14 大変です! 怪我人です!
「お願いです! 助けてくださいませ!」
声は、官吏の試験会場の辺りから聞こえて来る。
先ほどの言い争いとは異なり、上ずったその声からは大きな焦りも感じられた。
「人が……人が、突然倒れたのです! どなたか、お助けくださいませ!」
「行ってみよう。誰か、私の侍医を手配しておけ」
「はっ」
ヴィネ様が率先して、声の方へと向かって走って行く。
小姓の一人が、侍医を連れて来るために、天守へと急ぎ走った。
「メイヴ、あなたももしよかったら、何かハーブを持って来てくれないかしら?」
「かしこまりました」
私の頼みにメイヴは頷くと、先ほどの小姓の後を追うように、天守の方へと走って行く。
私たちは、ケリーやゴヴァンに会釈してから、声のする方へと小走りで近付いて行った。
* * *
官吏の試験会場に辿り着くと、一人の男性がうずくまっていた。
中年の男性で、苦しそうなあえぎ声を上げている。
その横に寄り添うように跪いているのが、先ほど助けの声を上げた男性だろうか。
私は、助けを呼んだ男性の顔を見て驚いた。
この世界では、初めて見る東洋人だったからだ。
しかし、そのことについて誰何するのは、後だ。
まずは、この病人を急いで助けなければならない。
「いったい、どうしたのだ? 何があった? 先ほど、救助の声を上げたのはそなたか?」
ヴィネ様は、東洋人の男性に向かって問いかける。
「はい。私です。ただ……わかりません。試験が始まるのを待っていたら、隣にいたこの方が突然、苦しそうに倒れられて」
地面にうずくまった男性は、あえぎながら、途切れ途切れの声を上げた。
「も……申し訳ございません……。私は、……医師です。だから、……自分の身体のことも……よくわかっています」
「何だと? 病気なのか?」
「いえ……怪我……です」
答える男の足元に、ポタポタと血が滴り落ちる。
男はあちこちに綻びの見える裾が長いローブを羽織っていたが、その背中には、血が滲んでいた。
「止血が……十分ではなかったようですね。お見苦しいところをお見せして、……申し訳ありませぬ……」
「よいよい、苦しゅうない。それにしても、怪我をしているのに、そなたは採用試験を受けに来たというのか? 試験など、またの機会に受ければよかろう。まずは、怪我を治してから次の機会に試験を受けるがよい。今日が最後とは考えてはおらぬゆえ」
「はい、試験は……次の機会に受けさせていただきます。ただ、これだけは……早く陛下のお耳に入れたいと思い……城までやって来たのです。……今日なら、陛下にお会いできるかと思いまして……」
「私にか? 何だ? いったいどうしたというのだ? 申してみよ」
「……ありがとうございます……。どうか我々を……助けてください、陛下……」
「ああ、私にできるなら何でもしよう。どうしたというのだ?」
ヴィネ様の寛大な言葉に、男は少しずつ身の上話を語り始めた。
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