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星降る夜に君の願いを  作者: 雨宮礼雨
第一章 ゾルダーク編
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怪しい依頼と新しい部下①

 王からの指示を受け全員が着席する。無骨ながら上質な木材が惜しみなく使われた円卓は、触れるとほんのりと冷たく、硬く滑らかな質感だ。その心地良さがアレイディアの疲弊した頭を少しだけ癒やしてくれる。


 そんな彼の様子を一瞥すると、ミトラは円卓の上にゾルダーク国の地図を広げだした。巨大な円卓がほぼ埋まってしまうほどの大きさを持つ地図だが、その分詳細な情報が書き込まれているものだった。


 地図を綺麗に広げ終わると、その四隅にガラスのペーパーウェイトを載せてミトラが話し始める。


「では依頼内容の詳細についてお話しさせてください。今回の依頼は、ゾルダーク国内であるものを見つけて欲しいというものです。こちらはご覧の通りゾルダークの地図です。大変精密に描かれた特殊な地図ですので、少し大きいですが後ほどお譲りします。任務にご活用ください。」


 ミトラが持っていた鞄からペンを取り出し、そのペンで地図上のある一点を指した。


「ここにゾルダーク国の星宮せいぐう)があります。この場所には非公式の転送陣がありますのでここから潜入が可能です。あちらでの立場は二つ。一つは女性の三星としてお二人ともが星宮内の職員として働いてもらうというもの。この場合はこの転送陣を使用していただきます。」


 ペンはゆっくりとリンドアークからゾルダークに向けての線を描く。


「もう一つはアレイディア殿のお立場のままで、モーラを親戚の六星として連れて、こちらの正規ルートから社交界に顔を出す、というものです。」


 ミトラの爆弾発言により、アレイディアは地図を見るために身を乗り出したまま固まった。円卓の冷たさはもう何の慰めにもならなかった。


 思わずミトラが置いたペーパーウェイトの一つを掴み、がたん、と音を立てて椅子に落ちるように腰を下ろす。握ったペーパーウェイトで頭を無意識に冷やしながら、深呼吸をして意見を述べた。


「前者は、まあ思うところはありますが潜入方法としてはいいとしましょう。三星で星宮所属のものはよく入れ替わるようですから、あまり周囲に怪しまれることもありません。」


 ペーパーウェイトを割れそうなほどに強く握りしめる。


「ですが後者はなんです?なぜ私が他国の社交界に顔を出すのです?八星マリセトラの王家の者ならそういうこともあり得ますが、私は六星セトラリエですよ?そんな場所でこの立場をどう活用できると言うのですか!」


 ふふんと鼻で笑うような仕草をするミトラを物珍しそうにミューが眺めている。


「おや、先ほどはご自分の立場を利用して私の腹を探ろうとされていたではありませんか。今更ですよ。」


「なっ!」


 返す言葉もなく顔を紅潮させるアレイディアを見て、相変わらずリンドアーク王は面白そうに微笑み、ミューはこのやりとりを心配そうに眺めていた。



「とにかく話を続けます。ゾルダーク国の社交界は期間が短い。年間を通して穏やかな気候のため夏と冬の二期に分かれているようですが、夏は特に他国の王家、つまり八星を持つ者が訪れることが多いとか。」


 持っているペンでトントンと地図を叩く。


「今年は戦火が上がりそうだというのに、なぜか少し夏の期間を伸ばして各国の八星を積極的に招待しているようです。何か意図があるのではとどの国も戦々恐々ですが、私達はあえてその企みに乗ってみようかと。」


 ミトラはペンをくるくると器用に回しながらアレイディアの反応を見ている。


「とはいえリンドアーク国は九星のトップを王に据える大国。このような情勢で王家である八星の方々を危うい国に動かすのは難しいところです。だからこそあなたの出番という訳です。」


 少し落ち着きを取り戻したアレイディアが低い声で答える。


「なるほど。王家の人間では無いが、王に繋がりがある者、でも継承権は無く特殊な任務もこなせる便利な人材、ということですね。」


「お分かりいただけたなら幸いです。」


「・・・。」


 

アレイディアは腕を組んだまま背もたれに寄りかかり、目を閉じて黙ってしまった。


 室内に気まずい沈黙が流れるのを、ミューは大人しくやり過ごすことにしよう、と固く決意した。


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