16 令和の世界の科学をヴィネ様に伝えましょう 1
「しかし……本当に、そなたは我々が百年経っても思いつかぬようなことを、いとも簡単に提案するな」
ここまでに提案した改革をヴィネ様に褒めてもらえた私は「少しは認めてもらえたかもしれない」という安心や誇らしさと同時に、くすぐったさを感じる。
ようやく、内政改革については、提案という始めの一歩を踏み出せたものの、頭の中にある漠然としたイメージを、すべて実現していけるのかどうかという不安もあった。
「そなたのその頭脳さえあれば、先ほど申していた研究機関である“大学”がなくとも、国内の改革は今すぐ可能なのではないか? そなたのアイデアと魔術を組み合わせれば、実現できそうなものだがな」
この世界、特にアヴァロニア王国には魔術がある。
確かに、前世の日本にはなかった魔術と、前世で採用されていた仕組みを合わせれば、いろいろと便利な社会を作り出せそうではある。
しかし、魔術だけで十分かどうかはわからない。
たとえば、医学や薬学に関して言えば、この世界の回復魔法だけで十分代用が可能なのかが、正直なところわからないのだ。
聖カトミアル王国で高名と言われていた医師のレベルから考えると、この世界の医学のレベルはかなり低い。早急に研究を進め、進歩させておいた方が良いように思われる。
何しろ、このままシナリオが進むとアヴァロニア王国は侵略戦争の被害を受けてしまう恐れがあるのだ。
もちろん、全力で阻止するつもりではある。
しかし、考えたくはないけれど、最悪のパターンを想定しておくことも必要だ。
阻止することが失敗してしまった場合でも、一人でも多くの人命を救助できるように、準備を整えておきたい。そのために、医学をできるだけ進歩させておくことは決して無駄なことではないだろう。
国民にとって、利益となることであれば、できるだけ準備しておきたいのだ。
「私は、前世で暮らしていた世界の大まかな仕組みを伝えることはできます。しかし、その世界はあまりにも文化や文明が進み過ぎていたのです。先ほどのベルクに伝えたピーラーのような単純な道具や仕組みであれば、私にも説明することはできます。でも、正直、私だけの力で再現することが難しい機械や道具がたくさんあったのです……」
「たとえば、どんなものがあったというのだ?」
「空を飛ぶ鉄の塊……は、私の力では再現が難しいでしょうね」
私は、令和の日本の世界を思い出す。
電気、ガス、水道、インターネット、パソコン、スマートフォン、AI、テレビ、鉄道、飛行機、自動車──
どれだけうまく伝えられたかわからないが、私はできるだけわかりやすく、ヴィネ様とセパルに、令和の日本の世界に存在していた、便利な道具の数々について説明した。
二人は目を瞠り、驚きの表情を浮かべたまま、私の話に聞き入っていた。
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