第1話 戦女神、宇宙へ
時は西暦2353年。
地球は日本リージョンの、大阪府都エリアの地方都市、スプリングビッグポートシティの湾岸道路沿いにひっそりと佇む、昭和の風情色濃く残す店舗にて、二人の男女が向き合っていた。
男の方は青年といった年頃の、目元涼やかなる美男子だ。
その見目麗しさは、手ぬぐいを三角巾替わりに頭部に巻き付け、作務衣を着込んだ野暮ったい姿ですら、異性に慣れないおなごが見たらヤン気を溢れさせずにはおれぬ恰好良さを醸しだしており、持って生まれたイケメン特権を存分に発揮していた。
女の方も同じく、社会人になったばかりといった感じの若さ溢れる淑女だ。
ややくせがあるが美しい黒髪をラビットスタイルで括ったツインテールがもふもふとして可愛らしく、釣り目気味ではあるが大きい目をした、整った顔だちである。
その瞳は、普段はブラウンだが、光を受けると透き通った美しい金色に輝く。
しかしその外見とは裏腹に眼光は鋭く、また立ち振る舞いに一部の隙も見られない。
そして小柄な身体からは想像もつかない程に攻撃的な闘気を発散させる様は、この乙女が若くして歴戦の宇宙闘士である事を示している。
更に奇妙な事に、括った髪の毛先がグラデーションの様に変化しており、彼女の左手側が茶、金、銀、右手側が白、青、赤に染まっている。
この宇宙の戦女神といってよい風体の乙女は、店舗に入って美男子と相対するなり、開口一番こう言った。
『・・・旅団作るから、スペースライダーになりなさい。』
「・・・!?えっ、久々に帰ってきたと思ったら、姉ちゃん何言ってんの?嫌だよ!おれ宇宙調理師になるって決めてるからスペースライダーになんてならないよ!?」
『・・・いいから。これアプリ。さっさと受けなさい、あくしなさい。』
「嫌だよ無理だよ!おれ強くないし!コワイのやだ!許して!」
『・・・・やれ。』
「・・・・ええ~・・・ナンデぇ・・・」
あたしが投げつけたアプリを開いたけど、仮想ウィンドウの開始ボタンを押さずに、ブルブル生まれたての小鹿みたいに震える弟。その目には涙すら浮かぶ。
もう、あくしなさいよ、オーラムピラ憑いてんでしょ?あたしはいい加減焦れてきた。
『・・・・いいからさっさとしなさい。時は180年位しか残されていないわ。』
ライフサイエンスが発達した今の世の中では、人の寿命は200年以上だ。
180年経過しても尚、まだ数十年の余裕があるのだから、あたしの提示した時は残り少ないといってよい。
「それって人間の寿命じゃん!実質制限なんて無いよね!?あと哲人伯父さんが、「スペースライダーになったらもう、戻れなくなる」って言ってたよ!?おれそんなの嫌だよ姉ちゃん!」タッタイチドアタエラレター♪
『・・・・あたしはそれを望んでる。』イノチハチャンスダーカラー♪
「おれは望んでないよ!嫌だぁ~!!アイエエエ!!オタスケ!」ブンブン
見苦しく本気で嫌がり泣き叫ぶ弟を見て、いい加減邪魔くさくなったあたしは、その腕をむんずと掴んで、無理矢理仮想ウィンドウの開始ボタンを押下した。
『・・・・いいからやれ。』ポチッ
「アイェエエエ!!あっ!?・・・・うーん・・・・」バッタリ
意識を失い、人事不肖に陥った弟。糸が切れたみたいにぷっつりと倒れ、ビクビク痙攣しながら、半目を開いて呻き声を上げてて、はっきし言ってキモい。
・・・ヨシ!これで目覚めれば弟は勝手にライダーになる。しばらく放っておいて、ベースシップのカタログでも見ることにしよう。どんなのがいいかな・・・?
あたしはグローバルネットを開き、シップメーカーの検索を始めた・・・。
あたしの名前はメイン=ダォレイ(23)。スペースライダーの見習いやってる。
スペースライダーっていうのは、昔は「深宇宙探索業者」って呼ばれてたらしいけど、兎に角宇宙の冒険家みたいなもんね。
それ以外には悪いヤツら・・・「スペースローグ」とかいうおバカさん達・・・を懲らしめたり、宇宙を行きかうスペーストラック野郎達を護衛したりと、兎に角荒事に事欠かない、武侠の職業だね。
何かテラフォーミングとかの環境整備もやるみたいだけど、難しそうだから、あたしはよく知らない。それに、やった事もないし。
あたしがそんな世界に入ったのは、ひとえに先輩ライダーで、敬愛する武術の師匠でもある伯父・・・星永哲人・・・に憧れたから。
そんで、今まで喚いていただらしないやっこは弟のオイラー(20)。料理と歌が得意な優男だ。腕っぷしは貧弱なもやしだけど。
見た目が良くて割とモテるくせに、本人は調理修行にしか興味がない、今時珍しい位に修行僧めいたストイックなやっこで、泣かした女の子は数知れない。
もっとも、それは本人には全く窺い知れない所でだけど。罪深いやっこだ。
今居る所は我が生家、お好み焼き屋「もこやん」。オイラーは暇があれば何時もここで家族と一緒にお好み焼き、時々焼きそばを焼き、手伝いをして過ごしている。
あたし?あたしが料理したら、何故か何やっても黒ずんだ謎の物質しか出来ないから、手伝うとしたらもっぱらウェイトレスか皿洗いかな・・・。
何でそんなおっかない女って言われても仕方ないあたしが、人畜無害のおにーちゃんである弟を無理矢理武侠の世界に引きずり込むような真似をするには訳がある。
あたしは大学を卒業してすぐにライダーになり、伯父さんの旅団に入った。
ライダーは世間的にすごく需要があるけど、業務内容が過酷すぎて誰もやりたがらない、希少職種だ。人手は幾らあっても足りない。
宇宙から帰って来て、「もこやん」で一休みする疲労困憊な伯父達を見かねて、その手助けするつもりでライダーになったのがあたしの運の尽きだった。
伯父達の手助けがあったとはいえ、息をつく暇も無く、次から次へと舞い込むミッションをひたすらこなす毎日。
スリルに満ちた戦闘の日々だ。先輩達のサポートが無ければ、あたしなんか既に宇宙の藻屑になり、星雲を漂う星間物質の一部になっていたに違いない。
だが、そんなサツバツな世界にて、これまで培ってきた武を存分に振るえて、案外充実してるから、ライダーはあたしには向いてたんだと思う。
特に楽しかったのは、直接惑星の地表に降りて、遺跡やらを探索する事だった。
この、現代の便利なガジェットなんか殆ど使えない、己の力と知恵と勇気だけが友達の大冒険に私は魅せられた。
凶悪なトラップを攻略し、殺意120%な警備機構をブチ壊し、難解な謎解きを腕力で解決し、最奥にいる親玉を張り倒して踏破するのは何事にも代え難い経験だった。
宇宙のおバカさん達を懲らしめるのも大事だけど、思う存分冒険もしたい!
そうやって悶々と悩むものだから、お手伝いで作成したドキュメントの内容は間違えるわ、おバカさん達を死ぬ二歩手前位にしか懲らしめられないわで、散々だった。
流石に不味いと、あたしはその事を敬愛する師匠でもある伯父・哲人に相談した。
「・・・そうか、君もまた私達の一族。宇宙に魅かれてしまったか。君は私をはじめとする武の者達に数多く触れ、新たなる武術を拓くまでに至った。その拳は戦いの中で進化する、戦場の拳だ。理不尽な悪に苦しむ人々を救うために天から齎されたものなのだろうな・・・。ヨシ!ではこうしよう。メイン、君は新たなる旅団を結成し、私達と同盟を組むんだ。そして地表探索を専門にして活動したまえ。私達も地表にまで降りられる程、手が足りてるわけじゃないからね。そうして貰えると助かるしな。・・・その他の事は全力でサポートしよう。」
こう言って大恩あるわが師は背中を押してくれたので、一念発起したあたしはメンバーを集める為に地球に戻ってきたってわけ。
旅団の結成は最低三人居ないと出来ない。だからわが師から色々と話を聞いていたあたしは真っ先に弟であるオイラーを引き込む事にしたんだ。
何故かって?こうすれば、上手くいけば一度に《《二人》》のメンバーが加入するからだよ。確実じゃないみたいだけど、たぶんコイツなら大丈夫だろう、たぶん。
それにライダーは資格であって職業じゃない。一度なるともう、辞められない。
ラスボスに挑む前は、ラストダンジョンに入る前にセーブしなきゃダメだよほんと。
うっかり最後のエリアに入っちゃったら、「逃がさん・・・。お前だけは・・・。」ってなって、詰んじゃうもんね。フフフ・・・・・。
そうやってほくそ笑みつつ、シップメーカーのカタログを見て、レアなトレカを引き当てたアメリカンキッズの様に鼻息荒くしていると、上の居住スペースから、他の家族らが降りてきた。
「もこやん」の店主である祖母と、従業員でもあるあたし達姉弟の両親だ。
「・・・さーて、今日も一日頑張りますかぁ!お仕事ですよ、お仕事!」
「hahaha!オカー=サン、今日も元気、元気ネー!オトー=サンもイパイ、お好み焼き焼くマース!」
「フフッ!ふたりのお陰でわたしは楽でいいわぁ!そういえばオイラーが先に準備するっていって降りてったけど・・・アラ!メイン、帰ってたの!おかえりなさ・・・って、オイラー何で倒れてるの!?」
このカチューシャをつけて張り切ってるオバちゃんがおかーさんの春香(49)で、カタコトの怪しいしゃべり方のオサーンがおとーさんのクィン(49)。
ぶっ倒れてるオイラーを見てびっくりしてるのがおばーちゃんの令(75)。
皆結構歳いってるけど、生体ナノマシンのお陰で見た目はあたしと殆ど変わらない若い姿をしていて、元気そのものだ。
ぶっ倒れてピクピク痙攣しているオイラーを見て、皆慌てて駆け寄ってきた。
「ちょっとオイラー、しっかりしなさい!メイン、貴女、オイラーに何やったの?オイラー、「あがが」ってなってるじゃない!DVですよ、DV!」
「あがが・・・・ワッヒィ!?・・・あ゛あ゛~~・・・」ピクピク
『・・・ライダーのチェックさせてる。』
「oh・・・ナムサン!とうとうオイラーまで、ライダーになりましたカー。ショーガナイ、デースネ。」ヤレヤレ
「ハァ・・・とうとうオイラーまで!あのハゲの仕業ね・・・ゆ゛る゛さ゛ん゛!次に戻って来たら今度こそニフルヘイムへ叩き落してやるわ!」ズゴゴゴ・・・
一様に反対する家族。まぁ、こうなる事が分かってたんで強引にやった訳だけども。
おばーちゃんの方は、怒りの矛先をハゲ・・・宇宙考古学の教授で、旅団「熱き冒険者」の頭首でもあるジョーンズ博士に向けてくれるからいいとして、問題はおかーさんだ。
当然、納得出来ずに、あたしに詰め寄ってきた。でも大丈夫よ、問題ないね。あたしにいい考えがあるんだ。
「メイン、貴女まさか無理矢理チェック受けさせたんじゃないでしょうね!?オイラーがライダーみたいな荒っぽい仕事出来ない事ぐらい知ってるでしょう?確信犯ですよ、確信犯!」プンスコ
「・・・・おかーさん、貴女は誤解している。ライダーは危険なんかじゃない。」
「そんな訳ないでしょ!兄貴ですら毎度フラフラになって帰ってくるじゃないの!やっぱり危険が危ないんじゃない!異議ありですよ、異議あり!」ユビサシピキーン!
「・・・よく考えてみて欲しい。・・・閉鎖された宇宙船の船室・・・すし詰めのむくつけき漢達・・・そこにオイラーが居る。・・・何事も起こらないはずもなく?」
「・・・・!?な、なんて美味しい・・・ハッ!?いや危険な状態なの!?オ、オイラーのオイラーが、逞しい筋肉に蹂躙されて・・・!?こうしちゃ居られない!俄然意欲がわいてきたわ!創作ですよ、創作!」ダバダバ
「あっ!?ちょっと春香!・・・・メイン?貴女分かっててやったわね?」ゴゴゴ
フフフ、計画通り。おかーさんは一見フツーに見えて、実はかなりの腐れ具合だ。
よく他の人に、「メインちゃんトコの人、メッチャ濃すぎだけど、おばちゃんだけ普通だよね!」なんて言われるけど、とんでもない。
正直、おかーさんが一番クセがあって濃い人物だ。ああ見えて、夏と冬に大活躍する腐女神「トリプルリボン」だから。
一度こうなったら、自室から、飯と便所以外の時以外では出てこなくなっちゃう。
フフフ・・・・・これで邪魔者が一人、居なくなった。
しかし小手先はおばーちゃんには通じず、逆に凄まれて、あたしは首をすくめる。
この人だけは適当に相手をするのは無理。滅茶苦茶強いから。見た目はおかーさんより若く見える小柄なおねーちゃんなのに。
その強さはやべぇなんてもんじゃなく、敬愛するわが師はおろか、他の誰よりも強い。正直、人類最強なんじゃないかって思う。
あたし如きが盾突くなんて、お猿がハムレットをタイピング出来る時間ぐらい早い。
それこそ、アリンコが恒星に突撃するようなもんだ。プロミネンスに飲み込まれて、一瞬で陽子と電子と中性子に分解、燃料として吸収されてしまうだろう。
でも、わが師曰く、更に強い人が居るらしい。とても信じられないが、宇宙は広い。
そんな人には、逆に弱音を吐いて、か弱き孫娘を演出するに限る。
『・・・強引すぎたのは謝る。でもこれは哲おじの提案でもある。・・・それに知らない人をメンバーにするのはちょっとコワかったし・・・・。』ウルウル
「ふぅん、哲人が?それで、なんて言ったの?」ズゴゴゴ・・・
『・・・「地表探査の別働隊が居ると助かるから、旅団を分けて欲しい」って言われたんだよ、ほ、ほんとだよ。』コワイ!
まぁ、大体合ってる。嘘は言ってない。微妙に違うかもしれんけど、まぁ、ヨシ!
っていうか闘気ヤバ杉内・・・ヘタレのオイラーだったら、ぶっ倒れるよコレ。
現にエビゾー(愛玩宇宙暗殺獣)なんてもう嘔吐失神失禁脱糞状態になってるもん。
あ、店からゴキブリとか蜘蛛とかがスゴイ勢いで下水に逃げてった・・・・。
暫くの間、闘仙の凄まじい気当たりに晒されて、演技がほんとの涙目になってガクブル震えが来た頃に、ふっと威圧が収まった。
「ハァ・・・まぁいいわ。許したげる。そういう事にしといてあげるわ。オイラーを巻き込んだのはいただけないけど、この子も「「スペースグルメキャラバン」に入ってB'グルメを広めるんだ~!」って言ってたし、遅かれ早かれこうなってたでしょうしね・・・。宇宙に魅かれるのは星永の一族の宿命みたいなもんなんでしょう。哲人もついてるし大丈夫で問題ないでしょうけど、あまり無茶はしないでね?」
『・・・・う、うん、約束するよ。・・・・有難うおばーちゃん。』グスン
「オトー=サンも心配デース。ケド、ショーネン、大死をイダケって言うコトワザもあるマース。コジキにも書いてるデースヨ!メイン、ガンバッテ!」
フフフ・・・・・計画通り。(ニチャア・・・ でもおとーさん、なんか違うよ。
あと、恐怖のあまりちょっぴりチョロッと漏らしたのは内緒だ。
でも、その代わりにおかーさんとオイラーが欠勤しちゃった。
流石にそれは悪いから、あたしは給仕と皿洗いの手伝いを申し出る事にした。
うわ言を言いながらピクピク痙攣するオイラーとエビゾーは見苦しいので、コイツの部屋まで引きずって、一緒に万年床へ転がしておいた。その内目が覚めるだろう。
「もこやん」は昔からの馴染みのお客さんや、学校帰りの学生らの憩いの場にもなってるから、結構忙しい。
休暇のつもりで降りて来たのに、ミッションするより目の回る忙しさだ。
むきになって働き、程よく疲れた所で、やっとその日の営業を終えた。ついでに、オイラーも目覚めた。エビゾーはまだ目を回したままらしい。
でもオイラーは真っ青な顔して、折角目覚めたばかりなのにまた倒れよった。一体どれ程にあの凶悪なアプリに辱められたのやら・・・・。
オイラーはもう一回万年床に転がしておいて、あたしは夕食を戴いた。
久々に食べる宇宙ジビエしょうが焼きは絶品だった。やっぱりお肉はコレだよね。
「果報は寝たフリをして油断させてからアンブッシュ」っていうし、疲れてたから、その日はさっさとお風呂に入って歯を磨いて屁をこいてから寝た。
次の日。雀がチュンチュンピヨピヨいうツイートと、窓から差し込む日差しを受けて目覚めた。
時刻は05:30。爽やかな目覚めだ。無味乾燥な宇宙船のキャビンではなく、地表の自然な環境はやはり心地よい。何時もよりもずっと快適だ。
ガバッと飛び起きて、便所で昨晩に蓄積した宇宙乙女ジェットを放出し、歯を磨いてから庭にでて日課の修練をする。
そうやってブンブンスカスカ手足を振り回していると、おばーちゃんが降りて来た。
そんでもって、おはようとアイサツした後、おばーちゃんは特にしゃべる事もなく、無言で「続けるがよい」という雰囲気を醸しながら、縁側に座りこんだ。
まだまだ未熟なのに、この闘仙に見つめられるのは正直恥ずい。
そう、あたしの拳は自ら創出した我流の拳だ。まぁただ単に色々な達人たちに教わる内に、勝手にリミックスされちゃってオリジナルになっちゃっただけなんだけどね。
あたしは図らずも自らの流派になってしまったこの拳を「宇宙女神戦技」と呼ぶことにした。別名は、ユニバーサル=アテナ=アーツだ。
こんな恥ずい呼び名があるのは、宇宙の戦乙女・ワルキューレ達の技、ヴァルキリーアーツ・ノーザンライトフォームが取り入れられているからだ。
ヴァルキリーアーツはわが師の相棒、お調子者のミラ吉から授かったものだ。
・・・わが師の強さもそうだけど、実際ミラ吉も大概オカシイ。普段フザけ倒してるお調子者の癖に、いざ、イクサとなると滅法強い。
しかも、聞く所によれば、ヴァルキリーアーツというものは、複数のスタイルの内のどれか一つだけしか習得出来ないらしいんだけど、このやっこは、なんと二つのフォームと、5つのスタイル、その全てを振るう事が出来る。
いちおー、一番得意なのはノーザンライトフォームらしい。嘘くせー。
じゃあなんで普段は派手なスワンスタイルなのさって聞いたら、ノーザンライトフォームは構えが恥ずいからだそーだ。見た目重視なの?そんなんでいいんだ・・・。
閑話休題、その際にわが師から、「君はまるで戦神でありながら、無益な争いを好まず、守る為にだけ戦ったとされる女神・アテナの様だな。」と、戦いばかりの無骨な女なら一発で討ち取られそうな誉め言葉を貰った事から、調子に乗ったミラ吉にこう名付けられてしまった。改めて実感した。あの伯父は戦姫たらしだ。間違いない。
でも、フツーは人間の乙女には習得出来ないとされている戦乙女の戦技を、あたしが何故修める事が出来たのかは正直不明だ。
ひょっとすると、この変な髪の毛のせいなのかもしれない。
この変な髪の毛の色は別にイキッて染めてるわけじゃない。勝手にこうなったのだ。
3年前にライダーのチェックを受けてから、次の日に、銀髪のものスゲー美女があたしを尋ねてきて、その時にそのぅ・・・結構深い目に唇を奪われたんだ・・・。
そんでベロまで入れられて、惚けてたあたしを見て、「フフッ・・・♡(ペロロン」て舌なめずりしてたのがエロ過ぎて、女なのに何となく前かがみになってしまった。
で、それからしばらくしてどんどん色が変化していったんだ。ナンデ?
切っても切っても元に戻るので、邪魔くさくなってやめた。まぁ、綺麗な色ではあるし、なんか知らんけどヨシ!って思ってる。
そうやって暫くの間、出来たばかりの型をなぞっていると、ふとちっこい時の事を思い出した。
もの心ついたばかりの頃に、よくわが師や、姉と慕う近所のおねーちゃん達が、こうやって修練してるのを真似て、あたしも手足をブンブンしてたなぁ。
郷愁に耽っていると、じっと見ているだけだったおばーちゃんがヨシ!と立ち上がると、なんと技を教えてくれるといった。
普段は組手もしてくれないこの闘仙がこんな事を言い出すとは。
少しは認められたんだろうか?まぁ、ただの気まぐれだよね。勿論、技は伝授してもらったよ。白天奔流・戦姫慈母赫憤掌という、エグいカウンター技だった。
これはワザと相手の技を喰らったフリをして、そのエネルギーを数乗にしてお返しするという、戦場を駆け抜けた戦姫らしい、殺る気満々の技だ。
数倍じゃない、数乗だよ。相手、粉々に吹っ飛ぶよ!こんなヤバい技誰が作った!?
慈愛の地母神も時には激しく怒り狂う事もある、っていう意味らしいけど、慈愛って何処に逝ったんですか?行方不明なんですけど?怒りしかないじゃん!
後、おばーちゃんは笑いながら、「剛の拳である自分には上手く使えないけど、柔の拳を持つ貴女なら使いこなせるでしょ!」なんて言ってたケド、絶対嘘だ。
あたしより断然巧いもん!この人が剛拳だけなんて絶対嘘だ!
釈然としなかったケド、興が乗ったのか組手もしてくれるって言うので、折角なので揉んでもらった。
勿論、手も足も出ずに高速で走り回る針鼠よりコロコロ転がされたよ。
そうしてワチャワチャしてたら昼前になり、おかーさんが部屋からゾンビみたいに這い出て来たので、一緒にお店の準備を手伝った。
ある程度終わったと思ったら、今度はオイラーがようやっと気が付いて、自室から、おかーさんと同じ様にゾンビみたく唸りながらフラフラ出て来た。
その姿に、一瞬ダガーナイフを脳天に突き刺したくなる様な衝動に駆られてしまったが、何とか堪えてアイサツをしてやると、急に生気を取り戻して、生意気にもあたしに詰め寄ってきよった。
「姉ちゃん何だよあのアプリ!あーなるの知っててやったんか!?ひでぇ!ひど過ぎる!それにとんでもない事されたのに、羞恥心以外何にも記憶に残ってないってのが余計コワイよ!おれ、一体どうなったっていうんだよ!」ユサユサ
『・・・大丈夫、問題ない。これで宇宙に出られるよ。やったねオイちゃん。』
「!?それダメなヤツじゃん!おれ汚っさんに何かされるの!?やだよ、ライダーなんてヤダ!戻して!アイエエエ!アイエエエ!!」ブンブン
『・・・チッ、うるせーな。一度なったらもう取り消せないよ。フツーに仕事してたって、有事があったらミッションが飛んでくるんだよ。ラブ・イズ・オーバ。アキラメロン。男だろ?』
「!?そ、そんなぁ・・・あぐぐ・・・もうダメだぁ、おれは宇宙の片隅でひっそりと星間物質になって彷徨うんだぁ・・・」orz
分かりやすく落ち込むオイラー。まぁ、もうこれで逃げ足だけはフナムシ並みに早いコイツでも、逃れる事は不可能だ。
当然、慰める事も必要ないので、あたしは一番重要な事をコイツに聞いた。
『・・・ところで、チェック受けてる時に、夢で誰かと会ったりしなかった?』
「え・・・?誰かって・・・?何も覚えて・・・いや、姉ちゃんのいう通り、誰かと会ったよ!二人組だった!何でこれだけ覚えてるんだろう?ナンデ?」
計画通り。(ニチャア・・・ これで手間が省けた。狙い通り、コイツにも素質が有ったらしい。
畢竟、何やってもコイツは宇宙から逃れる事は出来なかった、という事だろう。
・・・そしてそろそろ来る頃合いだろう、あの不思議な淑女が。
そう思った瞬間に、「ごめんくださいませ。」という、聞き覚えのある、美しく透き通った声が聞こえてきた。やったぜあたし。大勝利。
その後は意識があっちこっち飛び交うピンボール状態だった。
銀髪の美女は、あたしの手を取ってスリスリ頬擦りしながら、「ご無沙汰しております、いくさの女神よ。またお会いできて光栄ですわ・・・ああ・・・・。」ってまたもやエロい表情で言った後、連れの女の子を「もこやん」に招き入れた。
その娘は眠たそうな目をして、ちょっぴり大き目の口をした、ボブカットの美少女だった。
瞳と髪はグレーで、不思議な淑女と同じ様な巫女さんっぽい恰好をしてて、透明の宝石がついたチョーカーをつけてた。わが師が言ってた通りだ。
不思議な淑女に促されて、オイラーが透明な宝石に触れると、店内は眩い海色の閃光に包まれ、目が開けられなくなった。
やがて光が収まり、恐る恐る目を開けてみると、そこには、アメシストのような紫がかった銀髪の、有体にいってスゲー美女が佇んでいた。
出る所は出て、手足はすらりと細く長い。その瞳は美しいアクアマリンで、透明だったチョーカーの宝石も同じ色になっていた。
ただ、頭頂部にはアホ毛が四本飛び出しており、それぞれ黒、金、赤、青に染まっていて、その子供っぽい感じが神秘的な雰囲気とミスマッチしていた。
ボブカットの美女は、オイラーに抱き着くと、潤んだ上目遣いでじっと顔を見つめていた。
分かりやすく動揺しているオイラーに、不思議な淑女が名付けを促すと、やっと再起動したオイラーが彼女にパストラという名を付けた。
なんでも、「過去を顧みず、むきになって前進する」という意味らしいが、本当なんだろうか?まぁ、何でいいですけれど。いい響きなのは確かだし。
感極まってうにゅうにゅ頬擦りを始めるパストラと、またもや分かりやすく動揺するオイラー。
それを見て満足そうに頷いた不思議な淑女は、あたしの手を取って、「数多の戦姫達を統べるいくさの女神よ。どうか不慣れなわが娘を導きたもれ・・・。」と熱っぽく言った後、「フフッ・・・♡」と艶っぽい流し目を残して去っていった。
彼女らの正体を、あたしは知っている。わが師から聞いていたから。
このパストラをはじめとする、不思議な乙女らは人間ではない。Succu=busという、スペースライダーをサポートする為に生み出された、所謂人口生命体だ。
その能力は、髪の毛の色が幾つに別れてるかで分かるらしい。
パストラのアホ毛は四本、四色だ。確かこのパターンは、「戦闘特化」の戦姫とのことだった。この眠たそうな見た目からはとても信じられないが。
でもそれ以上に解せん事がある。あたしの髪の毛の事だ。あの不思議な淑女に聞こうかと思ったのに、エロい仕草に呆けてて聞きそびれてしまった。
ただ、あの不思議な淑女は去り際にあたしの事を「いくさの女神」と言った。
わが師から聞いた話だと、彼女はわが師を「宇宙の益荒男」と言ったそうだが、何故かオイラーには言わずに、あたしに向かってこう言ったのだ。
ひょっとすると、これがヒントなのかもしれない?
そうやってうんうん唸っていると、あたしの肩をペチペチ何かで叩くものがいた。
振り返ると、あたしのNAVI=OSのアバター、束帯姿のナヴィオセラフィム・梔子皇子が居た。どうやら、持っている笏でペチペチし、あたしの感覚を操作したようだ。
どうしたの?と尋ねると、仮想ウィンドウにシュッとメッセージが表示された。
・・・そう、コイツは何故か一言も喋らないのだ。宿主のあたしでも、コイツの声を聞いた事は一度もない。だから口無しとかけてこう名付けた。
そのメッセージカードは、大昔の文の様な、雅なフレームをしてた。平安貴族の様な見た目のコイツらしい。
そしてメッセージには「鳴無之君からデータを提供された。それから推測するに、ひょっとするとそなたは彼女ら戦姫達の上位者なのかもしれぬ。」と書いてあった。
鳴無之君と言うのは、オイラーのNAVI=OSの名前である。
以前に、何故そんな名前なのかオイラーに聞いた所、なんでか知らないが彼女はボイスコマンドに一切反応しない事からこう呼ぶ事にしたんだそうだ。
ただ、念話を送ると返事が返ってくるので、オイラー自身とは意思疎通が出来ない訳ではないようだケド、パブリックモードで他の人とやり取りする時は、ウチの皇子みたいに言葉を喋らず、ジェスチャーや手話で話すとか。
なんでこんな欠点を持っているかは分からないが、あたしの梔子皇子も、鳴無之君も、ちゃんと仕事はしてくれるので、まぁいいかヨシ!って思ってる。
それはそうとして、考察を続ける。はて、上位者とは一体何だろう?
首を捻って考えていると、またもやメッセージが表示された。「おなごはSuccu=Busを持つことが出来ないが、それでも適性を持っていた場合の代替措置として、彼女らに命令出来る能力が付与されるのではないか?」との事だった。
どういうこと?と尋ねると、「つまりは、わが君は人の身で在りながら、彼女ら戦乙女らと同等以上の力を得て、まさに戦女神となった。そして、数多の戦姫らの力を従える権能を与える事で、実質そなたの元へ無数の戦姫を送り届けたのと同じという事にしているのであろうな。ある意味、わが君は最も御両神に認められたおなごやもしれぬ。その御髪の変化も、戦女神の権能の現れであれば一応の筋は通るだろう。」と答えた。メッセージで。
確かにそれなら結構なチート能力だ。見知らぬ戦姫らの力を全て使えるというのは凄まじい。これは検証が必要だろう。ちょうどそこに検体も居る事だし。
という事で、あたしはかるーくパストラに命じてみることにした。
『・・・・パストラ、貴女の力が見たい。少し組手して?』
「・・・・!?・・・・。」チラッ
パストラは少し戸惑った後、オイラーの顔を覗き込んだ。同意を求めているようだ。
再起動したオイラーが頷くと、パストラは庭まで出てきてくれた。
なるほど、どうやらマスターの同意が必要らしい。流石に無条件で従ってくれる訳ではないらしい。
これは初回だけなのかな?それとも毎回同意が要る?これも検証の必要があるね。
ともあれ、庭であたしはパストラと対峙して、所作を観察した。
彼女は、一見するとただ立っているだけの無形だが、それとは裏腹に一切の隙が見当たらない。
その様子にもしやと思い、最初から割と本気目に突きを放ってみると、パストラの姿が一瞬ブレたように見えたと同時に、いきなり背後を取られた。
間違いない、これはヴァルキリーアーツの一つ、サザンクロスフォーム・フェニックススタイルだ。
自らが炎の化身である鳳凰には下賤の存在は届かない。無理に近づけば炎に飲み込まれて灰と化す。
優れた体捌きと歩法でもって動きを悟られずに回避し、相手の死角から強烈無比な一撃を放つという、苛烈な剛拳だ。
ミラ吉曰く、このスタイルの者はかなりの実力者が多く、その数は少ないとの事。
流石は戦闘特化の戦姫。相手にとって不足はない。思いがけない強敵の出現に思わず笑みがこぼれた。
あたしは夢中になってパストラに挑みかかった。パストラの方も、初めは手加減していたものの、余裕を失い、本気で拳を振るってきた。
彼女の不思議な歩法に慣れてきたあたしは、徐々に拳が届くようになった。そうすると、今まで無形だったパストラが遂に構えを取った。凄まじい乙女力を感じる。
彼女は一度、家の屋根まで飛翔すると、両手を海に浮かぶ方の船の舳先でバカップルがフザけてやるポーズみたいに広げた後、凄まじい勢いで跳びかかって来た。
直観で理解出来た。これは彼女のファイナルアーツだ。だがその動きは既に見切った!全力でもって答えるのみ!全霊の力を込めた裂帛の突きを放つ!
だが、決着はつかなかった。「そこまで!」という声と同時に、あたしとパストラの喉元に貫き手がつきつけられ、動けなかったからだ。
組手である事を忘れて、本気で死合ってしまったあたし達を見かねたおばーちゃんが割って入ってくれたのだ。
これだけでこの闘仙の力を悟ったのだろう。パストラは拾われたばかりの子猫みたく涙目になってブルブル震えていた。
「メイン、腕は上がったようだけど、心はまだまだね。力を見るっていう本来の目的も忘れて、浮かれるなんてね。確かに貴女はパストラちゃんより強いけど、差はそれほどでもないわ。このまま続けてたら、パストラちゃんを倒したとしても貴女もまた深手を負ったでしょう。存外に強敵を得て嬉しくなる気持ちはわかるけど、無益な戦いはすべきじゃないわ。」
『・・・うん、そうだね。ちょっと熱くなり過ぎたと思う・・・。』
実際、このまま突けばパストラを殺していただろう。出会って秒で死別とかいう、不名誉な記録をオイラーに達成させてしまうところだった。反省。
落ち込んでいると、闘仙から怒りの闘気が徐々に漏れ出した。
「・・・にしても、そんなにわたしと組手して全力出せたのが嬉しかったのかしら?じゃあその調子に乗った性根を熱して叩いて伸ばして、二人纏めて鍛造してあげるわ!どこからでもかかって来なさい!」ズゴゴゴ・・・
今度は、あたしが((((;゜Д゜))))ガクガクブルブルする番だった。
パストラと二人してボロ雑巾の様になるまで闘仙に可愛がられた後、改めてオイラーと今後の相談をした。
旅団のメンバーはキマリ(青〇導士じゃないよ)だけど、結成するにはベースシップが必要だ。
あと、自衛や探査の為のMDFも要る。ケド、ここで一つ、割と致命的な致命傷の問題があった・・・。それはあたしが、どっちの操縦もニガテって事だ。
宇宙船はメーカーが作ってくれるからいいとして、問題は担い手だ。
整備とかはボットが居るから良いケド、操縦はどーしても人間がやる必要がある。
宇宙じゃ何が起こるか分からない。ぜーんぶ自動操縦って訳にはいかないからね。
このオイラーは腕っぷしこそ皆無で貧弱なもやしだけど、車とかの乗り物を運転するのは結構うまい。
という事で、宇宙船を建造してる間に、コイツとパストラを冥王星にある「宇宙活動技能教習所」に放り込んで、操船、操縦テクニックを身に着けさせる事にした。
強引にでもやらせるつもりだったケド、意外にもこのオイラーが乗り気だったので、ならばと一番期間が長くて高等な教練がパックになった「アルティメットエクストラコース」を申し込んでやった。我ながらなんて優しい姉なんだろう。
なんでもこのコース、スペースガーディアンの教官が出張って教えてくれるらしい。
ガーディアンは航宙軍並みに訓練がキビしい事で有名だ。この事は黙っておこう。
流石に可哀想だったから、せめて宇宙船はコイツの好きなように選ばせてやった。
オイラーはパストラと二人で、新婚さんが新居を選ぶ時みたくキャッキャウフフイチャコラァと楽しそうにカタログを矯めつ眇めつしてた。
まぁ、地獄から逃れた先はまた煉獄だ。せいぜい楽しむといいよ、フフフ・・・。
とはいえ、オイラーの抜けた穴を埋める為に、あたしもお店のお手伝いしなきゃならぬので、地獄っていう意味では同じなんだケドね、フゥ・・・。
で、むきになってウェイトレス時々闘仙に可愛がられしてたら、アッと言う間に二か月半が経過した。
宇宙船を建造したメーカー、榛名重工のディーラーから納品のメッセージが届いたので、引き渡しに潮見=スペースポートへチャリで出向いた。
タイミング良く、オイラーも教練を終えてモドリ玉するそうだから、ここで合流出来るだろう。梔子が、気を利かせてメッセージを送ってくれた。
そうしてずらりと宇宙船が並ぶポートエリアへ行くと、一番端っこの方でシブい艶消しグレー(軍艦色っていうのかな)で塗装された、大昔の戦艦っぽい見た目のシップが目に入って来た。ロートル過ぎる見た目のせいで、嫌でも目立つ。
ご丁寧にバルバスバウまで憑いて、喫水下が艦底色で塗装されている。
どっからどう見ても水上艦だねコレは。オイラー、浪漫で船を選びやがった。
このシップは「ブレイザー級」という、地表探査用の宇宙船だ。ちなみに、何某級とかの級は、車で言う所の車種みたいなもんで、大体の規格があるんだ。
宇宙船なんていちいちオーダーメイドで建造なんてしてられないから。当然だね。
宇宙船なのに何で水上艦みたいな見た目なのかというと、地表に降り立つ際、水上に着水して偽装する為だ。
フツー船は空を飛ばないし。ファンタジーやメルヒェンじゃあるまいし。
テクノロジーレベルの低い惑星に降下する時は、こうやって誤魔化す必要もある。
これなら、場合によってはフツーに港へ入港する事も可能だ。まぁ、騒ぎにはなるだろうけど。そして、大体のスペックはこうなってる。
基本モデル:ブレイザー級地表探査拠点船クラスベースシップ
全長:264メートル
全幅:40メートル
主機:PGHUジェネレーター(プラズマ・グラビティ・ハイブリットユニットの略)
副機:重力ジェネレーター 二基
プラズマジェネレーター 二基(機体後部サブスラスター)
総出力:35twh
武装:対空光学物理両用バルカンユニット ×10(両舷に5づつ)
プラズマブラスターキャノン ×2(三連装46㎝砲に偽装、内蔵隠蔽化)
グラビティプレッシャーキャノン ×1(艦首に内蔵、隠蔽化)
対空用ミサイルセル ×20
宙気間両用魚雷発信管 ×6(艦首横に3ずつ)
その他:農業用プラントユニット内蔵
万能工業工作装置内蔵
MDF(汎用可変戦闘機)×3 搭載
リニアカタパルト ×2
簡易医療ユニット内蔵
艦橋偽装可変機構
ほか、作業用ボットなど・・・
このサイズの艦としては重武装だ。これは地表での自衛を考えての事らしい。
その代わり、この船は居住スペースが切り詰められてて、デカいくせに定員は6人。
完全に地表に降りる事しか頭にない設計になってるね、コレ。
案内してもらって分かった。水上艦っぽい見た目だケド、中身はちゃんと宇宙船だ。
まさか浪漫にこだわるあまり、気密性皆無とか勘弁して欲しかったから、安心した。
一通りのやり取りを終えて、担当のセールスマンを見送っていると、目の前のスペースバス停に到着したスペースバスから、オイラーとパストラが降りてくるのが分かった。
でもなんか様子がオカシイ。二人してやたらとキレの良い動きで、ザッザッ!と、まるで軍事パレードの儀仗兵みたいな動きでコッチへやってきた。
そしてあたしの前までくると「部隊長に~敬礼!」とか言ってザッ!と敬礼した。
一体教習所で何があったっていうんだろう?まぁ、動きがウザいので、二人にデコピンしてやったら、ハッと気づいて元に戻った。壊れたヤツにはこの手に限る。
よかった、元に戻って。戻らなかったらどうしようかと思ってたところだ。
とりあえずオイラーに尋問してみると、ガーディアンから派遣された教官の女性が、何故かやたらと気合が入ってて、張り切り過ぎたんだそーだ。
その訓練した人って誰だよって聞いてみたら、イセンダという女性との事。あー、ならちかたないね。
確かイセンダ教官は、わが師がガーディアンだった頃の上司で、特別キビしい訓練を課すので有名な女傑だ。わが師には緩めに感じたそうだケド。
コイツがわが師の身内だってわかって、懐かしさの余り気合入ったんだろーね。
しかし、よりによってイセンダ教官を引き当てるとは。やっぱりコイツは、宇宙から「逃がさん・・・お前だけは・・・。」って思われてるね。
前世で変なロボットに乗って、謎のパワーで宇宙の星々を片っ端から真っ二つにしたり吹っ飛ばしたりしたんじゃないの?
まぁ、その代わり技量はお墨付きだろうし、いっか。何だか知らないケド、ヨシ!
とりま、船の艦橋まで上がって、めんどい手続きをサッサと済ませる事にした。
旅団名はもう決まってる。「ダンジョンマイスター」だ。探査専門だからね。
船の名前は、頑張った(?)ごほーびとしてオイラーに決めさせてやった。
そしたら、オイラーは迷う事なく「摂津」と名付けた。
コイツ、予め考えてたみたい。あたしが決めるって言ったらどうするつもりだったんだろう?
確かに、こーいう船の命名ルールには合致してるし、大阪府都エリアは摂津とも呼ばれてたから間違いではないんだろーケド。まぁ、いっか。ドキュメント、飛んでけ!
こうして、惑星迷宮探査専門旅団「ダンジョンマイスター」はしめやかに発足した。
モドリ玉してイキナリ宇宙ってのは流石にどーかと思ったので、飯休憩にする事にした。お昼時だったし丁度いい。
当然オイラーに調理させる。休憩?ちゃんとしてるじゃない、パストラとあたしが。だから大丈夫、問題ないよね。ヨシ!
オイラーは最初泣きながら喚いていたが、立派な調理ブースと、農業プラントエリアで作成した食材を見るなり、今度は歓喜のあまり喚いていた。うるせえ。
そんで調子に乗って、超豪華な「近畿エリア特産野菜のおしゃれフレンチ風コース」とかいうシャレオツな料理が次々出てきた。肩凝るからやめれ。旨かったケド。
あたしとパストラは喰らい終わって満足したので、艦橋に戻って、コイツの教練の成果を見てやる事にした。
そして、いざ操縦せんと、コイツが操縦席に座った途端、「そういやおれ、飯喰ってねぇじゃん!姉ちゃん黙ってたな!」とか言い出した。チッ、気づきよったか。
っていうか何で気づいてないんだろう。
しょうがないのでペロリーフレンズ(チーズ味)を投げてやったら、泣きながら「おれはメープル派だぁ・・・」とか言ってモソモソ喰らってた。
兎に角、腹ごしらえ(?)も済んだ事だし、早速処女航海と洒落込む事にした。
前もって「線引き」と「網元」には申請してるから、後は太陽系を抜けるだけだ。
「線引き」「網元」っていうのは、物流を管理運行してるソーシャルクラスAIの事だ。コイツらは結構キビしくて、前もって申請しないと怒り出すからめんどい。
水上艦みたいなこの船は、マスドライバーで加速したあと、ファンタジーやメルヒェンみたく空をグングン上り、第一宇宙速度(秒速7.9km)まで加速した後に地球の衛星軌道上(上空36000km)に到達した。
更にここから化学推進スラスターをふかし、第二宇宙速度(秒速11.2km)まで上げ、地球の重力を利用してスイングバイで加速すると、星系内微低速巡航速度(秒速430km)まで一気に速度を上げ、一路エッジワース・カイパーベルトを目指す。
一気に遠ざかる地球を背にして、摂津はグングン星の海を駆ける。出だしは順調だ。
暫くの間、パストラと天体観測を楽しんでいると、なにやらオイラーの様子がオカシイ。操縦桿を握りしめたまま、ブルブル小刻みに震えててキモい。
あまりのウザさに、おい大丈夫かと声をかけようとした時、摂津は丁度地球と火星の間に広がるアステロイドベルトに到達した。
艦橋からでも分かる位に無数に散らばる小惑星群。このまま突っ込んだら危険だ。
どうにかしろと指示を出そうとする前に、オイラーが急にガバッと顔を上げると、いきなり「ヒャッハー!!」と、世紀末暴徒があげるような奇声を上げ、一気に摂津を加速させよった!加速によるGで、身体がシートに押さえつけられる。
「ヒャッハー!!弾幕ッ!避けずにはいられないッ!我らこれより弾幕シューに入る!鬼に出会えばコレを避け、仏に出会えばコレを避けるッ!」
『・・・・はぁ!?ちょ、あんた何いって、ひゃあ!?』
「((((;゜Д゜))))ガクガクブルブル」
密集する小惑星の僅かな隙間を、針の穴に糸を通すかの如くスルスルと翔ける摂津。
ほう!見事なテクニックだ。短期間でここまで仕上げるとは、コイツの素質は中々のものであったらしい。さすがあたし、鋭い見立てだ。って違う!
わざわざこんな所で披露するようなもんじゃない。はっきし言って労力の無駄だね。やめさせないと・・・・。
『・・・・ちょっと、餅つきなさい。あたしに震える程成果を見てもらいたい気持ちはわかるケド。わざわざ危険が危ない事する必要は・・・。』
「ヒャッハー!!まだまだこんなもんじゃないぜ姉貴ぃ!逝くぜ!ピリオドの向こうっ側へ!船を操って!ケヒヒー!!」
「(`;ω:´)」ブルブル
あたしの静止を聞くどころか、生意気にも更に加速するオイラー。
流石にこのまま捨て置く訳にはいかないので、無理矢理止める事にした。
あたしはフルパワーで殺気を込めた気当たりをオイラーにぶつける。
『・・・・やめろ。』
「・・・・はい。」((((;゜Д゜))))ガクガクブルブル
ようやっと大人しくなるオイラー。イセンダ教官、貴女一体、コイツにどんな教練したんですか・・・?
オイラーは暫くの間大人しくしてたケド、エッジワース・カイパーベルトに到達した時にまたヒャハりそうになったので、「ヒャ・・・」と声を上げた瞬間にフルパワーの気当たりをオイラーの後頭部にブツけて黙らせた。
やがて摂津はオールトの雲を抜け、やっとこさ太陽系外縁部を脱したので、重力推進に切り替え、わが師らの待つ宙域へと舳先を向けた。
そして船体が虹色の光に包まれて艦体の質量が限りなくゼロになると共に、一定以上まで蓄積した重力波のエネルギーを放出すると、「ドォン!」という轟音と共に、引き絞った矢が放たれるが如く、摂津は勢いよく加速した。
と同時に艦橋から見える景色が一気に前方に集中し、背後の景色すらぐにゃりとまとまったかと思った瞬間、サイケデリックな光と共に消え去り、何も見えなくなった。
これで摂津は光の速度を超えた世界に入った。後は重力波に乗ってれば勝手に目的地まで到達できる。
あたしはやっと一息ついて、大きく伸びをした。
次の日。摂津はランデブーポイントである、スキーア銀河群はウィズ銀河を一望出来る宙域に到達した。
この銀河群は、地球から見て赤経八時の方向へ300万光年程離れた場所にある。
これは、絶対人類文明圏(完全に調査、開拓が完了して安全が確保された宙域の事)の丁度境目にあたる。
つまりは、人間のナーバリアは、せいぜいアンドロメダ銀河位まで、という事だ。
しかもここまできて、まだおとめ座超銀河団から出てないっていうんだから、宇宙どんだけ広いんだよって話だよね。
んで、今目の前にあるのはウィズ銀河っていう、綺麗な渦巻銀河。直径は10万光年位あるらしい。我らが天の川銀河と大体同じ位だね。
これがすごく変わってて、5つある銀河の渦、その「腕」の先っちょにそれぞれちっこい(っていってもそれぞれ2,3万光年はあるケド)星雲が引っ付いてて、卓上のおもちゃ「ハンドスピナー」みたいな形をしてる。
わが師曰く、こういう複雑な形状の銀河や星雲は、重力場がジョーンズ博士の頭髪位にグチャグチャになってて、気圧差ならぬ重圧差が生まれる事で、傍迷惑なエネルギー、「魔素波」というものが発生するらしい。
試しに艦橋のモニターにフィルターをかけて重力波を測定してみると、確かに重力波が、そう、御菓子のミルフィーユみたいに折り重なってて、その間に魔素波が溜まってる。うん、大分マズいねこりゃ。早いとこなんとかしないと・・・・・。
ん?何で迷惑なのかって?それはこのエネルギーが滅茶苦茶質の悪い性質を持ってるからだよ。
魔素波っていうのは、この折り重なった重力波同士を摺合せた時に発生する余剰エネルギーで、クッソスカスカな密度のかるーいガスみたいなもん。
しかも無限にある重力波と違って、使えば化石燃料みたいにすぐなくなるという燃費の悪さ。
一度枯渇すると、完全に元の密度に戻るまで必要な時間は200億年とか・・・。
戻る前に銀河なくなってるじゃん。はーつっかえ。なエネルギーだ。
しかしこんな「宇宙の屁」みたいなエネルギーにも利点はある。名前から察する事が出来ると思うケド、そう、所謂魔法を使うのに利用されるらしい。
でも、そのままだと生物には使えないんだ。一度魔素波を、魔素共振晶っていう鉱石を含む惑星が吸収し、その鉱石が生み出すエネルギー・魔力を、これまたマナコンドリアっていう器官を細胞に持ってる生物が吸収、蓄積してやっと使えるようになる。
大昔のトイレの水タンクかよって思う位回りくどい。現にこの魔力を利用した文明は全て例外なく滅び去っている。まぁ、納得だね。
で、肝心の魔法なんだケド、この蓄積された魔力と、その生物の想念波を混ぜると、物理的な現象を引き起こす事が出来るようになる。
まぁ、せいぜい手から火や氷、電気が出てくる程度だけどね。クラッシック・ノベルでもよくあるじゃん、「魔法はイメージ力だ!」って。そりゃそうだよ、元をただせば想念波なんだもん。
そんで、一度に蓄積される魔力は限りがあるから、連発も出来ない。中二病的にカッコつける以外に、意味あるのかなこれ?
こんなショボいエネルギーだから、ガンガン使ってればほんとにすぐ枯渇する。
そりゃ、剣と魔法のファンタジーみたく、産業革命前の中世ヨーロッパみたいなテクノロジーレベルの文明なら、魔法使えるヤツが貴族で、それ以外が平民ウェーイ♪ていう感じにワチャワチャする程度だろうし特に問題ない。
でもそれ以上、機械とか社会インフラなんかに使い始めると、石油なんかの化石燃料を使うよりずっと早くに限界がくる。
トーゼン、人はアホじゃないから、どーにかして補充を試みるだろう。
結論から言うと、その試みの行きつく先がダンジョン。
生物をガンガン飲み込んで魔力を生み出す装置なんだよ、コレ。
魔力は、生物濃縮が起こる。生物に分解出来ない劇物が食物連鎖を重ねる毎にどんどん濃くなっていく様に、魔力もまた濃くなっていく。
もうここまで言えば誰だって分かるよね。
「アカン、魔力どんどん減りよる・・・ここままやと枯渇して魔法つかえんくなってまうンゴ・・・・。」
「せや!魔物と冒険者のアホを喰い合わせて魔力搾り取ったろ!」
って考える、貴族(笑)みたいなヤツって、絶対居るだろうからね。
そんな事しなくても、魔素共振晶ペンダントにしてずっともってりゃ大分マシになるってのにさ。アホか。
まぁ、その魔素共振晶を洞窟なんかに埋め込んどいて釣り餌にして、魔物をおびき寄せるのがダンジョンコアね。まぁ、ろくでもないとはいえ良く考えたものだ。
中には魔素共振晶の仕組みをちょっとは理解してるヤツが居て、生み出される魔力を使って迷宮を形成する上等なコアがあったりもする。
そんで、そんなおバカさん達の文明が滅んでもなお、遺物としてコアだけが残って、人々にひどい迷惑をかけ続けるって訳ね・・・要は尻ぬぐいなんだよね。
正直、地球人類にとっては魔力なんてどーでもいいカスみたいなエネルギーだけど、ほっとく訳にはいかない。
何故なら、このエネルギー、スカスカな分すごくぷくーっと膨れ上がって、重力と重力の間にするりと入り込んだ挙句どんどん溜まっていって、風船みたいな空間、「空間断層」っていうのを形成する性質があるんだ。
これを利用すると、完全に空間を遮断する事が出来るんだ。惑星位なら、すっぽり覆い尽くせる位。
現地の人が勝手に使って枯渇さす分には放置でいい。
けど、万が一、スペースローグのおバカさん達の手に渡るのは非常にマズい。
意図的に、まだ発見されてないローテクな文明の惑星にコアを投下されて、誰にも見つからない「ぼくたちのひみつきち」の出来上がっちゃう。
え?だったらぬっ壊せばいいだろ!って?確かにその方が手っ取り早いけど、その場合惑星ごと吹っ飛ばす事になるよ?だって惑星そのものが魔素共振晶なんだから。
だからメンドイけど、コアを回収して恒星にアディオス!するのが一番いいんだよ。
魔素共振晶をデカい結晶にする技術は、超古代文明の滅亡と一緒にロストテクノロジーになってるからね。現存するヤツが無くなればオールオッケー。
お上がいちいちこんなことツマツマやる訳ないから、あたしたちライダーに仕事が回ってくる、という事なんだ。
「姉ちゃんさっきからどこ向いて喋ってんの?」
『・・・そんな事してない。メタいからやめれ。』
「( ^ω^)・・・?」キョトン
そうこうしてる内に、摂津はわが師と、共に活動する「熱き冒険者」と合流した。
再会のアイサツもそこそこに、通信でブリーフィングを行う。
旅団結成までの経緯は、梔子がドキュメントで送ってくれたから説明の必要は無い。相変わらずいい仕事をしよる。一言も喋らんけど。
わが師から、今回のターゲットとミッションの説明を受ける。
「今回のターゲットは、「熱き冒険者」の探査活動中に偶然発見したものだ。ウィズ銀河の画像右下部分にある星雲・・・ローカス星雲と名付けたが、この星雲の外縁寄りにあるザドラ星系の第四惑星・ミスエにて、ダンジョンコアと思しき高密度の魔力が観測された。このレベルになると、空間断層を容易に生み出せる力がある結晶だと推測される。お上に報告したところ、即時回収、破棄のミッションという形で返答がきた。我々の目的はこのダンジョンを踏破し、コアの存在を確認、発見次第回収する事だ。これには早速、新たなる仲間である「ダンジョンマイスター」にあたってもらう。以上、何か質問は?」
ん?と思ったあたしはわが師に尋ねる。
『・・・あたし達だけなの?哲おじ達は・・・・?』
「すまんな、私達は、センセイの護衛をせねばならん。ミスエの衛星、ニーペの裏側に大規模な古代文明の遺構が見つかってな。本命はそこの調査なんだ。」
『・・・なるほど、だから偶然なんだね・・・・。』
「そういう事だ。間違っても人の居る地表にセンセイを放流してしまう訳にはいかんからな。同じ解き放つなら思う存分、調査してもらった方が被害は少ないしな。おっと、忘れる所だった。これが惑星の観測データな。後で確認しておいてくれ。」
わが師がそういうと、摂津のメインフレームにミスエのデータが入力された。降りる前に確認しておこう。変なバイキンとかあったらいやだし。
そんな要らぬ心配をするあたしに、わが師の嘆きを聞いたオイラーが疑問を投げかける。
「姉ちゃん、博士ってそんな滅茶苦茶なんか?確かに、ウザい位元気な人だけど?」
『・・・焼く前のスペシャルミックスモダンよりグチャグチャだね・・・・。』
「えぇえ・・・・?」ドンビキ
「この遺構は状態も良く、規模も大きいから・・・そうだな。センセイが遺物を喰い荒らすまで大体一か月位ってところだろうな。それまでに迷宮を踏破してくれ。」
「見たとこ衛星の丸々半分遺跡なのに、一か月なんか?一年じゃなくて?」
「ああ、残念ながらな・・・。遺物を前にしたら、センセイはスペースマグロみたく動きを止められなくなるからな・・・。24時間交代で見張ってなきゃならん。」
「うっへぇ・・・・そりゃあ・・・おじさんがフラフラになる訳だぁ。」
「まぁ地表なら十分通信でやり取りできるから、何かあったら遠慮なく呼ぶといい。出来る限りサポートしよう。・・・いきなりでスマンが、気をつけてな。」
『・・・・うん、有難うわが師。それじゃ。終了。』
「おじさんも頑張ってなー!」
「(`・ω・´)ゞ」ビシッ
通信が終わるや否や、「熱き冒険者」の母艦・・といっても近畿エリア大学のヤツを殆ど強奪したヤツだけど・・・「宙風」がニーペに向かって降下を開始。
ややあって、慌てた感じでわが師のシップから三機のMDFが発進した。
多分わが師とミラ吉、理仁亜お姉ちゃんだろう。お疲れ様です。
オイラー、パストラと共に合掌して三人を御見送りしたあと、あたし達の摂津は、ニーペの軌道を抜け、ミスエの静止衛星軌道へと向かった。
摂津を静止衛星軌道上につけたあと、あたしは改めて観測データをみた。
大気組成:窒素78%、酸素20%、二酸化炭素0.04%、その他0.02%
気圧:1,005hPa
重力:0.97G
平均気温:24℃
テクノロジーレベル:およそ鉄器文明
有害物質及び未知のウィルスは検出されず
典型的な地球型惑星だね。大気の組成も地球とほぼ同じ。宇宙大航海時代に見つかってたら、どったんばったん大騒ぎしたんだろうなぁ。
綺麗な青い星だ。パッと見、大体6割位が海だね。地球よりやや陸地が多い?
探査ドローンの動画やスクショを見る限り、中世ヨーロッパみたいな感じの文明レベルのようだ。これだと、摂津で地表に降りるのは難しいかな・・・・。
その事をオイラーに言うと、当然嫌がりよった。普通に混乱するだけだから無理だっつの。今回はアキラメロン。引っぱたいて黙らせた。
尚もむずがるオイラーはほっといて、もう少しリサーチしよう。パストラのおっぱいに顔を埋めて慰めて貰ってやがるから、暫くは大人しいだろうし。
商店でやり取りする人の手元をズームで見てみると、旧貨幣の十円玉みたいな銅貨と、百円玉みたいな銀貨が中心だった。
見た感じ、ニンジンっぽい野菜が銅貨三枚位、お肉が銅貨五十~七十枚、食事処で銀貨一枚あれば十分って所かな。
他にも、ドレスみたいなのが並んでる高級そうな服屋で、摩擦熱で火が起こせんじゃね?って位高速で揉み手してる商人のオサーンが、セバスチャンとか呼ばれてそーなイケオジからズシッとした革袋を受け取ってる動画をチェックする。
灼熱になったであろう手でオサーンが革袋に手ェ突っ込むと、キラキラした綺麗な金貨が五枚出て来た。
会話を拾ってみると、お金の単位はG・Pというようだ。
物の値打ちから勘案するに、価値的には銅貨が1として、銀貨が100、金貨が10000か。そして1G・Pが大体10円位だね。ヨシ!覚えた!
文字に関しては、「熱き冒険者」の古代語解析担当、翻身約呼のお姉ちゃんが前もって解析してくれてたのを予め梔子がインストールしてくれてる。
これでテキトーに書いてもこの世界の文字で書くことができるんだ。
喋るほうは、想念翻訳が元々聞いてるから大丈夫、問題ない。
後は・・・こんな装備じゃダメだね、一番いいヤツに変えよう。あたしは、未だパストラのおっぱいに顔を埋め、バブみ全開のオイラーと、この如何しようもないオギャリストを慈愛の表情で慰めるパストラを連れて、工作プラントエリアに向かった。
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万能工作機を前にして、オイラーがあたしに問いかける。
「姉ちゃん、まだ降りんの?おれちょっとワクワクしてきたんですけど?ファンタジーですよ、ファンタジー!早いとこ降りよーぜ!」ソワソワ
『・・・このいかにも「宇宙から来ました!」っていう恰好で降りたら騒ぎになる。そんな装備で大丈夫なの?』
あたし達が今着てるのはツルッとしたツナギみたいな船内スーツだ。一応トップとボトムで別れてるから、便所に行く時も不自由はしない。
けど、この妙に体に密着して体型が丸わかりするエロい恰好だと、いろんな意味で目立ってしょうがないだろう。あたしとしても恥ずいし。
「うは!確かにそうだ。姉ちゃん、一番良いヤツを頼む。」
『・・・こんなこともあろーかと、予め同業の人が配ってるデータを用意しといた・・・・。』
あたしが個々人の体型とかの身体データが入力されたオブジェクトデータを送信すると、万能工作機に灯が入り、「ミー!ウィーン!ジィジジジ・・・ヴィ~~ン・・・ポコシャカポコシャカ!」と、何やってるのかさっぱり分からん音と共に、3つの段ボールがプッ!と排出された。
その箱にはラベルが貼られていて、それぞれ
「メインちゃん」「パストラさん」「アホ」
と書かれていて、不覚にも(*゜ω゜):;*.ブッってなった。この工作機、中々わかってるね。感心感心。
そのラベルを見て喚くオイラーはほっといて、あたしは早速パストラと共に自室で着替えてみた。
ややあって艦橋に集合した。
あたしは胸当てに手甲、脛あて付きブーツに、所謂ロングソードを佩いた剣士風。
パストラは鎖帷子に忍び装束、短刀を二本クロスして腰の後ろに差してる感じのかなりエロいニンジャ風の恰好だった。帷子の下殆ど裸じゃない。エロ杉内。
エロさに驚いてたせいで、ぶつぶつ文句を言いながら入って来たオイラーを身構える前にうっかり見てしまい、更に不覚にも(*゜ω゜):;*.ブッってなった。
事もあろうに、オイラーはド派手な縞々模様が入った旅芸人風の恰好で、同じ模様の入った、魔法使いが被るようなデカい帽子を被り、更に変な形のエレキギターっぽいのを背負って、ついでに何故かハープを腕に抱えていた。
いやほんと、あの工作機分かってるわ。ウププwwwww
ギターあるならハープ要らないじゃん。なんで持たしたんですか?wwww
「姉ちゃんなんだよこれ!おれ一体何なんですか!?おれも姉ちゃんみたいな剣士っぽいカッコいいヤツのが良いよ!」ドッタンバッタン
『wwwwチッ、うるせーなwwwあのデータは個々人の資質にあわせて自動的にデザインされるから、何度やっても同じだよ。』
「うえぇ!?そ、そんなあ・・・・これじゃ船内服の方がまだましじゃん・・・」
『・・・・アンタはもやしだから、支援ジョブやってろって事なんじゃね?多分。・・・・知らないケド。まぁ、これで「旅芸人と、その護衛」っていう設定は出来たからいいでしょ。』
「うぐぐ・・・結局おれ芸人なんじゃんか・・・おれの冒険者デビューはいきなりボドボドだぁ・・・あうう・・。」orz
「オロオロo(;д;o≡o;д;)oオロオロ」
いい加減オイラーの相手をするのも邪魔くさくなったあたしは、未だ泣きじゃくるコイツの襟首をムンズと掴んで格納庫まで引きずって行き、MDFのコックピットに放り込み、そのまま遠隔操作で発進させてやった。
そしてあたしも自分のMDFに乗り込み、カタパルトから発進し、目的地である都市部の郊外に広がる森林地帯へと降下を開始した。
そう、あたしも早く冒険がしたかったからね。オイラーじゃないけど、ワクワクしてる。
そんな思いがあったんだろうか。普段は恐怖を感じる、大気圏突入時の摩擦熱で真っ赤に染まる全天モニターも、不思議と綺麗に感じてしまった。




