守り人と管理者②
ミューとミトラは王の突然の申し出に動きを止めた。それほどまでに星を与えられること、もしくは奪われることはこの星で大きな意味を持つ。
王は覚悟と打算を胸に賭けに出た。
「九つ目の星を守り人様に、秘密保持の誓約として捧げましょう。万が一にも私から何かしらの情報が漏れることがあれば、九星の王の称号と権利は全てミトラ殿にお返しいたします。いかがですか?」
ミューは無表情でミトラを眺め、ミトラはしかめ面のまま大きくため息をついた。
「はあ、承知しました。ではリンドアーク王。私の前に利き手の甲を出してください。」
王は黙って指示に従う。ミトラは王の右手の甲に自分の手を添えて目を閉じた。
「セトラの管理者『ミト』がセトラの星と共に誓約の儀を行う。これからこの場で共有する全ての秘匿情報に関して、また今後新たに知るべき全ての関連情報に関して、リンドアーク王は一切の情報漏洩をしないことをここに誓約せよ。」
「セトラの星よ、今のお言葉全てに従うと、私の九つ目の星に誓おう。」
するとミトラの髪がフワッと風に吹かれたように揺れ、身体全体がうっすらと光る。数秒その状態が続いた後、光が収まった。
「リンドアーク王、どうぞ顔をお上げください。」
王がゆっくりと顔を上げる。自分の右手を見つめるが、何も変化は無い。
「右手に誓約を刻みました。普段は何も見えませんが、誓約を破ろうとしたり無理に破られそうになると紋が現れ秘密保持を強行します。また、自分の意思で誓約を破ろうとした場合には同時に星が自動的に奪われます。」
ミトラからの説明に落ち着いた様子で頷き、王は再びミューに声を掛けた。
「守り人様、これで今話せる範囲で構いませんので必要な情報を共有させていただけませんか?」
ミューは微笑みを口元にのみ宿し、ソファーに腰掛けた。
「お掛けになって。ゆっくり話しましょう。言える範囲だけでもあなたを驚かせるに足る情報だと思うから。」
ミトラはすっかりいつもの冷静さを取り戻し、
「お茶をお持ちします。それから王のご宿泊の準備を。少し時間が必要となるでしょうから。」
と言って先ほどの白いドアから部屋を出ていった。