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星降る夜に君の願いを  作者: 雨宮礼雨
第二章 過去への旅立ち編
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新しい旅の始まり

 ミューは必要最低限の荷物だけ持ち、リンドアークの港に向かう。


 ミトラとの一日をリンドアークで過ごすことにしたのも、実はこれが一番の目的だった。もちろん王に礼を述べるという理由もあったが、一人で転送陣を使わずに移動するためにはこれしか方法が無かった。



 港に着くと、大きな客船がすでに港に係留されていた。乗船券を購入し、待合室で時間まで待つことになった。待合室は広く、低い背もたれがついた椅子が床に固定され、五十席ほどが何列かに別れて並んでいた。


 人はまばらだったが、乗船時間が近付くにつれ、席はどんどん埋まっていく。ミューの隣にも平民らしい服装の男性が座った。



「ミトラ、怒ってるかな・・・」


 ミューが窓の外の船を見ながら小さく独り言のつもりで呟くと、


「どうかなー、怒ってはないかもしれないけど、慌ててるだろうね。」


 と隣から声がして、驚きの余り息が止まった。



「アレイディア!?」


 なぜかニコニコ顔のアレイディアがミューの隣の席に座り、目の前で手をヒラヒラと振っている。


「感動のお別れ、あれで終わりだと思ったの?」

「え、終わりですよね普通・・・」

「何それ冷たいな!俺はこれからも宜しくねってつもりで温かく抱きしめたのに。」

「・・・」


 ミューは荷物を持って無言で立ち去ろうとしたがアレイディアに引き止められ無理矢理席に戻される。


「ほらほら、もう乗船券は買っちゃったんでしょ?俺達も乗るんだから逃げないの!」


 ミューは動きを止める。


「俺達?」

「そう、だって俺だけじゃ絶対一緒に行ってくれないでしょ?だから強力な助っ人を呼んだんだよ。」


「ミューラ様!!」


「ライラ!?」


 見ると待合室の入り口からライラメアが顔を覗かせていた。手には大きな荷物を持ち、明らかに同行するつもりなのがわかった。それを見てアレイディアの小さな鞄を見る。


「アレイディアは荷物少ないのね。」


 彼は自分の荷物をひょいと持ち上げた。


「ああ、俺は旅慣れてるから大丈夫。結構現地で買うことも多いしね。」


「そうなんだ・・・それで、どうしてここがわかったの?」


 ミューは少し気持ちが落ち着き、アレイディアに小さな声で質問した。その間にライラメアが近くの席を探して座っている。


「陛下に聞いてね。ミトラ殿に内緒で証明書、作ってもらったんだって?」

「・・・」

「で、これは彼女は無茶をするつもりだし、陛下とミトラ殿の約束だから、絶対に見守って欲しいと命令があったんだ。」


 ミューは申し訳なさそうな顔で「そうだったんだ・・・」と呟く。


「俺はもちろん陛下の命ならば従わざるを得ないからね。だから諦めて俺達に守られてくださいな、お嬢様。」


 はあー、と大きなため息をついて、ミューはライラメアの方を向いた。


「ライラも陛下が?」

「そうだよ。どうも俺一人にはしたくなかったらしい。納得がいかないけど。」


 ミューがじっとり睨んでいるのを無視してアレイディアはライラメアを呼ぶ。


「ライラメア。」


 彼女は荷物を持ったまま近くまで移動してきた。嬉しそうな顔でミューの側に寄ると、荷物を放って両手を握った。


「ミューラ様!お会いできて嬉しいです!しばらくまた同行させていただけるとのこと。私が全力でお守りしますしお世話させていただきますので、よろしくお願いいたします!」


 キラキラ目を輝かせているライラメアに圧倒され、


「は、はい、よろしくお願いします・・・」


 としか言えなくなってしまったミューだった。


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