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星降る夜に君の願いを  作者: 雨宮礼雨
第二章 過去への旅立ち編
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テラトラリア②

 ミュー達は港を離れ、王都の中の道を通りながらその先にあるフララという街を目指す。王都はそれほど高さのある建物は多くないが、どの家も広々とした敷地を持ち、道路も広く、たくさんの街路樹や大きな公園が点在している美しい都市だった。


「素晴らしい街ね・・・」


 ミューが目をキラキラさせながら外の景色を眺める。少し窓を開けて気持ち良い街の空気を味わいたかったが、思った以上にレンネのスピードが速く、すぐに閉めることになってしまった。


「テラトラリアは農業国だけど学問にも力を入れていて、王都には各国から様々な専門家が集まってくるという話だよ。」


 アレイディアが遠くを指差す。


「ほら、あれが例の王立図書館。他の建物より少し高くて広大だから目立つんだ。」


 ミューがその方向に目を向けると、他とは一線を画した曲線的なデザインが目を引く大きな建物が見えた。


「すごい!あんなに優美で、大きな図書館があるなんて・・・」


 ミューがうっとりと建物を目で追っている。


「じゃあいつか一緒に行こう。」

「・・・」

「私がお供します。ミュー!」

「ライラ!ぜひみんなで行きましょう!」

「・・・陛下を恨むよほんと・・・」


 ミューはライラと目を合わせて噴き出した。




 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇




 テラトラリアの星宮では、ミトラの急な来訪に大慌てだった。


 大国リンドアークに並ぶテラトラリアの星宮は、建物に華美なところこそ無かったが、日々何百人もの人達が訪れる場所としてかなりの規模を誇っている。


 その星守の長は威厳のある老齢の男性だったが、彼をもってしても全星宮のトップであるミトラを迎えるのは、相当神経を使うことだった。



「ミトラ様、この度はテラトラリア星宮へお越しいただき誠にありがとうございます。本日は一体どのようなご用向きでこちらにいらっしゃったのでしょうか?」


 テラトラリア星宮長ゲンジュは、表面上冷静さを保ちながら、この一見若く見える美しい上司の機嫌を窺った。



「ゲンジュ殿、お久しぶりですね。こちらには守り人様の件で少し大事な用がありましてね。直接こちらの星宮に関わりのあることではありませんので、どうぞお気を楽に。」


 ミトラの美麗な笑顔がゲンジュには神々しくさえ見える。


「そうでございましたか!では何か私共でできることがございましたら、何なりとお声掛けください。もしよろしければ食事のご用意もありますので・・・」


 そうゲンジュが言ったところでけたたましいノックの音が響き、許可なくドアが開いた。


「た、大変ですゲンジュ様!星宮内で民の一人が暴れております!!」


 真っ青な顔をした若い星守が星宮長室に飛び込んできた。ゲンジュがその星守を叱りつけるよりも早く、ミトラが動く。


「どこにいるのです?案内を!早く!!」

「は、はい!」


 二人は部屋を飛び出し、星宮内の大星拝堂に向かった。




 テラトラリア星宮の星拝堂は三つあるが、最も大きい大星拝堂は常に民を受け入れ、星への感謝を伝え祈る場所として常時開放されている。


 その日も多くの民が来宮していたが、そこで突然一人の男が暴れ出した。武器などは何も持っていなかったが、どうやら五星セトラルだったようで、『熱』の天力を使い大星拝堂を燃やし始めていた。人々は突然の惨状に逃げ惑うが、巻き起こった炎に邪魔されて動けない者も多くいる。


 ミトラはその男を見るなり身体中から力を発した。強い風とともに大量の水が巻き上がり、一瞬にして大星拝堂が水浸しとなっていく。あれだけ燃え盛っていた炎は、あっという間に鎮火してしまった。


「拘束を!」


 ミトラは近くにいた星守達に指示を出し、数名の星守達が特殊な縄を使って拘束していった。


「ミトラ様一体何が・・・!?」

 ゲンジュが遅れて現場に現れる。


 ミトラは所々黒く燻る水浸しの大星拝堂を見渡して、

「大惨事を抑えたかったんだが・・・少しやり過ぎてしまったようです。」

と真顔で答えにならない答えを返す。

 

 ゲンジュはその後大慌てで事態の対処に動き始めたので、ミトラはそっとその場を離れた。



(あの男、禁忌の力を使っているのか?)



「まずは男の調査からだな。」



 ミトラはゆっくり拘束されている男に近寄っていった。


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