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星降る夜に君の願いを  作者: 雨宮礼雨
第四章 記憶と未来編
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見えてきた過去

 ミトラがその白い光の中で見えたのは、アミル、ウシュナ、そして名も知らぬ管理者候補だった星守の人生だった。



 アミルは幼い頃から才能で溢れた女性だった。美しさもさることながら、利発で明るく、誰からも愛される少女として、そして管理者として見出された存在として、日々生き生きと暮らしていた。


 そんな中ウシュナと出会い、自分がより強い力を持って誰かを助けられるようになりたいと思うようになる。


 その気持ちがセトラに届き、彼女は後天的に『現実化』の力を得た。しかしこの力は強すぎて、日常生活では支障が出てしまう。そのため星と特別な契約を結び、どうしても必要な時以外は『現実化』が発動しないように鍵をかけた。



(何か特殊な儀式をしたわけじゃない。ただここに来て祈ったのだ。セトラに会って、セトラと約束した)



 彼女はその力をある時暴発させて、謝って空間を飛び越えてしまう。そこで初めて会って助けてくれた男性が、あのクラタという男だった。


 彼女は恋に落ち、結婚をして子供を産む。ミユウと名づけ、二人はセトラに来て幸せに暮らしていた。だが何かの影響で、父と子だけ元の世界に戻ってしまう。


 現実化の力が安定してきたアミルはそれを追いかけていくが、結局彼女は娘の力を安定させるため二人でセトラに戻ってきた。



 そして数年後、ミユウは突然消える。



 アミルはミトラを見出し育てながらも、娘のことを考えない日はなかった。


 そして再び娘を迎えに行くが、そこには自分を忘れ、受け入れることのできないミユウがいた。仕方なく叔母と名乗り一緒に暮らすうちに、セトラから来た二人組に娘は誘拐される。



 ミユウを探し、ようやく見つけた時にはもう、以前の彼女ではなかった。恐ろしい未知の力をその身体に溜め込み、苦しみと絶望の中に閉じ込められた娘を見て、彼女は全ての力を解放した。


 そして、ミユウとその力を必死に切り離した後、二人組と共に、命を絶った。





 ウシュナの記憶はもっと曖昧なものだった。



 アミルの笑顔と男と二人現れた時のショック、そしてミューとの出会い・・・二人で手を繋いで歩いたこと・・・


 そしてある夜、身体に物凄い衝撃を受けて気を失う。


 ・・・それから先は黒くなっていてほとんど何も見えなかった。



 ただ、ミューと再開した時の記憶だけが断片的に現れた。そこには光が溢れ、彼がその姿を見た時にどれほど心が救われていたかを、ミトラは一緒に味わっていった。


(彼もまた、救いを求めていただけだったんだな)




 そして最後に目の前に現れたのは、一人の見知らぬ男性の人生だった。



 彼は生まれながらにして強い力を持った三星だった。地力も天力もずば抜けており、本来であれば管理者に見出されていてもおかしくなかったはずだが、その時の管理者はアミルを選んだ。


 自尊心の強い彼は恨みを抱き、独自に力を蓄えつつ星守として生きていた。


 そしてある時、アミルを殺し、自分が管理者となることを企む。様々な悪事に手を染め、最終的にはそれが全て露見して、当時の管理者にほとんどの星を奪われた。さらに力を取りあげられそうになった時彼は妻と共に逃亡し、復讐を誓って隠れ住んでいた。


 そしてアミルが管理者となり、その子どもと暮らしているのを知った彼は、二人が『現実化』という恐るべき奇跡の力を持っていることを知りさらに憎悪を募らせる。



 そして、彼は長く計画していたことを実行に移した。


 ミューと共に彼女の父のいた星に移動し、新たな力を彼女に植え付け、復讐の道具として利用した。



 しかし、最後の瞬間にアミルに計画を阻まれ、妻と共に命を落としたのだ。





 セトラが見せてくれた記憶は、どれも重いものだった。誰もがもがき苦しみながら、それぞれの人生を歩んでいた。



 そしてどの人生も、セトラはただ愛して見守っていたのだ。



「セトラ、ありがとう。俺は・・・彼女の元に戻ります。」


 そしてミトラは、静かに意識が遠ざかるのを感じていた。


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