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星降る夜に君の願いを  作者: 雨宮礼雨
第二章 過去への旅立ち編
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不穏な旅の始まり

「・・・という訳で、東に向かってから峠を越えて、王都に向かうルートに変更になったよ。」


 アレイディアからの報告は素早かった。ドアが開いた瞬間から説明を始め、まだもう一言付け加えようとしている。


「それで、ミトラがとある商会のお嬢さんに惚れられちゃったみたいだから、いつでも俺の胸に飛び込んできていっ!?」


 ミトラが本当に冷気を放ちながらアレイディアの耳を掴んで冷たすぎる笑顔で立っていた。


「ミトラ・・・アレイディアに優しくね・・・」


 ミューはアレイディアの救出は諦めたらしい。その後しばらくアレイディアは廊下から戻ってこなかった。




 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇




 その後無事にミトラと帰ってきたアレイディアだったが、相当説教を喰らったのか、大人しく座っている。


「ミュー、アレイディアに何を聞かされたかわかりませんが、俺はあなた一筋ですから。心配しないで。」

「えっと、うん、いったい何の話?」


 ミューは話が見えず、困惑する。


「ですから、そのデルーガという商会の娘さんが、王都まで一緒に行きたいということを仰って、アレイディアが勝手に引き受けてしまったんです。まあ仕方がないので今回限りのご縁、車は別ということでお引き受けした次第です。」


 へえ、と気のない返事を返すミューに、ミトラは少し不安になる。


「しばらく女性と一緒に旅行となってしまいましたが、ミューは大丈夫・・・ですか?」


 ああ!とミューは笑顔になる。


「もちろん大丈夫!私は仲良くできるわよ。それにきちんとその方のことも守るから心配しないで!」


 ミトラは頭を抱えていたが、アレイディアはただ黙ってその様子を眺めていた。




 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇




 翌朝、ライラメアは近くの星宮に移動できなくなったため、ミトラが流星宮に転送、その後モリノにリンドアークまで転送をお願いする、という形で帰国していった。


 何度も抱き合って別れを惜しむ姿を見て、なぜか二人の男性には呆れられてしまったが、ミューは気にしなかった。



 そして、三人の出発の時間。


「おはようございます!」


 元気で明るい挨拶で現れたのは、あの日ミューがミトラの部屋の前で見たブルネットの女性だった。


 装飾は少ないが光沢のある紺のスーツを身にまとい、髪を柔らかくまとめ上げて薄く化粧を施した彼女は、ミューの目から見ても素敵な女性だった。ただちょっと露出が多いような・・・胸や足が強調されたような感じ?


(でも、旅をしやすいようにと簡素なワンピースやパンツスタイルばかりの私は、女性として彼女を見習わなきゃね!)


 ミューは素直にその良さを受け入れて称賛の眼差しを送っていたが、どうやら相手の女性はそうでもなかったらしい。



「あの、あなたは・・・」


 少し強張った表情と小さめの声で何かをミューに話そうとして近寄ってきていたが、いち早くそれに気付いたアレイディアがそこに割って入った。


「彼女は私の妹です。六星セトラリエ)のミューリエラ、こちらはデルーガ商会のご令嬢、ベルミアさんだよ。ええとあなたは四星セトラスだったかな?」


 アレイディアの紹介は明らかに牽制だとわかるものだったが、ベルミアは落ち着いた表情で丁寧に挨拶をした。


「初めてお目に掛かります。私デルーガ商会長の娘、四星のベルミア・デルーガと申します。ミューリエラ様、コーラル様の旅に同行させていただき、感謝いたします。どうぞ本日よりよろしくお願いいたします。」


「ええ、ベルミアさん、どうぞよろしくね。」


(アレイディア、助けてくれたのかしら。それにしてもまたもや妹設定に・・・)



「あ、ミトラ様!」


 そして彼女はあっさりと、そこに遅れて現れたミトラの方に向かって行ってしまった。



(これはもしや今後修羅場というものを経験できるチャンスかしら?)



「ミュー、大丈夫?」

アレイディアが心配そうに顔を覗き込む。


「ん?そうねえ、今のところまだ修羅場は早いと思うな!」

ミューが思っていたことをそのまま口にすると、


「何それ?ミュー、この状況わかってる?」

アレイディアの信じられないという視線が痛い。


「え、わかってないのかな?でも彼女はなんかこうわかりやすいよね!綺麗だし!色っぽいし?ちょっとワクワクしちゃう!」


 アレイディアは、はぁあ、と呆れたようなため息をつき、「君って時々とんでもなくアホっぽくなるよね?」という暴言を頂戴し、腹いせにちょっと背中に冷気を送り込んだ。


「ひゃあ!?何するんだミュー!」

「お兄様、いつでもケンカは買いますわよ?」

「・・・俺より強い妹なんて・・・」


 久しぶりのアレイディアとのくだらないやりとりは、ちょっとだけ、ミューの気持ちをスカッとさせてくれた。


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