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星降る夜に君の願いを  作者: 雨宮礼雨
第一章 ゾルダーク編
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八星会議と新しい王

 八星会議が行われている部屋は流星宮の中で最も広い。二階建の建物をゆうにこえるほどの高さの天井があり、大きなシャンデリアが六つ柔らかい光を放っている。


 広大な空間と大きく虹色に光を通す窓が側面に嵌め込まれ、開放感と明るさに誰もが目を瞠るほどだ。


 落ち着いた緋色の絨毯には備え付けの机と椅子が同じ方向に向けて百以上連なっており、後ろに行くほど高くなっている。目が向く先、部屋の一番奥には一段高くなった場所が設けられ、壁面には一際大きな虹色の窓と大きな机が置かれていた。ベージュ色の壁紙は、よく見ると金色の細い線で柔らかな模様が散りばめられている。


 会議といっても九十九人もの王が集うものであるため、さながら集会や大きな教室での授業といった様相だ。実際ここは講堂と呼ばれ、毎回ここでは王達の会議、八星会議が開かれていた。


 今回は星宮管理者ミトラが中心となり、今後の気候変動や星の動き、この星が与えてくれている力についての新しい情報などが様々な王から発表される、という比較的落ち着いた内容の会議となった。



 毎年行われているこの定例会議は、このまま今年は特に大きな議題もなく終了、となるはずだったが、閉会の間際に思わぬ声が後方の席から上がることとなった。


「申し訳ないが各国の王達よ、暫し待ってほしい!」


 大きな声が高い天井に反響する。


「おい、そちらの銀の髪の青年。私はここで新しい王として紹介されるべきではないのか?召使いかただの司会なのか知らぬが、ここをまとめる役割ならばそのくらいのことはしっかりやってもらわないと困る。」


 三十歳前後の背の高い細身の王が一人、勝手に立ち上がり一気に捲し立てた。前に座る他の王達が何事かと振り返り、ああと納得の表情を見せるもの、怒りの表情を露わにするものもいる。



「何という愚かな・・・」


「ミトラ殿を知らぬ王がここに並ぶのか。」


 ざわめきの中に嘲笑が混じっているのを耳にしているのかどうか、その王は座ろうともせず話し続ける。


「私はゾルダークの新しい王、ダンゲリオン・ゾルダークである。ぜひお見知りおき願う。」


 しーんと静まり返った講堂では誰もがただその細身の王を見つめるだけで、何の言葉も掛けることはなかった。その様子にようやく自分が場違いな発言をしたと気づいたのか、怒りと羞恥に身を震わせつつ、ゾルダーク王はどかっと音を立てて着席した。


 それがきっかけのようにミトラが壇上に現れ、

「本年の八星会議を閉会とさせていただきます。」

と至極冷静に伝え、何事もなかったかのように講堂を出ていった。



 ゾルダーク王は一人ぶつぶつと悪態を吐いて座っていたが、他の王達がざわざわと外に出る様子を見ると、人をかき分けるようにして急いで外に出ていった。



「困ったものだ。前王はご子息に何も教えなかったのか。」


「いや、彼は前王の弟だ。かなり奔放な生活をしていたようで、前王の父君からは王家の証である八星(マリセトラ)すら授与の許可をもらえなかったと聞いている。前王が崩御された後、本来資格は無かったにも関わらず後ろ暗い手を使って幼い王子から王の座と星を奪い取ったと。」



 不穏な噂話に少しだけ眉を顰めて座っていたリンドアーク王は、部屋を出たはずのミトラが横に立っていることに気付き、心底驚いた。


「ミトラ殿!驚かせないでくれ!君は外に出たのではなかったか?」


 驚いた表情のまま疑問を口にしたが、ミトラはその問いに答えることはなく、ただ笑顔を向けるばかりだ。


「リンドアーク王、少しお時間をいただけますか?」


 ミトラの黒い何かが湧き立つような美しい微笑みに思わず戦慄するが、それを態度に見せることもなくリンドアーク王は立ち上がり、余裕の笑みを返す。


「もちろんだとも。どこへでも行こう。」


 どうやらミトラ殿はあまりご機嫌がよろしくないようだ、などと考えながら、王は先に歩く彼の後を追った。


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