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星降る夜に君の願いを  作者: 雨宮礼雨
第一章 ゾルダーク編
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秘密②

 リンドアーク王は目を瞑り少しの間黙って考え込んでいたが、ゆっくりと目を開いた時にはすでに王としての鋭さと落ち着きを取り戻していた。


「なるほど、お話はわかりました。ゾルダークの件は氷山の一角なのですね。そしてその『禁忌の力』の元となる何かは一見して判別できる物ではなく、通常はそれを手にし、欲望に身を任せればその者は身を滅ぼす。しかし今回の相手はそれらを制御し得る力を持ち、彼らの恐ろしい目的の為に大きく動き始めていると。」


「ええ、そういうことね。」


「そして守り人様、いえ、モーラ様はもしや、その力や力の元となる物を排除することが出来るのですか?」


 ミューは大きく頷く。


「そう。浄化し、元の姿に戻すことができます。それに侵食されてしまった人を癒すことも。そしてそれが出来るのは私だけ。それが私のこの星での役目なのです。」



 小さな部屋に一瞬の静けさが訪れた。



 王が思い立ったように質問を投げかける。

「浄化というのはその物に近づかなければなりませんか?」


「触れる必要があります。見れば判別はできますが、はっきりとその物体が見える所まで近付く必要があるのです。だからこそ詳細で確実な情報が欲しい。できるだけ無駄な動きをせずに怪しいものを探していきたいのです。そして、誰がどのようにこの力を使っているのかを知る必要があります。」


 先ほどより更に無表情になったミューは、あの不可思議な力を湛え始める。


「モーラ様。」


 ミトラがモーラことミューの肩に手をそっと触れると、その力はあっという間に収まっていった。


「ミトラ、ありがとう。」

優しい微笑みがミトラに向けられる。



 リンドアーク王はその様子を見ながら、疑問に思ったことをもう一つ口にした。


「モーラ様、その禁忌の力、一体どのような力なのでしょうか?その力が強大で恐ろしい力だということは私も含め九星の王は皆知っております。しかし具体的にこの星にある力とどう違うのかは、誰も把握していないのです。」



 ミューは辺りに転がっているクッションの一つをつかみ取り、ぎゅっと抱きかかえた。



「王は天地両方の力をお持ちかしら?」


「はい、天力が強く出てはいますが、地力も少し持っております。」

 

 質問に対し質問を返されたが、王は落ち着いて返答する。


「強い力を感じたからそうではないかと思っていたの。」

うんうん、と嬉しそうに頷いて続ける。


「この星に元々存在するのはその二つの力だけ。もちろん知っての通り天力はこの宇宙、この星で起こり得るあらゆる力の総称。火、雷、風、天候の変化や大地の揺れ、重力など大きな力。物を動かしたり音や波などもそうね。」


 王は頷いて聞いている。


「そして地力はこの星が愛を持って民に送る生命を育む力の総称。自然を育て人々を癒し、この星がどれだけ民を愛しているかを感じられる奇跡の力。」



 ミューの眉間に小さな皺が現れる。


「そしてそれらとは全く異なるのが『禁忌の力』。この力は滅びの力。時に剣となり、時に毒となる強大な力。あらゆる攻撃的な力を行使できる。想いのままに形になる。」


 身を震わすようにして続ける。


「強い欲望を持つ者達には抗えない甘い誘惑。でもその負の想いが使うほどに増幅され、強すぎる力の対価として精神と肉体両方を力に奪われるの。」


 王は冷静に受け止める。

「強い力だから欲するが、それは身の破滅に繋がると。」


「そういうこと。この力を使えば大抵の者は精神を病んでいくし、時には身体も破壊される。近付くこともリスクがあるの。でもあなたは強い意志と他に類を見ない大きな力のある王。自分よりも民を想い、国を守り育てる賢王。だからこそあの力に立ち向かえる。茨の道ではあるけれど、どうか私に力を貸してください。」



 ミューはクッションをそっと横に置き、王にゆっくりと頭を下げた。


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