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「一曲踊っていただけますか?」
隆也の言葉に、美里と利香はきゃあと歓声をあげた。
楽団が現れる。
「ミュージック、スタート」
隆也と利香が本格的に踊りだした。
「「お願いします!」」
一馬と良平が同時に薔薇の花一輪を差し出す。
美里は、
「ちょっと待った!!!」
と全てをストップさせた。
「どしたの?」
利香が聞くと、美里は何やら利香に耳打ちした。吹き出す利香。
「なんだなんだ?」
「美里ちゃんがね、『東京音頭』しか踊れないって」
踊り踊るなら、ちょいと東京音頭。ヨイヨイ。
一同爆笑した。
「あのね、私らだけで楽しんでももったいないから、この学校全体にこれをひろげよっか?」
「これを?」
「お祭りだ!」
「ちょっと違うがしょうがないな…」
「毒を喰らわば皿まで」
「そこまで言うか」
5人はこの状況を楽しんでいた。
学校中、上を下への大騒ぎになった。
夕暮れになっても誰も帰らず、校庭でキャンプファイヤーが焚かれた。
「…也。隆也!」
「あ!」
「上谷くんどうしたの?」
「未来の上司からお声がかかっちゃった。このくらいでお開き」
「ええー!!」
みんな一斉に我に返った。
「もう帰らなきゃ」
自転車置き場に人が集まり、やがてはけていった。
一番星が輝いている。
「上谷くん、怒られないの?」
「きっちり怒られるよ」
王国の鍵を締めなければ。それは利香に一任された。
「利香ちゃんのイマジネーションにはかなわないな」
美里はふむ、とうなづいた。
「これはおうこくのかぎ…」
利香はマザーグースを唱えながら金色の鍵でしっかりとロックした。
「あっ」
利香の手のひらの中で金色の鍵がさあっと砂のようにこぼれ落ちていった。
「みんなで夕飯食べに行こう」
隆也に誘われたが、校舎の3階につれてこられて、みんな首をかしげた。
防火扉を開いて、喫茶デル・ムンドに出た。
「これは、別口?」
「まあね」
5人はわいわいと食事にいそしんだ。