同盟誓約①
ミトラはミューが投げつけたクッションを小脇に抱え、ミューをベッドの端に座らせた。
同盟誓約に必要な書類は今回は特別に省略すると告げ、代わりに本人証明や意思確認のために近くの村にある星宮に直接来てもらいたいとミューに説明した。
ミューは全員を連れてそこに行くと了承し、ミトラがそれに頷いた。
「アレイディアにはこれから話すんですね?」
「ああ、そうだったまだ彼に今日のこと何も話して―――」
ミューの何かを思い出したような顔をミトラはじっと見つめる。
「さっきのあれを思い出した?」
ミトラの声がミューを追い詰める。ミューは無意識に自分の頬に手で触れる。
「今は何も言わない。とにかくこの話を進めたいから、アレイディアを呼んできてくれないか?」
「・・・わかった。」
ミューはパタパタとアレイディアの部屋に向かった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
アレイディアと共に部屋に戻ってきたミューとミトラは、三人でこれまでの経緯や同盟誓約についての話を進めていった。
「それじゃあリーブス夫人は、ゾルダーク王が偽者だと思っているんだな。」
「ええ、むしろ確信しているみたい。」
「王子を匿うという大胆なことをする位ですから、そうなんでしょうね。」
ミューはアレイディアに向き直って言った。
「同盟誓約は通常の誓約よりも重いものなの。勝手に巻き込んでしまって申し訳ないんだけれど、この任務が終わるまででいいから、一緒に誓約を受けてくれる?」
アレイディアは真剣な眼差しでミューを見つめる。
「もちろん構わない。むしろそうさせて欲しい。君が守りたい友達を俺も守れるなら本望だ。」
ミューは笑顔を向けた。
「ありがとう。任務が終わり次第、解除をするわ。」
「では明日、リーブス夫人と連絡を取り日程を決めましょう。ああ、それと今夜は私もここに泊まります。」
一瞬で二人が動きを止めた。
「はい!?どういうことミトラ?ここってここ?私の部屋ってこと?」
「何を血迷ったことを言っているんだ!いくらなんでもそれはやりすぎだろ!?」
二人の声が被る。
ミトラはいつものあの美しすぎる笑顔で、
「冗談ですよ、宿を取ります。ただ、明日以降はミューにリーブス夫人の家に移ってもらおうと思っています。ミュー、あなたは彼女の側にいた方がいい。先ほどお聞きした状況では、彼女の夫もまた何かしら洗脳状態もしくは拘束状態にあるかもしれません。」
ミューははっとする。
「そうね、彼女の夫はこの国の高官なのよね。それなのに今回彼女からは王の様子を心配しているという話は聞かなかった・・・確かに側にいないと不安だわ。」
「おいおい・・・」
ミトラはアレイディアにあの笑顔を向ける。
「まあ、そういうことです。」
「・・・謀ったな。」
「何のことです?」
アレイディアはミューの横顔を見つめてため息をついた。