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星降る夜に君の願いを  作者: 雨宮礼雨
第一章 ゾルダーク編
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秘密③

「どうか頭をお上げください、守り人様。」


 慌てる様子も無くリンドアーク王は静かにミューに語りかけた。どれほどの思いで頭を下げてくれたのかと思うと胸を締め付けられる。


「この星の危機とあらば、想いも目的も同じではありませんか。あなた様が私に頭を下げてまでお願いするようなことではございません。むしろこれは私達王が力を合わせて取り組み、守り人様に力をお借りしたいとお願いするような話です。」


 王はミューの手を取り、真っ直ぐに彼女の瞳を見つめて言った。


「この星の王の一人として、守り人様と共に、歩ませてください。」


 まるで告白のようではないかと内心穏やかではないミトラが、そっと王の手の上に自分の掌も乗せてにっこりと二人に微笑みかけた。


「私も管理者兼守り人様の守護者として、最善の力を尽くさせていただきますよ。」


「・・・もちろんだ、ミトラ殿も宜しく頼みます!」

王は何か不穏な空気を感じたのか、そっと二人から手を離した。


「良かった!これで第一関門は突破ね!では次は具体的な作戦会議といきましょう!リンドアーク王、夕食後にまたこの部屋へお越しくださいね。後ほどお部屋に夕食を運ばせます。」



 ミューはそんな空気など全く感知していない、という顔で優美に微笑み、クッションの隙間を上手に縫って部屋を出ていった。




 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇




 流星宮の白い廊下はどこもかなり入り組んだ構造となっている。その上どの廊下もほぼ同じ景色が繰り返される特徴の少ない場所であるため、初めてここを訪れた者は必ず迷う。


 そのため、流星宮に慣れていない従者達には必ず身綺麗で礼儀正しい子ども達が一人ずつつき、必要な場所まで案内されることになっている。



 つまり、ミューが見覚えの無い者がここに一人でいた場合、それは何らかの意図があって、こっそりと移動しているに他ならない。


「何しているのかしらあの人。」


 怪しむというより怪しさ満点な挙動不審さにちょっと笑えてしまう。


(ああ、あの人、アレを持っているのね。)




「お客様、もしやお迷いでいらっしゃいますか?」


 ざっくりと髪をまとめ、持っていた眼鏡をかけ、ミューは貴族然とした赤毛の長髪をまとめた男性に唐突に声を掛けた。


 濃い緑色の宝玉が嵌め込まれた杖に指が少し触れるくらいの近さまで寄ってから声を掛けたので、男性は面白いほどにビクッと肩を揺らした。宝玉の色が微かに鈍った。


「!・・・いや、大丈夫だ。少し考え事をしていただけだ!」

男性は目を泳がせながらそう告げると足速に去って行く。




「・・・ミトラ。」


 男性の姿が見えなくなってから小さな声でその名を呼ぶと、当たり前のようにそこにミトラが現れた。


「浄化できましたか?」

「もちろん。」

「彼はゾルダーク王の従者ですね。」

「ここにアレを直接持ち込むなんて随分といい神経してるわね。何かの罠かしら?」


 ミューが首を傾げる。


「まあ無い線ではありませんが、今回は試しにやってみた、というところではないかと。こちらの動きを見る意味でも、どこまで仕掛けられるかを確認する意味でも。もしアレを持ち込んだことが露見しても、従者が勝手にやったと切り捨てればリスクはそれほど大きくないですからね。まあ、こちらとしては問題にしたいところではありますが。」


 ミトラが目を細める。


「ゾルダークの王が考え無しに『アレ』を仕掛けてこいと指示したのか、それとも裏に何か大きな意図が隠されているのか、今のところは謎ですね。」



 二人の視線が一瞬合ってすぐに離れる。



「何の効果も無くなった『アレ』を持ち帰って、彼はどうなるのかしらね・・・。」


 ミトラは無表情で肩をすくめる。


「さあ。まあ碌なことにはならないでしょうね。」


 ミューはあの従者の未来を憂えて、首を振った。

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