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プロローグ


これはおうこくのかぎ

そのおうこくに としがあり

そのとしに まちがあり

そのまちに とおりがあり

そのとおりに こみちがくねり

そのこみちに にわがあり

そのにわに いえがあり

そのいえに へやがあり

そのへやに ベッドがあり

そのベッドに かごがあり

 かごのなかには あふれるはな

はなはかごに

かごはベッドに

ベッドはへやに

へやはいえに

いえはにわに

にわはこみちに

こみちはとおりに

とおりはまちに

まちはとしに

としはおうこくに

 これはそのおうこくのかぎ  

  「マザー・グース3」(講談社)より

           谷川俊太郎・訳


   

 プロローグ


その高校はまるで王国のようでした。

十六歳の緑美里は毎朝エンジ色のリボンのついたブレザー姿で自転車を漕いで通っていました。

その日。朝焼けの空に飛行船が飛んでいるのが見えました。

大気は優しさに満ちて、夜と朝の間に月が溶けていきました。

「みさっちゃん!おはよーす!」

幼なじみの梶尾良平が追い抜きざまに、軽く美里の胸を叩いて行きました。

「りょーへー!!!」

「ちんたらしてたら遅刻すっぞ」

「うっさい!」

せっかくの朝が台無しです。美里は良平を追いかけて自転車を走らせました。

しんとした朝の中を、二人はもっと大勢の自転車に合流して、学校はもう間近でした。

「あれは何だ?」

ざわめきが起こりました。

流星群が明るい中で空を駆け抜けます。一大イベントでした。

この前はね、空震が起きたのよ。

そうだったね。

上級生たちが口々に話しています。

「ここの高校はちょっと変わってるからな」

「どんな風に変わってるの?良平」

たとえば時間の進み方が不規則。たとえばお祭り好きな小鬼が騒ぎに紛れてる。

いくつあげても両手の指で数えたりません。

学校そのものが生きてるんです。

生徒たちは肌で感じてはいたけれど、まさかと思っていました。

「他の高校もこんなかなぁ?」

「違うかもしれんなぁ」

美里は自分の手を大気にかざしました。薄い青白い肌。みずみずしい輝く手のひら。

「もしかしたら、なにかの魔法がかかっているのかも」

「そうかもしれない」

朝課外に小テスト。ちゃんと学校です。

「結果どうだった?」

「聞かないでぇ」

クラスメートたちはざわざわ。そこへホームルームで先生の登場。

「えー、今朝、流星群が見られました。普通では夜空の高度の高いところをヒューっと流れて消えるものらしいですが、今朝のは朝日のなかでくっきりはっきり見えたそうです。隕石群かもしれんので、理科系の先生方が調査するそうです。誰か今朝の流星群を見た者?」

ばらばらっと手が上がりました。

「目撃者多数、っと」

出欠簿の備考欄にボールペンの文字が踊りました。


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