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星降る夜に君の願いを  作者: 雨宮礼雨
第一章 ゾルダーク編
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秘密を知る時


「教えてくれ。頼む。」

そう言ってアレイディアはミトラに頭を下げた。


「わかりました。ではまず誓約を交わしましょう。」

「誓約?あなたは星守か?」

「そんなような者です。後できちんと説明します。」

「・・・わかった。俺の天力に誓おう。『電力』だ。」

「承知しました。」


 ミトラは立ち上がったアレイディアの右手を両手で挟んだ。


「セトラの管理者『ミト』がセトラの星と共に誓約の儀を行う。これからこの場で共有する全ての秘匿情報に関して、また今後新たに知るべき全ての関連情報に関して、アレイディア・コーラルは一切の情報漏洩をしないことをここに誓約せよ。」


 アレイディアは目を閉じた。


「私アレイディア・コーラルは、己の天力の一つ『電力』をかけてここに誓う。全ての情報を決して漏洩することはない。」


 部屋の中でふんわりと優しい風が吹き、瞑っていた瞼の向こうに光を感じてアレイディアが目を開けると、ミトラが無表情で立っていた。右手には何も異常はない。


「あなたの右手には誓約がかけられています。あなたが自主的に漏洩すれば紋が手に現れあなたの力を奪います。誰かに無理やり聞き出された場合には強制的に漏洩しないような仕組みが動きます。」


「そうか。・・・あなたは星宮管理者ミトラ殿、なのだな。」


 ミトラがアレイディアの前のソファーに腰掛けた。前に座るよう手で促す。アレイディアは黙って元のソファーに腰掛けた。


「そうです。私はこの星の管理者『ミト』、一般的にはミトラと呼ばれています。そしてミューはこの星の『守り人』と呼ばれるただ一人の、そしてありえない存在。本来九星の王にしか明かされない伝説の存在です。名の無い者としての伝説は各地にありますが、それが『守り人』と知っている者はほとんどおりません。」


 アレイディアは口を開けたまま微動だにしない。情報量の多さと重大さにすぐには頭が対応できない。



「ミューと私は禁忌の力と呼ばれるものを浄化しこの星から無くしていくために、長い時を、本当に長い長い時を共に生きてきました。」


 ミトラの表情は変わらない。だがその声には、何か聞いてはいけないことを聞いてしまったと感じる重みがあった。


「しかし彼女は・・・自分の運命に、私よりもっと重い枷を付けている。」


 苦しそうな表情がうっすらと浮かぶ。


「それが何かをあなたに話すことはできません。ただ、彼女はあなたの気持ちにどうとも答えることはない。」

「な、ぜそれを・・・」

「どうして知っているかはどうでも良いことです。今でも既に重過ぎる運命を背負っている彼女を、あなたの身勝手な振る舞いでこれ以上苦しめないでください。」

「それは・・・わかった。いえ、わかりました。」

「ありがとうございます。」



 アレイディアは自分の愚かさを目の当たりにして言葉をなくす。彼女がどれほどのものを抱え生きてきたかも知らず、能天気に自分の気持ちをぶつけ、あまつさえ彼女の気持ちを操ろうとしていたと。


(俺の気持ちなんて最後でいい。彼女のために俺が出来ることをやろう。)


 ゆっくりと顔を上げ、真っ直ぐにミトラを見つめて次の言葉を待った。


「あなたに引き続きこの任務を任せるかどうか悩みましたが、ミューはこのままでいいと言っていました。その言葉と気持ちを尊重したい。ですので引き続きあなたにはこのままゾルダークの王都に進んでいただきたいと思います。」


 一呼吸置いて更に続ける。


「車は燃えてしまったようですが、代わりの移動手段を私が用意します。荷物は全て宿に運んであったようで無事ですね。あとは、とにかく予定通りに進めてください。よろしいですか?」

「はい、わかりました。」


 ミトラは黙って頷くと、立ち上がってドアを開け、アレイディアに外へ出るよう手で示す。


「今日はあなたも疲れているでしょうからこの辺にしましょう。私も今日はここに泊まります。明日の朝早くにこの部屋で三人で話し合い、その後出発という形にしたいと思います。」


 アレイディアが廊下に出ると、ミトラはドアノブから手を離し、腕を組んでドアに寄り掛かった。



「それと。」


 ミトラの雰囲気が変わる。



「ミューの部屋には今後一切近づくな。抱きしめるなんてもっての他だ。次やったら俺が許さない。」



 目の前でドアが閉まる。アレイディアはもう、何も考えられなかった。


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