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星降る夜に君の願いを  作者: 雨宮礼雨
第二章 過去への旅立ち編
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接近、遭遇

 ミトラはウシュナが生まれた地、ヒムノを目指していた。ただし大きな街道を通っていくルートではなく、ヒムノに近いテラトラリアの小さな星宮の一つに直接転送陣で移動することに決め、一度王都の星宮に向かうことにした。


 前回かなり燃えてしまった大星拝堂は、一般の人の立ち入りを禁じ、改修工事が行われていた。


 ゲンジュとはいくつか事務的なことを話した後、予定通り目的の星宮に移動した。



 到着した星宮はヒムノよりも少し南西にある小さな街にあり、寒さや大雪などで閉ざされてしまう民のために建てられた小規模なものだ。


 星守達との挨拶を終え、すぐにヒムノへ向かう。ヒムノは寒い地ではあるが、まだ夏ということもあり雪が降るようなことはない。レンネでも十分に移動できると判断し、一頭を借りてすぐに出発した。


(ミューは必ずヒムノに向かう)


 ミトラはある決意を込めて、ひたすらヒムノに走り続けた。




 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇




 ミュー達は午前中のうちに衣類や靴などの必要な装備を整える。大きな街道沿いの街なので品揃えは豊富だ。寒がりのライラメアはかなり厚手のコートを購入していた。


 準備が整い、ゼンデルを出発する。


 ここからはしばらく岩場や崖などの多い地が続くため、馭者も慎重に進んでいるようだ。


 途中、切り立った崖の側を通る道ではかなりヒヤヒヤしたが、そこを抜けてからは起伏の少ない森林地帯が続いていた。



 長く穏やかな時間が三人をまどろみに誘っていた午後、ミューがふと顔を上げた。窓の外をキョロキョロと見て、スッと立ち上がった。


「ミュー、どうした、急に?」


 アレイディアがミューの異変に気付く。


「アレイディア、お願いがあるの。」

「いいけど、何?」


 ミューの黒く艶めく髪が、渦巻く風と共に舞い上がり白銀に変わる。


「ライラメアを守って。」


「ミュー!?」


 ミューはその言葉を告げると同時に、車のドアを開けて当たり前のように飛び降りた。


 アレイディアは真っ青になって開け放たれたドアの外を見ると、何も起きていないかのように森に立っているミューが見えた。


「何があったのですかコーラル様?」


 ライラメアの質問にアレイディアは答えられない。急いで馭者に車を止めてもらおうとするが、レンネが怯えていて止まらないと言う。


(何か恐ろしいものが迫っているのか?)



 アレイディアの勘は当たっていた。


 ミューの目の前には、巨大な森の生物が立ち塞がっていた。


 黒く堅い被毛と大きく尖った爪と牙を持ち、目の前を動くもの全てに攻撃を仕掛ける、凶暴な生物。元がどんな生き物だったのかわからないほどに身体はあちこち奇妙な膨らみを見せている。そしてその目には、黒く澱んだ揺らめきが浮かんでいた。


(禁忌の力の元を飲み込んでしまったのね)


 時々森の中にこうした生物が現れる。一度飲み込んでしまうと、凶暴性が増し、体格も変形や巨大化を起こし、己の身体が傷付いても目の前にある動くものに対する攻撃を止めることができない。そしてこうなってしまうともう、通常の天力での攻撃では全く歯が立たなくなってしまう。


(アレイディアとライラは強い、でも今はまだあの生物の攻撃は防ぎきれないだろうな)


 ミューはそのあり得ない大きさに関心するが、さすがに自分の三倍はあろうかという巨体を前にゆっくりはしていられない。


 目を閉じ、全神経を目の前の哀れな生物に向けていく。


『雷撃を、その身で受けよ』


 ミューのその一言で、恐ろしいほどの光を伴い、大きな雷が巨大な生物を直撃した。その瞬間、稲光が放射状に広がり、地響きが森の中を、衝撃波と共に伝わっていく。


 ミューが目を開けるとその生物はプスプスと煙を上げながら倒れていた。一撃で済んでよかった、とホッとした瞬間、



 巨大生物の身体が、爆発した―――


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