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【第一部完結】魔女として断罪された悪役令嬢は婚約破棄されたので魔王の妃として溺愛されることを目指します  作者: 中臣悠月
第四章 魔王の国を改革するための第一歩! 採用試験で自由に職業選択できる世界を目指します

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14 大変です! 怪我人です!

「お願いです! 助けてくださいませ!」


 声は、官吏の試験会場の辺りから聞こえて来る。

 先ほどの言い争いとは異なり、上ずったその声からは大きな焦りも感じられた。


「人が……人が、突然倒れたのです! どなたか、お助けくださいませ!」


「行ってみよう。誰か、私の侍医を手配しておけ」

「はっ」


 ヴィネ様が率先して、声の方へと向かって走って行く。

 小姓の一人が、侍医を連れて来るために、天守へと急ぎ走った。


「メイヴ、あなたももしよかったら、何かハーブを持って来てくれないかしら?」

「かしこまりました」


 私の頼みにメイヴは頷くと、先ほどの小姓の後を追うように、天守の方へと走って行く。

 私たちは、ケリーやゴヴァンに会釈してから、声のする方へと小走りで近付いて行った。


 * * *


 官吏の試験会場に辿り着くと、一人の男性がうずくまっていた。

 中年の男性で、苦しそうなあえぎ声を上げている。

 その横に寄り添うように跪いているのが、先ほど助けの声を上げた男性だろうか。

 私は、助けを呼んだ男性の顔を見て驚いた。

 この世界では、初めて見る東洋人だったからだ。

 しかし、そのことについて誰何(すいか)するのは、後だ。

 まずは、この病人を急いで助けなければならない。


「いったい、どうしたのだ? 何があった? 先ほど、救助の声を上げたのはそなたか?」


 ヴィネ様は、東洋人の男性に向かって問いかける。


「はい。私です。ただ……わかりません。試験が始まるのを待っていたら、隣にいたこの方が突然、苦しそうに倒れられて」


 地面にうずくまった男性は、あえぎながら、途切れ途切れの声を上げた。


「も……申し訳ございません……。私は、……医師です。だから、……自分の身体のことも……よくわかっています」

「何だと? 病気なのか?」

「いえ……怪我……です」


 答える男の足元に、ポタポタと血が滴り落ちる。

 男はあちこちに綻びの見える裾が長いローブを羽織っていたが、その背中には、血が滲んでいた。


「止血が……十分ではなかったようですね。お見苦しいところをお見せして、……申し訳ありませぬ……」


「よいよい、苦しゅうない。それにしても、怪我をしているのに、そなたは採用試験を受けに来たというのか? 試験など、またの機会に受ければよかろう。まずは、怪我を治してから次の機会に試験を受けるがよい。今日が最後とは考えてはおらぬゆえ」


「はい、試験は……次の機会に受けさせていただきます。ただ、これだけは……早く陛下のお耳に入れたいと思い……城までやって来たのです。……今日なら、陛下にお会いできるかと思いまして……」

「私にか? 何だ? いったいどうしたというのだ? 申してみよ」

「……ありがとうございます……。どうか我々を……助けてください、陛下……」

「ああ、私にできるなら何でもしよう。どうしたというのだ?」


 ヴィネ様の寛大な言葉に、男は少しずつ身の上話を語り始めた。



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