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星降る夜に君の願いを  作者: 雨宮礼雨
第一章 ゾルダーク編
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お茶会と新しい友人①

「お待ちしていたわ!いらっしゃいミューリエラさん。さ、こちらに座って!」


 満面の笑顔で微笑むこの女性は、二日前に祝賀会で出会ったチェルシアンナ・リーブス夫人だ。ミューは今日予定通りリーブス家に来訪し、驚くほどの手厚い歓待を受けている。



 昨日はあの後無事にコグランの記憶を消した後、アレイディアが「体調がお悪かったようですね」と誤魔化しつつお帰りいただいた。


 二人は一旦この男とは距離を置くことに決め、もう一つの線であるチェルシアンナに希望を持つことに決めた。



(ゾルダーク王のお姉様・・・一体何を不安に思っているのかしら)


 ここに来るまでは色々と考えてみたものの、まずは欲張らず真摯に彼女に向き合おうと決め、お茶会ではとにかく楽しみながら彼女と語らった。



「ミューリエラさんはじゃあ、コーラル家に養子として入ったばかりなのね。」

「そうなのです。コーラル家の皆さんはとてもお優しくて、日々充実しております。」

ミューは笑顔で答える。お茶がびっくりするほど香り高く美味しい。つい頬が緩んでしまい、チェルシアンナに笑われてしまった。


「あらあら、そんなに喜んでいただけたなら良かったわ。海の向こうの高地で採れた特別栽培のお茶なのよ。・・・ねえ、ミューリエラさん。」


 チェルシアンナが思い立ったようにミューの名前を呼ぶ。


「はい、何でしょうか?」

ミューはカップを置いて言葉を待った。


「あなた、コーラル家にはその、将来的な婚姻を視野に入れて養子に入られたの?」

「えっ、いえ違います!」

ミューは驚いてカップに手が当たり、カチャンと音を立てた。


 チェルシアンナはほっとしたように両手を合わせ、

「そうなの?では一昨日一緒に来ていた方とそういう関係ではないのね?ねえ、それではあなた、私の従兄弟と会ってみていただけないかしら?」


 ミューは唐突なその申し出にだらしなくも口を半開きにしてしばらく黙ってしまった。


(探りを入れにきたのにまさかの縁談話が持ち上がってる!?)


「・・・ええと、その、ありがたいお申し出ではあるのですが私は―――」


「やあ、チェルシー姉様、今日はテラスでお茶会なのかい?」


 不意に、低く優しく響く美しい声の青年が、チェルシアンナと同じ金髪の髪を靡かせながらテラスに現れた。


「あら、噂をすれば!ミューリエラさん、こちらが私の従兄弟のフェルディアム・ガーナーよ。フェルディ、彼女は一昨日お友達になったミューリエラ・コーラルさん。素敵な方でしょう?」


 フェルディアムと呼ばれた青年は、少し目尻の下がった優しい印象の若い男性だった。金髪以外はあまりチェルシアンナに似ていないな、などと考えていると、フェルディアムに挨拶を受けた。


「初めまして。六星フェルディアム・ガーナーです。」

彼に握手を求められ、立ち上がって握手を返す。

「初めまして、六星のミューリエラ・コーラルと申します。」

お互いにそつなく挨拶を交わし、チェルシアンナに勧められるまま彼も席に座った。


「それでね、フェルディ、あなたにこちらの方をご紹介したいって今話をしていたのよ!」


 その言葉にフェルディアムが苦しそうな表情を浮かべた。ミューがどうしたんだろうと見守っていると、彼は話しにくそうにしながら語り出した。


「チェルシー姉様・・・何を、そんなに心配されているのですか?」


 フェルディアムの言葉にチェルシアンナが手を止めた。持っていたカップは宙に浮いたまま、少し震えている。


「私が今縁談どころではないことはよくご存知のはずだ。一番の僕の理解者であるチェルシー姉様がわからないはずはない。こんな時に僕とこの方を結びつけてどうするおつもりですか?」


 問い詰めるような言葉の中に、彼の戸惑いが見えた。ミューはあえて黙ってチェルシアンナの答えを待つ。



「私は・・・あなたを一刻も早くこの国から逃してあげたいの。」


 衝撃的な言葉に、初めて会う二人が一瞬目を見合わせてしまった。


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