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星降る夜に君の願いを  作者: 雨宮礼雨
第一章 ゾルダーク編
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チェルシアンナの好奇心

 星宮での誓約の儀式は滞りなく終了し、今は星宮内の待合室のようなところでミトラが戻ってくるのを待っている。大きな儀式ということもあり、終わった後にも諸々やるべきことがあるのだそうだ。



「ねえ、ミューラさん、同盟誓約の儀式ってこんなにあっさり終わってしまうものなのね!」


 チェルシアンナがキラキラした瞳でミューに語りかけた。


「・・・いえ、あの方が凄いのです。」


 チェルシアンナと二人で声のした方を見ると、先ほど大きな石を運んできた男性が感動に打ち震えたような顔で遠くを見ていた。


「まあ、どういうことですか?」

チェルシアンナが早速質問する。


「私達も小さな誓約の儀を行うことがありますが、大抵は小さな約束事でも三十分以上はかかるのです。でもあの方はあの大きな誓約を、ほんの一瞬で・・・わかってはいましたが本当に凄い方です。直接あの儀式を見させていただいたこと、生涯忘れません!」


 熱く語る若き星守の姿を見て、ミューは少しだけ嬉しくなる。


(ミトラが頑張ってきたことが、こうして次の世代に繋がっていくのね・・・)


 そんなミューの表情にチェルシアンナは敏感に反応した。


「ミューラさん、後でゆっくりとお話をしましょ?」

「えっと・・・はい・・・。」


 ミューはすっかり諦めモードで、満面の笑顔のチェルシアンナに頷くしかなかった。




 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇




 ミトラはそれから数分後、その待合室に現れた。


「お待たせしました。今後のことについて少しお話をしましょうか。」


 そう言ってその場で全員を近くに集めて話を始めた。


「まず、誓約については無事に儀式が終了しました。今後は互いを思いやり、守りあいながら行動してください。」


 ミトラも近くにあった椅子に座る。


「それと、私は立場上この誓約には加われませんが、今後ミューリエラ様と行動を共にすることになりますので、自然と情報は入ってきてしまうでしょう。その代わり私達は「罪の無い民を傷つけることはできない」「秘密は全て保持しなければならない」という誓約を結んでいますので、何かあっても私から秘密が漏れたり、誰かを傷付けたりすることはありませんのでご安心ください。」


 ミトラは全員の顔を見回し、「何かご質問はありますか?」と問いかけたが、誰も何も言うことは無かった。



 その日は王都には戻らず村の宿に泊まることになっていたため、皆口数が少ないまま宿に向かうことになった。




 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇




 その日の夕食後、コンコンコンコン、と小さく素早いノックの音が聞こえ、ミューは部屋の扉を開けた。


「チェルシー様?」


 そこにはニコニコ顔のチェルシアンナが立っていた。驚いてすぐに部屋に招き入れると、チェルシアンナは待ちきれないように話し出す。


「ねえミューラさん、本命はどちらなの?」


「えっ!?」


 素っ頓狂な声が出てしまったがミューはそれどころではなかった。


「うふふ、動揺しているのね。お若い方だから仕方ないわ!でもお二人とも素敵な男性ですもの、それは迷ってしまうのではなくて?」


 ミューはチェルシアンナの勢いに圧倒されていたが、何とか心を落ち着かせて答える。


「あの、ええと、お話ししなければなりませんか?」

「だってお友達でしょう、私達!」

「・・・小さな声でもいいでしょうか?」

「あら、ここからなら隣の部屋だって声は聞こえないと思うけど・・・?」

「ちょっと事情がありまして。」


 そう言うとチェルシアンナは何回か瞬きをした後ウインクを返した。


「わかったわ!耳元に小さい声でどうぞ!」

「かなり長くなってもいいですか?」

「もちろんよ!大丈夫、私達には信頼と誓約があるもの!さあゆっくりでいいから、全て話してちょうだい!」


 ミューは腹を決めてそっと、想いを吐き出す。


「実は―――」


そこから話すこと数分。思った以上に長い話になってしまったが、これまでの簡単な経緯や想いを、言える範囲で話していく。ミューにとっては初めての体験だった。



「・・・まあ!なんてこと・・・そう、そうだったのね・・・」


「内緒にしていてくださいね、チェルシー様!」


 チェルシアンナはそっと、泣きそうな笑顔のままミューを抱きしめた。


「辛かったわね。頑張ってきたのね。だからあなたはこんなに美しいのだわ。私はあなたの生涯の友であり、永遠の母でいるわ!だからいいこと、絶対にこれからは何でも相談して!一人で抱え込んではダメよ。あなたがみんなを想うように、私もあなたを大切に想っているのだから。」


 チェルシアンナのその言葉は、深く深く、ミューの心に染み渡っていった。


「はい、チェルシー様!」


 ミューはこれからどれほどの時間を生きようとも、この日のことを絶対に忘れないと、心に誓った。


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