失踪
翌朝俺はミューがいないことに気付いた。
宿の部屋をノックするが返事がない。焦ってドアノブを握るとドアが開いた。
「ミュー、どうした・・・?」
ベッド横の小さな棚の上に、この部屋の鍵と、ミューのバングルがあった。
「え・・・どこに・・・」
血の気が引いた。
またあの時のように居なくなるのか?でもなぜ!?ウシュナ様のところに行くとは考えられない。あの日あんなに手が震えていたのに。じゃあどこへ?
頭の中に数えきれないほどのルートが浮かんでは消えていく。が、まだ近くにいるかもと気付き宿を飛び出た。
辺りを走り回って探したが見つからない。宿の者達も何も見ていないとのことだった。
俺はしばらく途方に暮れていたが、仕方なく宿を出て流星宮に帰った。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
流星宮に戻り、一番に彼女の部屋に向かう。
そこには見たくなかったものが置いてあった。
『ミトラへ
またあなたの元を離れることを許してください。本当はきちんと理由や目的を伝えてから旅立つ予定だったのだけれど、あなたはきっと私を見つけてしまうから。ごめんね。
今回は必ずここに帰ってきます。今の私には、帰るところがあるから。これは誓約ではなく約束です。ミトラのこの言葉はすごく好きだよ。
目的を遂げたら必ず帰ってくるし、危ないことも無茶もしない。だけどどうしても今は一人になりたいし、一人で調べたいの。本当にわがままを言ってごめんなさい。
バングルは置いていきます。宿にあるからもう気付いたかな?
ミトラ、いつも想ってる。
ミューより』
その置き手紙を俺は落とすことも握りつぶすこともできず、ただ手に持って震えていた。
そして目を上げる。
今度こそ、君を見失うことはできない。いやしない。わがままだと言うなら俺もわがままになるし勝手に探す。
ここで間違えた過去を、もう繰り返したくない。
「バングルなんてなくても見つけてみせるから、覚悟してるんだ、ミュー。」
俺は決意を胸に、手紙を携えて歩き出した。
第一章 ゾルダーク編 ここまでです。
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