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「北区にデル・ムンドっていう喫茶店があってさ…」
上谷隆也が言った。
「そんなに良い店なのかい?」
梶尾良平が聞いた。
校舎の三階。西の端には他に滅多に人が来ない。
キンコンカンコン…
休み時間が終わるチャイムが鳴り出した。
「どこ行くんだよ!?」
隆也が防火扉を開けたので、良平は半分笑って、いたずらっ気を出して隆也の後から防火扉をくぐった。
カランカラン
頭上でベルが鳴る。
「なんだぁ?!」
良平は素っ頓狂な声を出した。
「ここ。デル・ムンド」
喫茶店だった。
「気が早すぎるよ!放課後にみんなで自転車漕いで来ればよかったんだ!」
「そうかい?じゃあしょうがないな」
隆也は扉を逆にくぐった。遅れじと良平も続く。
キンコンカンコン…
「午後の授業始まるぞ」
「良平は真面目なんだな?」
「んなわけあるか!ちょっと気が動転しただけでぃ!」
良平は内心ドキドキいうのをおさめるので必死だった。