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死骸

作者: 霜月叶手

私が幼い日に感じた生物に対しての恐怖に近い何か。

それを思い出しながら少しの脚色を混ぜ、実体験に即して書きました。

同じ様な経験があるなら共感してもらえると思います。

私は生き物が好きだ。


哺乳類、鳥類、爬虫類、両生類、魚類、節足動物、軟体動物、その他。


それぞれがそれぞれの方法で生まれ、食べて、生きて、死ぬ。


その生きて動く様を見るのが好きだ。


人間が人間とだけ生きていては決して知ることのできない知識を、生き方をそれらは知っている。


幼い頃には図鑑にかじりつく様に、まさに本の虫であった。


しかし、今ではその図鑑も本棚で埃をかぶっている。もう長い間手に取ってすらいない。


興味が無くなったわけでもなければ嫌いになったわけではない。単に好きなものや優先事項が増えただけなのだ。


それでもやはり、今でも生き物が好きなことには変わりない。ある一点を除いて。


それは生き物が死んだ後に残る死骸だ。


二度と自ら動くことはなく、生前さんざん振るった武器も毒も牙も爪も襲い来ることはないと知っていても、私は死骸にとてつもないほどの何かを感じずにはいられない。


おそらくその感情は恐怖に近い。


私はたまらなく死骸が怖いのだと思う。


中でも虫が格段に怖い。なぜなら吹けば飛ぶほど軽くなるからだ。


幼い頃、飼っていたカブトムシの死骸を見た。その時、私は確かにその死骸にえも言われぬ感情を抱いていた。


少なくとも、それが好感ではないことだけは確かだった。


片付けるために死骸を持つと、あまりの軽さに驚いて思わず投げ飛ばしてしまった。


あまりにもその死骸に、生前もっていたはずの何物を宿っていない様な気がした。そこに形だけを残して全て失ってしまっている様に感じた。


それがきっかけかどうかは知らないが、今でも生き物は好きだが昔に比べると生きていても触れなくなった。


私はあの日初めて抱いた感情を端的に言うと恐怖だとしたが、私はその真の名前を知らない。


敢えて明確に表現するのならば、得体の知れない何かを見たときの恐怖に近い何か。


私はもう二度と生き物を飼うことはないだろう。


あの日の記憶が頭を過って仕方がない。



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