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星降る夜に君の願いを  作者: 雨宮礼雨
第一章 ゾルダーク編
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怪しい依頼と新しい部下③

「それであなた方はなぜここに残ったのですか?」


 アレイディアは立ち上がり兵士の制服の上着を脱いで円卓の上に放り投げた。


「先ほど王がここで待つように仰ったからですよ。」

「白々しい。陛下がいらっしゃらないところで話したいことがあるのでは?」

「いえ、特には。あなたこそ何かお聞きになりたいことがあるのでは?」

「・・・一体あなた達は何者だ?」

「それにはお答えできません。」

「いくら陛下のご友人だからといって、ここまで怪しい奴らにそう易々と『赤き剣』の内情を見せるわけにはいかない。何が目的だ、お前達は何者なんだ!?」

「お答えできないと申し上げました。」


 ミトラよりも少し背の低いアレイディアは、細身の見た目に依らず力強くミトラの襟元を掴み上げた。ミトラは微動だにせず無言で彼を見下す。


「思っていた以上に熱くなりやすいのですね。それともこれは演技かな?」


 掴んだ襟をパッと離すと、アレイディアは小声で食えない奴だと零す。


「とにかく、俺の部下にするからにはもう少し情報が欲しい。何か言える範囲で教えろ。」

「おや、それが本性ですか?俺って・・わかりやすい方ですね。」

「うるさい。」



 ミトラは真面目な顔で右手を上げる。話しながら一つ、また一つと指折り数えて話を進めていく。


「一つ、彼女はとある親戚の五星(セトラル)の家からあなたの家に養女としてやってきたという形にする。仕事の関係で良い縁を結びたいと言うような理由にし、あなたの義妹として迎えてください。これは王にも了承を得ています。対外的にいつ、どのように発表していただいても問題ない。もちろん架空の話ですので任務完了後の後始末は我々がします。」


 アレイディアがぐっと睨む。


「二つ、彼女は天力、地力の両方が使えます。ですが今回は地力が強く、天力はそれほどでもないという設定です。敵に脅威になる存在と見られたくないのでね。」

「敵?なるほどただの調査ではなくやはり物騒な話なんだな。ま、それには賛成だ。彼女の身の安全のためにも。」


 ミトラがゆっくりと目を伏せる。ポケットから黒い石が埋め込まれた飾り気のないバングルが現れた。無言でアレイディアに手渡す。


「三つ、私には逐一報告をお願いします。彼女が持っているバングルと同じ機能を持つ通信装置をお貸しします。使い方はまた後ほど。モーラとも連絡は取れますが人のいる所での使用は控えてください。目立ちます。」

「わかった。確かに随分特殊な物だな。」


 バングルを手に取って眺める。今更何が出ても驚きは無い。


「四つ、禁忌の力は何かしらの異常な犯罪、もしくは異常な行動や事象と感じるところに見つかる可能性が高いでしょう。探す範囲は王都周辺に絞ります。それでも広いですが、怪しい範囲はあなたの方が絞りやすいでしょうからお任せします。怪しい人や場所、物を発見したら決して触らずにまずはモーラを呼んでください。常時彼女の側にいることになると思いますのでまあ念のためですが。」


 アレイディアは、なぜかミトラの表情に強張りが見られる気がした。


「そして最後、五つめですが。」


 今までで一番真実に近い何かだな、と直感が告げる。顔を上げて続く言葉を待つ。


「モーラから目を離さないでください。何があってもです。」

「ちょっと、それは・・・!」

ミューが焦ってミトラを止めようとするがそれをうまく躱してミトラは続ける。


「これだけは約束してください。あなたの命を守るためにも。」


 彼女の命を守るためと言わず、俺の命を守るためにも?

も、ってなんだ?含みばかりのミトラの最後の言葉に疑問しか浮かばなかった。


 だがこの言葉だけは、散々アレイディアを揶揄ったものとは違う、ミトラの本音を感じる言葉だった。これだけがアレイディアに伝えられる限界の情報なのだろう。


 そしてこの言葉でようやくアレイディアはこの依頼を受け入れる覚悟ができた。


「わかった。この依頼を受ける。そして俺の全力で彼女を守ろう。」


 ミトラは不思議そうに微笑み、


「なんだか随分聞き分けがいいですね。」

とのたまった。本当に感じの悪い男だとアレイディアは心の中で毒づく。


「ではお約束ですよ。これは誓約ではない。なんの枷もありません。だからこそこれが私からのあなたへの信頼の証と思って、任務に臨んでください。具体的な日程などは明日お伝えします。午前中のうちにこちらに来ておりますのであなたも時間が空き次第お越しください。」


 そうミトラが言い終えると同時にこの部屋のドアが開き、仲間の一人が声をかけてきた。



「お客様お二人を部屋にご案内します。」


 ミューとミトラはアレイディアに会釈をして静かに部屋を出ていった。


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