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星降る夜に君の願いを  作者: 雨宮礼雨
第一章 ゾルダーク編
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ープロローグー 流星の少女

初めての作品です。

拙い文章と内容ですが、応援よろしくお願いします!

 その夜、空には溢れんばかりの星が瞬き、強い風が広い草原を、そのまばらな木々の間を音を立てて駆け抜けていた。時々暗闇には美しい光の筋を描く流れ星たちが、空の下の全てを祝福するように輝いては消えていく。


 その美しい空に一際大きく輝く流星が流れた瞬間、少年は弾けるように草原を走り出した。


 普段は肩に少し触れるくらいのさらさらと流れるような髪が、強風に翻弄されて絡まり合い少年の視界を遮る。それでも目指す方向への追い風ならば、と風の後押しに感謝しつつ、流星が消えた方角へと彼は必死で走り続けた。


 少年の膝あたりまで伸びた草にところどころ足を取られながらしばらく走っていると、波打つ草原の一番高いと思われる場所に辿り着く。


 息が、苦しい。


 空を見上げてゼイゼイと肩で息をしていると、明らかに風の音ではない葉の揺れる音が微かに聞こえた。


 少年ははっとして顔を上げ辺りを見回す。だが星明かりしかないその場所では何も見えない。しばらく周囲を歩き音の正体を探るが見つからない。


 気のせいだったのかと探索を諦めかけたその時、ザザっという大きな音と共に黒い人影がぬっと現れた。突然の動きと思わぬ近さに驚き後ろに仰け反った少年は、声も出せずに尻もちをついた。


 見上げるとそこには、満点の星空に彩られた人の姿があった。顔や表情は見えず、辛うじてわかるシルエットや髪の長さで恐らく少女だろうと少年は判断した。


 なぜか少しだけ安堵して立ち上がり、少女らしき者に声を掛ける。


「キミは、流れ星の人?」


「・・・」


 少女は身動きひとつせず、無言のままそこに立っていた。少年との距離は人が間に二人ほど立てる位の近さだったが、辺りの暗さのせいか思いの外少年には遠く感じられた。


 しばしの沈黙の後、もしや言葉が伝わっていないのではないかと思い至り、少年は一歩前に進み自分の名前を告げる。


「僕は、ミト。キミは?」


 自分の胸に右手を当てながらミト、ミトと繰り返すと、少女が少しだけ首を動かし、


「ミ、ト。」


と声を発した。初めて聞く少女の声は何とか聞き取れる程の小さな声だったが、強風に掻き消されることもなく少年の耳にしっかりと届く。鈴の音のような軽やかで美しいその声は、彼の心をチリリと震わせた。



 その夜、これまで誰も見たことがないほど沢山の流星が、その草原の空に現れては消えていった。


 だが、彼ら以外にそれを見た者は誰もいなかった。


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