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【第一部完結】魔女として断罪された悪役令嬢は婚約破棄されたので魔王の妃として溺愛されることを目指します  作者: 中臣悠月
第二章 魔王の待つアヴァロニア王国に向けて旅立ちます

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15 ヴィネ陛下、私の秘密を告白します

「信じてもらえないかもしれませんが、実は私には前世の記憶があるのです。今とは、まったく異なる世界です。今よりも、文明はずっと進んでいました。──私は、当時の記憶を活かして、この国の人たちを幸せにしたいのです」

「ほう……。なぜ、それをそなたの国、聖カトミアル王国で行おうとはせぬ?」

「聖カトミアル王国の政治は、民のことを考えたものではありませんでした。私はこの世界の枠組の外側から参りました。この世界では、唯一、ヴィネ陛下が、民のことを第一に考えて、政(まつりごと)を行っているように思われます」


 ヴィネの瞳が、一瞬、大きく見開かれる。


「しかし、このままでは……陛下も、この国も、非情なる聖女と騎士たちに──聖カトミアル王国に滅ぼされてしまいます。私は、それを何としても阻止したいのです」

「それは、先見(さきみ)か?」

「そう受け取っていただいても、かまいません。先ほども申し上げましたように、この世界の枠組の外側から参りましたので、私は、この国の未来を……ヴィネ陛下の物語の結末を、既に経験しているのでございます」


 なんとも無礼なことを言っているというのは、自分でも理解している。

 それでも。

 私の願いは、ただひとつ。

 愛するヴィネ様やこの世界の人たちに幸せになってもらいたい──。

 ただ、それだけなのだ。


「このような、世迷言(よまいごと)を信じられるのですか!? 陛下を誑(たぶら)かそうとする、嘘かもしれませぬぞ……前世だなどと戯言(ざれごと)を」


 黙って話を聞いていたセパルが、耐えきれなくなったように口を開いたが、ヴィネは再び手を上げてその言葉を制した。


「黙れ。さて、エレインと申したか。その前世とやらは幸せな国だったか?」


 私は、令和の日本を思い出す。

 確かに、ここよりもずっと便利な世の中ではあった。

 車や電車を使えば、ここよりずっと楽に移動できたし、美味しい食べ物もたくさんあった。

 買い物だって、24時間いつでも好きな時にできた。コンビニにネット通販。スマホさえあれば、いつでもどこでも友達と繋がることができたし、世界中の知らない人とも簡単に知り合うことができた。良いか悪いかは、別にして。

 スマホさえあれば、世界中の情報がリアルタイムでどんどんと飛び込んできた。フェイクかどうかは、別にして。

 ゲームに動画、マンガに小説、世の中には娯楽が溢れていた。


 しかし、幸せな国だったかと問われれば、即座に首肯することは難しい。

 文明は進んでいるが、富める者だけがより豊かになり、一部の者だけに富と権力が集中する国。

 政治家が当たり前のように、嘘をつき、国民ではなく自分のことばかり守ろうとする国。

 いくら頑張っても報われない世界。

 特に、女性に関して言えば、学歴があっても、手に職があっても、それに見合う地位や金銭を得ることが難しい国だったように思う。

 そして、度重なる自然災害に疫病。

 ここより、進んでいるのは文明だけで、「民が幸せに暮らしている」とは断言できない世界だと思った。


「いいえ……。だからこそ、ヴィネ陛下と共に、私の未来の記憶を使って、民のための理想の国家を作りたいのです。ヴィネ陛下と共に、皆で幸せになりたいと思ったのです」


「しかし、私の物語の結末は、既に決まっているのであろう? 聖カトミアル王国によって滅ぼされるという未来が――」


「……はい」


「それを覆せるというのか、そなたは」


「覆したいと思っています。決まっているとは言っても、それはたったひとつの可能性、たったひとつの世界線の結末に過ぎません。私たちが、今この瞬間に選ぶ、その選択肢によって、結末は無限に存在すると、――私はそう考えています。私が見た結末とは違う結末を、この国に、陛下のもとに、もたらしたいと……ただ、そう願っているのでございます」


「ふうむ。なるほど。いいだろう」


 ピロロ~ンという電子音と共に、ピンクのハートマークが目の前にひとつ浮かび上がる。

 私の回答は、ヴィネ陛下にとって満足のいくものだったようだ。

 好感度が上がったのだ。


「そなたがどれぐらいできる人物なのかはわからぬが、まずはチャンスぐらい与えてやってもよかろう。妃にするかどうか、それはその先の話だ。そなたの働きと国の行く末を見てから決めることだな。明日からは、この国の役人見習いとして、働いてみるがよい。行政に関して意見があれば何でも申してみよ。セパル、面倒を見てやるがよい」

「……あ、ありがたき仰せ、感謝いたします!」


 私は、ヴィネ陛下に深々と礼をした。

 セパルは、仕方なく、といった表情を浮かべつつも、


「かしこまりました」


 と、主君の仰せを承諾する。


「ただし、そなたを『使えない』と判断すれば、容赦なくたたき出すぞ。覚悟しておけ」

「はい、はいっ! ありがとうございます!」


 こんな与太話、信じてもらえなくても仕方がないと思っていた。

 しかし、ヴィネ様は予想以上に話がわかる君主だ。


 さて。

 魔王ヴィネ・ド・ロマリエルを恋愛対象として攻略する前に、まずは国づくりである。

 たたき出されぬよう、頑張らなければいけない。

 ヴィネ様と、私のハッピーエンドのためにも──


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