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星降る夜に君の願いを  作者: 雨宮礼雨
第二章 過去への旅立ち編
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街道沿いの街で

 テラトラリアの王都は比較的温暖で穏やかな気候だったが、北上するにつれ肌寒く感じるようになってきた。


 大きな街道はあまり起伏もなく、途中に大きな湖が見えたりまばらではあるが高い木が生えている地域を抜けたりと、景色が移り変わっていく様子をミューは楽しみながら進んでいた。


 ライラメアとは以前よりぐっと距離が近くなり、ふざけ合ったり助け合ったりしてお互いが大切な友達だと言い合えるようにもなった。まだまだ敬語は使っているが、もうそれすら気にならないくらいには仲良くなれた。


 アレイディアはボリスの件があってから少し距離を感じるようになった。友達としては寂しい気もするが、それ以上を求められない安心感もあって、ミューはとりあえずそこにはあまり触れないようにして、時を過ごした。



 そんな長時間の移動を経て、数時間後にはなんとか経由地としていた街道沿いの街、ゼンデルに到着した。


「ふう、さすがに疲れたわね・・・」

「はい、身体がガチガチです!」

「・・・じゃあ、宿を探そう。」


 アレイディアは微妙な雰囲気のまま、先に歩いていってしまう。ミューはライラメアと目が合ったが、ライラメアは「しばらく放っておきましょう」と冷静に言うので、ミューも諦めて後ろから黙ってついていった。



 外の気温は夕方になってかなり下がっており、少し身震いする。なんとか宿を確保できたので、まずはそれぞれの部屋の暖房で暖まった。


 夕食はすぐの用意は難しいとのことだったので、ライラメアを誘って外に出ようと思っていたのだが、彼女は寒さが本当に苦手なようで、今夜は持っている保存食を食べて寝ますと、部屋にこもってしまった。


(ライラ・・・護衛の役割は?)


 ミューは仕方なく一人で、持っている中でも暖かそうな上着を羽織って外に出た。すっかり暗くなり、大通り沿いには高さのある明かりが灯っている。


「寒い・・・」


 薄手の上着を抱きしめるようにして歩きながら、食事ができるような店を探した。



「ミュー?」


 声をかけられて後ろを振り向くと、アレイディアがいた。


「アレイディア・・・」


 気まずそうなミューの様子を見て思うところがあったのか、アレイディアは一緒に食事をしようと誘ってきた。近くにいい店を見つけたらしい。


 ミューが頷くと、少し前をゆっくりと先導するように歩いていく。


「ねえ、アレイディア。」

「・・・うん?」

「フララで何かあったの?」

「・・・」

「私何かしたかな?」


 アレイディアは素早く振り返った。


「違うんだ。」

「?」


 ミューが驚いて立ち止まる。


「この間の・・・リリカさんの言葉がちょっと重くて。」

「え?」

「ボリスに向けて言った言葉。何度も何度もしつこく言い寄って、いい加減迷惑だって、あれ・・・」


 ミューはようやく合点がいく。


「もしかして、それを気にしていたから私を避けてたの?」

「ああ。あれが君の本音かもと思ったら立ち直れなかった。」

「なるほど。」

「なんか納得されてる。」

「まあそういう節もなきにしもあらずであります・・・」

「何その変な言い方!?」


 二人は目が合って、笑い出す。


「あはは!なんでいつも君はそうなんだ!俺は結構深刻に悩んでたのに馬鹿みたいじゃないか!」

「いやいや、もっと前に深刻に悩んで欲しかったんだけど、アレイディアはやりたい放題だったじゃない!」


 二人はひとしきり笑ってから、また歩き出した。


「ねえミュー。」

「なに、アレイディア。」

「俺が側にいるのが迷惑だったらいつでも言ってほしい。」

「うん、わかった!」

「・・・まさか力いっぱい即答されるとは。」

「ふふふ、冗談!でも、今のアレイディアは結構好きよ。」

「!」


 アレイディアが歩みを止める。


「それ、俺に言っちゃダメなやつでしょ。」

「ごめん、友達として。」

「それ後出しはもっとダメだよ!」

「ごめんね。」

「はあ、もういいよ。」


 アレイディアはもう一度歩き出し、今度はミューの横を歩く。


「でも今の言葉は忘れない。俺に一瞬でも期待させたんだから、ちゃんと責任取ってよ。」


 アレイディアが横目でニコッと微笑む。ミューはほんの少しだけ、アレイディアがかっこよく見えた気がした。


「えー、それは無理かなー。」

「ちょっと!」


 大切な友達とふざけ合いながら歩く道は、もうそんなに寒くなかった。


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