表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
星降る夜に君の願いを  作者: 雨宮礼雨
第一章 ゾルダーク編
59/178

それぞれの事情②

 アレイディアが部屋に戻ったのを恨めしそうに見送った後、ミューは結局部屋に戻ってベッドに突っ伏した。


(ミトラに会いたい)


 アレイディアに触れられた頬が少し熱い。それでもミトラを想うようには、彼を想うことは無い。


(少し対策をしておかないと駄目ね・・・)




 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇




「柔らかかった・・・」


 アレイディアは部屋で余韻に浸っていた。さっきはまるで余裕があるかのように装って部屋に戻ったが、余裕どころか自分の欲望に飲み込まれる寸前だった。


「危なかった・・・。」


 ふう、と浅い呼吸を整えて、ミューを想う。


「本当に重症だな俺は。」


 彼女に気持ちがないことはわかっていても、自分のちょっとした言葉や行動で喜んだり心配したり動揺したりする様子をみると、つい期待してしまう。


 赤面していた彼女を見て気持ちが決壊した。たったそれだけのことで、だ。もし今後彼女が―――


 アレイディアは頭を激しく振ってそれ以上のことを想像するのをやめた。




 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇




 ミトラが支度を終えて部屋を出る。


(どういう形で合流しようか?)


 今彼女はトール家にお世話になっているが、全く面識のない自分までお邪魔する訳にはいかない。だとするとアレイディアの側から彼を引き離すためにも、ミューにトール家から出てもらって別の家に滞在してもらうか、宿を取ってもらうか・・・


 そこまで考えてからふと思う。


(俺はこんなに嫉妬深かったのか)


 いや、アレイディアが面倒な敵というだけだなと思い直し、とりあえずミューの待つ部屋で話し合おうと気持ちを切り替えた。


(ミューに早く会いたい)


 そしてミトラはバングルを右手に持ち、彼女のところへ向かった。




 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇




 いつものようにミューの部屋に現れたミトラは、ミューがベッドに突っ伏している様子を見て目を丸くする。


「ミュー、何をしてるの?」


 ミューがビクッとして頭だけこちらに向ける。


「え?ミトラ?あれ、だって連絡くれるって・・・何で来ちゃってるの?というかずっと思ってたんだけど、許可なしに勝手に部屋に入るのはやめて!着替えとかしてたらどうするの!?」


 ミトラはキョトンとした顔で答える。


「え、それは幸運だなと思うだけだけど。」

「・・・」


 ミューは顔を元に戻し、クッションに顔を押し付けた。


「ねえミュー。」


 声が近づいてくる。


「なあにミトラ。」


 熱を感じる。


「ベッドで抱きしめるのはアリなの?」


 ミューは慌てて起きあがろうとしたが、もう遅かった。


 ミトラの腕の中にいる。温かくて優しくて、少し花の香りがする。


「・・・事後承諾はナシです。」

「そう。じゃあ今度は事前に予約を入れるよ。」


 そう言ってミトラはすっとベッドから離れた。



「さあ、仕事の話をしましょうか。」



 ミューはクッションをミトラに投げつけた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ