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星降る夜に君の願いを  作者: 雨宮礼雨
第一章 ゾルダーク編
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潜入準備③

 その後のお茶会という名の家族会議では、モーラの新しい名前が決まり、今日から義理の妹としてアレイディアと共に様々な準備を進めていくことが決まった。


 ランディエルは衣装や装飾品など貴族女性として必要なものをいくつか先回りして準備してくれていたようで、ミューはとても助かりますと何度も感謝の意を述べた。



 そしてこの日からモーラ改め『ミューリエラ・コーラル』、コーラル家の養女としての仮の生活が始まった。


 名前を決めたのはランディエルで、「昔から女の子が生まれたら付けたかった名前なのよ」と言ってモーラにぜひ、と譲らなかった。彼女はなんだか少し複雑そうな顔をしていたが、嬉しそうなランディエルの様子を見て笑顔で受け入れていた。



「髪色は変えた方がよろしいですか?」


 ミューが先ほどから気になっていたことをランディエルに相談する。


「あら、大丈夫よ。確かに目立つけれどこれほどの髪、色を変えてしまったら勿体無いわ。」


「ですがあまり目立たない方が任務としてはいいのかなと・・・アレイディア様はランディエル様と同じ綺麗な赤褐色ですし。」


 アレイディアは仕事モードに切り替える。先ほどの失態からくる動揺も、仕事の頭に切り替えれば落ち着きを取り戻せる。


「いや、このままの方がいいだろう。君が目立てば俺がその隙に動ける。それに他の国から来ている者達はほぼ八星だろうから、ほとんどの参加者の意識はそちらに向くはずだ。心配ない。」

「あらまあ、俺だなんて、アレンたら!」

ランディエルが面白そうに目を丸くする。

「あ、すみませんつい仕事中の話し方で・・・」


 ミューがふふ、と優しく笑う。


「いいんですよ、お義兄様。」

「・・・男兄弟の末っ子ですので、その『お義兄様』呼びにはなかなか慣れない、ですね。」



 早速仲良くなった女性二人が目を見合わせて笑い合っている姿に、アレイディアは敵わないなと苦笑した。




 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇




 ささやかなお茶会が終わり、アレイディアの自室で引き続き仕事の話を進めていく。


 モーラ改めミューリエラは、自分の出来ること、出来ないことを説明し、アレイディアと何をどう役割分担し、どのように動くかを話し合うことになった。


 アレイディアは上位貴族に多い強い天力持ちであり、『熱』『電力』『重力』という戦いにはかなり優位となる力を行使できる。熱と電力は接触しないと強い力は発揮できないことが多いが、『重力』という特殊な力はある程度距離があっても有効となり、この力があるが故に『赤き剣』の実力者として重宝されているとのことだった。


 一方ミューは、ミトラに大きな力は使用を止められているため、天力は『風』のみ、地力として『治癒』『成長』『分析』を行使できると伝えた。



「ミューリエラ、この名前にも慣れないといけないな。ここに滞在中は出来るだけ呼びかけるようにする。慣れていないことはすぐに周囲に違和感を生むから、ミューリエラもしっかり呼べるようにしておいてほしい。」

「わかりました、お義兄様。」


 ミューの自然な『お義兄様』に、アレイディアはなぜか顔が赤くなる。


「あら、お義兄様の方が先にこの呼び方に慣れないといけませんね!」

「全くその通りだな。ミューリエラ。まあ、二、三日で慣れるだろう。それと家ではミューと略して呼んでもいいか?」



 ミューの笑顔が一瞬固まる。



「ごめんなさい、できればミューラと呼んで欲しいのですが・・・。」


「・・・わかった。ミューラ、よろしく頼む。」

「はい、お義兄様!」


 笑顔が戻ったミューに、アレイディアも何も気づかないふりで笑顔を返す。



(ミューという名前では気軽過ぎたのか?)


 一度関心を持ってしまった女性に、それ以上どう接していいかわからず戸惑ってしまう。



(いや、任務なら自然に行動できる)



 ―――でも、本気なら?



 アレイディアは他国の社交界での過ごし方について、母に教わったことを元にミューにレクチャーしながら、ふと湧き上がるその答えに、そっと蓋をした。


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