の入り口で少し手前にいた女性が突然足を止めたため、ぶつかりそうになる。


「ああ、失礼しました。」

と声をかけ、お先にどうぞとドアを開けてあげると、その女性は少し驚いたような表情で一瞬立ち止まり、ミトラに笑顔を向けて軽く会釈をしたまま、無言で外に出ていった。




 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇




 しばらく村の中を歩いていると、小さな食堂らしき場所を見つけて中に入る。


 中は四つほどテーブル席があるだけの小さな店で、お昼を過ぎて人がちょうど帰っていくところだったので、すんなり席に着いた。


 素朴な店ではあったが、出てきたパンは柔らかさがあるのに香ばしく、スープも野菜や肉の味がしっかり出ていて美味しい。期待していた以上の食事に満足して外に出る。



 すると店のすぐそこで、男達二人に絡まれている女性の姿が見えた。


(・・・ふーん)


 ミトラは特にその様子に関心を持っていなかったが、「誰か助けて!」と女性が声を上げたところで、小さく「仕方ない」と呟いて三人に近付いた。周囲には遠巻きにこの様子を見ている人がちらほら集まっている。



「どうかされましたか?」


 至って普通に声をかけたミトラに、なぜか絡んでいた二人の男性がギョッとした目を向ける。女性の方は先ほど宿の入り口で会った人だ、と気付いた。


「何でもねえよ、ちょっと声をかけてただけだ!」

男の一人が動揺しながらミトラを追い払おうとする。


「違います!何度も構わないでくださいと言っているのにしつこく遊びに行こうと誘ってきて・・・」

女性の方は本当に嫌そうな顔をして男達から離れ、ミトラの背後に隠れた。


「別にそんなことはしていない!おい、もう行こう!」

もう一人の男性は顔を顰めたまま、連れを引っ張って行ってしまった。



「ありがとうございました!怖かった・・・本当に助かりました!」


 ブルネットの髪のその女性は、ミトラに近寄って礼を述べた。少し目が潤んでいるように見える。


「いえ、私は何もしておりませんから、お気になさらず。それでは。」


 そう言ってその場を離れようとしたが、女性に腕を掴まれる。


「あの!まだ少し怖くて・・・宿までご一緒していただけませんか?」


 上目遣いで懇願されたので仕方なく「わかりました」と了承する。ただし腕に組まれた手はそっと外した。


 女性の方は少し意外そうな表情だったが、気にせずどんどん前に進んでいく。後ろからついてくる気配を確認しつつ、二人で宿まで戻ることになった。




 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇




 宿に戻るとちょうど宿の外、建物の奥の開けた場所にミューが立って、上を見上げているのが見えた。


 後ろをついてきた女性の方を振り返り、

「それでは私はここで。」

と告げるとミューの方に歩き出す。


 その女性は「あの!」と声をかけて話をしたがっていたようだが、聞こえないふりをしてそこを離れた。




「ミュー?」


 宿の方に歩き出した彼女に声をかけると、ゆっくりミトラの方に顔を向けた。お互いに笑みがこぼれる。


「ミトラ、どうしたの?もうお昼ご飯食べた?」

「ああ、済ませてきたよ。」

「そう!・・・ねえ、あそこにいる女性、すごくミトラのこと見てるみたいだけど・・・知り合い?」


 ミトラはあえて振り返らずに、


「いや。さっき変な男達に絡まれてたようだったから、宿まで一緒に戻ってきただけだよ。心配しないで。」


 そう言ってミューの手を握る。ミューにやきもちを焼いてもらうのは嬉しいが、あの女性には関わらせたくなかった。



「そっか。無事だったみたいでよかった!」


 手を握ったまま喜ぶ彼女を、そのままそっと部屋まで連れ帰った。



 例の女性の姿はもう見えなかった。


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