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星降る夜に君の願いを  作者: 雨宮礼雨
第二章 過去への旅立ち編
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向かう先は

 案内係が待合室の人々に向かって大きな声で、乗船してくださいと告げている。ミュー達も荷物を持って船内へ移動する。


 今回の船は隣の大陸にあるテラトラリアの港が目的地となっている。船内で一泊二日掛けて到着する予定で、ミューは初め二等寝台を選んでいたが、ライラメアの強い希望で一等室に彼女と泊まることになった。アレイディアは二等寝台が慣れているからそちらでいいよと言って、それぞれの場所に移動した。



 ライラメアは部屋に入るなり張り切って、

「ミューラ様、お部屋で私ができることがあればなんでも仰ってくださいね!」

と嬉しそうに宣言した。


 どうやらミューはライラメアの庇護欲を掻き立てるらしく、いいのよ自分でなんでもできるからと言ったらとても悲しそうな顔をされてしまったので、ミューは諦めて荷物の片付けをお願いした。


 ただし、「明日以降はミューと呼び、特別扱いをせず、友達として接するように!」と約束させた。渋々了承していたのでどうなることか、明日が思いやられる。



「ミュー、ライラ、食事にしよう!」


 アレイディアが部屋にやってくると、二人は頷いて部屋を出た。食事は船内の食堂でとれるようになっているが、軽食を買って食べている人もいるようだ。食事はとても美味しく、海の幸を存分に堪能した。



 食事を済ませ、甲板に出る。ライラメアは今日は仕事の後に急いで来たらしく、疲れてしまったので休みますすみませんと言いながら部屋に戻った。


 アレイディアもお風呂に入ってくるよと言って去っていったので、今は一人、暗く広い海を眺めていた。


(たぶんミトラはテラトラリアの星宮から図書館に向かう)


 今回の最初の目的地は、テラトラリア国内ではあるが、ミトラが考えているであろう場所ではない。


(大丈夫、これで会わないで済むはず)


 ミューは左手首をそっと掴む。いつもならそこにはバングルを着けているのだが、今日は無い。



「ミュー、そろそろ部屋に入らないと、身体が冷えるよ。」


 後ろからアレイディアが声をかけてきた。肩にそっと触れる感触があり、アレイディアの上着だと気付く。


「ありがとう。」

「どういたしまして。」


 暗いその場所ではアレイディアの表情は見えなかった。


「さあ、早く行こう、部屋まで送るよ。」


 これまでで一番安心感のあるアレイディアに、ちょっとおかしくなってフフと笑ってしまう。


「何、ミュー、突然笑って。怖いよ?」

「失礼ね。アレイディアが優しいなと思っただけよ。」

「俺はずっと優しかったと思うけど。」

「はあまあそうですね。」

「何その気のない返事!」


 二人で小さく笑い合う。こんな風に楽しく気軽な時を過ごせるようになったなんてとミューは嬉しくなった。アレイディアに上着を返し、少し先を歩く。


「ミュー、そうやって安心しないで。俺はまだ君に心を掴まれたままなんだ。」


 ミューははっとして振り向いた。彼は少し離れて、暗闇の中に立っている。


「これ以上近寄らない。君の嫌がることはしない。だからこそ俺の姿を見ていてほしい。あいつが君に言葉で想いを伝えるまで。君があいつにそうするまで。」


 アレイディアの表情は見えない。


「アレイディア・・・」


「ミュー。本当に何度も言うけど、俺は君と永遠を生きてもいいと思うほどに愛してる。」


 強い海からの風が、二人の間を吹き抜けた。


「部屋に戻ろう。」

「・・・うん。」


 アレイディアは無言でミューの手を取り、ミューの顔を見ないまま、彼女を部屋に連れ帰った。


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