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【第一部完結】魔女として断罪された悪役令嬢は婚約破棄されたので魔王の妃として溺愛されることを目指します  作者: 中臣悠月
第二章 魔王の待つアヴァロニア王国に向けて旅立ちます

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7 一難去ってまた一難。今度は魔物ですって?

 訳もわからず、私は、言われるがまま、カーラが指さした家を目指し、再び無我夢中で走った。

 背後からは、無数の羽ばたきが聞こえてくる。

 カーラは、女性にしては低い、しかしよく通る声で、何かの呪文を唱えていた。

 唱え終わると同時に、両手を上に突き挙げる。

 上空に向け、彼女は無数の氷柱を放った。

 氷の矢に射貫かれた魔物たちは、「ギェェェ」と断末魔の声を上げながら、地面へと落下した。

 烏(からす)ほどの大きさの魔物は、下半身は鳥そのものの姿ながら、上半身には人間の女性の顔と翼を持っている。

 ──ハルピュイアだ。

 小型ながらも、鋭い牙と爪を持っている魔物だ。

 もし、カーラが魔法を繰り出して倒してくれなかったら……、あの爪が肌を切り裂いていたらと思うと、ぞっとする。


「魔物? いつの間に……」

「最近、この辺りでは人を襲う魔物が多数出現しているんだよ。こいつらは、まだ小さいからそれほどの驚異じゃない。でも、放っておくと、どんどん増えるし、人を次々と襲い始めるのさ」

「街道沿いなのに、どうして魔物が?」


 ふつうなら、魔物は洞窟や森の奥深くに潜んでいるものだ。

 少なくとも、『聖なる乙女と光の騎士のマリアージュ』のゲームの中では、そう設定されていたはずだ。

 聖女と騎士たちは、シナリオを進める中で魔物たちとの戦闘も行う。プレイヤーとして、この魔物、ハルピュイアと戦った記憶もあるが、確か遭遇したのは森の奥深くであり、こんな街中でのバトルは発生しなかったはずだ。

 洞窟や森の奥深くまで冒険を続けてようやくバトルが発生し、討伐したと記憶している。

 通常、魔物たちは、こんな人里近くまで降りては来ないからだ。


「確かに、こんな人里で頻繁に魔物が現れるのはおかしいことだよ。聖カトミアル王国の人たちは、魔女が目覚めたからだと噂している」


 ──魔女?

 まさか、私のことだろうか。

 あり得ない。

 私の存在が、シナリオや設定を変えてしまったということか?

 しかし、魔女として断罪されることは、どのシナリオでも既定のルートだったはずだ。

 シナリオにはない行動があるとしたら、私がアヴァロニア王国のヴィネ様を目指し、旅立ったということぐらいである。

 まさか、それがいけなかったとでも言うのだろうか。


「聖堂騎士団長の元婚約者様が、実は魔女だったそうだ。そのことが、聖女様のお手柄によって、判明したんだと言われている。あわや、魔女に乗っ取られ、滅ぼされそうになっていたこの国は、聖女様のお手柄によって救われた――、と、もっぱらの噂だよ。聖堂騎士団長は、魔女との婚約を破棄して、聖女様と婚約されるそうだ」


 旅を続けているうちに、私は随分な悪者に仕立て上げられてしまっているようだ。

 どうせ、ジャンやヴァレリー、その周辺に仕える者たちが、吹聴して回っているのだろう。

 怒りを抑えつつ、私はカーラに問いかけた。


「その魔女が、魔物たちをこんな町中まで呼び寄せているというのですか?」

「ああ、そう言われているよ。あと、アヴァロニア王国の魔王が、聖カトミアル王国を滅ぼすために、魔物を送り込んでいるんだと言う人たちもいるね。でも、あたしの血の半分は、アヴァロニア王国のものだから、それは違うってわかるよ。父さんから、ヴィネ陛下の話はよく聞かされたもんさ。ヴィネ陛下は、そんなことをするような御仁じゃないはずさ」


 私は、カーラの言葉に強く頷き返した。




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