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辻堂家三代の罪、千代の恵

憐みのゆくえ2 タオ(輝き)の海

 タオ、そこは平和を好む魚たちの楽園。今では少しばかり有名なダイビングポイントがある。


 この話は、この辺りではまだ、人民軍や海のギャング達が非合法な活動をする姿もなかったころのこと。


 このころ、大平洋でもインド洋でも大陸でも、戦争の血の海が次から次へと生まれていた。その地獄から逃れるように、日本陸軍の百式戦略偵察機が、タオの海まで飛んできていた。そして、力の尽きた百式は、タオの海に不時着した。


「早く降りろ」

 徐々に機体は沈み始めていた。コックピットの中では泰造が少しばかり脳震盪を起こしていた。後部座席から飛び出してきた勇助は、泰造を引き出すと、彼を抱えたまま機体を棄てて蒼い海面へ飛び込んた。軽くなった機体は沈まなくなった。二人は暫く浮力のある翼に捕まって浮かんでいた。

 白みかけた陸の方から、朝の漁の時間なのだろうか、漁師達の小舟が近づいてきていた。


 二人がその機体に別れを告げると、百式は静かに海面の下へ潜っていった。

「あっ、俺の千人針!。」

 泰造は叫んでいたが、石板を中に納めていた布は機体とともに既に海の底だった。


 ………………………………………………


 時はたってもタオの海は平和なままだった。その有名なダイビングポイントからは程遠いその一角に、深い岩場があった。その陰に、あの百式の残骸が眠っている。もうすでに七十年も経っていた。

 そこへめがけてスキューバダイビングをする若い二人組の男女がいた。女と思しき方が、海底の岩陰を指して手招きしている。その後を追ってぎこちない泳ぎをしながら男が苦労して沈んでいく。


 海底の朽ち果てた機体の片隅に、小さな石板が沈んでいた。近づいてみると、そこには祐子、武史の名前が刻んであった。女はこれだこれだと騒ぐかのようなジェスチャーをして男に確認を求めた。


 石版を持った二人は海面に顔を出した。

「これで泰造さんも私達を信じるでしょうよ。」

 女はそういってボートの上に上がった。


 ………………………


 彼らがこの場所で潜ることになる一連の出来事の前、彼らは無人の教会堂に入り込んだはずだった。その教会堂があったところは、浦和の雑木林をさらに分け入った外れの地域だった。すっかり古びて蔦が観音開きのドアまで覆っているところを見ると、もう数年以上は使われていない。

 そこへ向かう一本道は、道で会ったことをうかがわせる古い轍と夏草に隠れた舗装道路が唯一の痕跡だった。周りの敷地には家が廃屋となっていたが、この頃は既に不便なこの辺りの地域はすむ人もいなくなっていた。


 その道の入り口の手前では、暑い日差しの中、夏服姿の若い娘に導かれて、雄二が歩いていた。ここへ来るちょっとまえには、淑香と雄二とがここへ来るべきかどうかを議論していた。

「あなたもためらいがあるのね?」

 淑香は雄二に決断を迫るように問いただした。淑香の制服は汗をかいているためか、透明感が増していた。いや、別の衣を着ていた。まるで羽衣のような………。

 しかし、雄二はまだ躊躇っていた。

「そんなことはないけど………。」

「貴方も戻っていいわ。」

「いや、君が求めるなら。」

「貴方は不純だわね。私が引き換えに貴方に何かをしてあげられる女に見えるのかしら?。」

「いや、単純だよ。君が求めるからだよ。」

「そうなの?。」

 淑香は雄二を正面でつかまえた。雄二は、この人は無防備なんだか、気にしないんだか、と考えながら、正面の淑香の黒髪がサラサラと流れるようにばらける姿に見惚ていた。

「でも、他に何を私に求めるのかしら。人間って、なんてもどかしいのかしら。人間はわざわざ回りくどい複雑な考え方をして、下手な方向へいこうとするのね。」

「時として下手な方向へ行くことはあるけど。その方法論は、様々な知識や考え方を先祖から積み重ねてきたから、その経験付き方法論から最低な道を選びたいと、常に考えていることの表れだぜ。」

「私も人間の世界に寄り添って働いてきたけど、ものごとは大抵単純よ。演繹的に言えば、全てのなすべきことは天帝からの愛から始まるの。人間は愛を注がれているのだから互いに愛を他へ注げば良いわ。」

「僕は愛を注がれているなんて感じないぞ。」

「なるほどね。人間には愛がどこから来るかを見ることができないから、そう言うのね。それならば、人間にとってわかりやすく言えば、やってもらいたいことをやってあげろ、ということになるわね。」

 雄二は黙っていた。

「貴方は、素直に行動しようとしていないわ。戒めとして、これからしばらく貴方は私から心が離れなくなるわ。」

「それは初めからそうなっているけど。」

「えっ?」

 淑香は言い直した。

「つまり、貴方の身も心も、よ。」

「僕には願ったり叶ったり、だなあ。」

 確かに先程から雄二の顔は惚けていた。淑香は、今まで経験したことのないほど阿呆に見えるこの少年の言葉に戸惑った。


 淑香は蔦をかき分けて扉を開け、雄二を中へ案内した。扉が閉まると蔦は再び絡み合い、扉はまた閉ざされてしまった。

 中に入ると左手にある鐘楼の窓から、光が差し込んでいる。淑香は螺旋階段を登り始めた。

  「手摺には触らないほうがいいわよ。」

 登っていくと、先程光が差し込んでいた光窓から、畑が見えた。この辺りにそんな風景はあっただろうが、其処彼処に菜の花が咲いていた。淑香はまだ階段を上っていく。まるで悪夢にさ迷い込んだように、階段はトンネルを抜け土手へ上がる道となった。ここで淑香を見失えば戻ってこられなくなる、そのように虫が知らせていた。その虫の知らせでは、これから行くところでは、罪を犯した辻堂泰造にその事実を深く心に刻ませ、その罪が当代に留まって三代、四代まで問われぬように処置することが、目的になっているようだった。しかし、そんな想いも忘れ、雄二は淑香に追いつくために懸命に上っていくことばかり考えていた。


 涼しくなった風とともに、霞の立ち込める土手を越えて抜けたところは、瓦屋根の木造の家並みが何処までも広がる街だった。雄二が住んでいる大宮駅の東側のようなごちゃごちゃしたところだが、それよりも道は入り組み、どこも袋小路、路地裏の街並みばかりだった。横書きの看板には確かに漢字や日本語のひらがなが使われていたが、違和感のあるものばかりだった。「屋炭やみす」「川深」「屋麦蕎」や「屋木栃」などとあったが、中国語の古い看板を見ているような感覚であった。そうしてしばらく街中を走った後に、淑香は雄二をある家の前でとどめて言った。

「ここに入ってみましょう。」

「ここって、何処?。」

「深川よ」

 雄二は今察した。ここは、数十年も昔の昭和十九年四月の下町だった。

「ここは、昔なの?。」

「そういうことになるわ。正確には過去の記憶。歴史の記憶。歴史の中、昔にあった記憶とでも言おうかしら。だから、記憶をいじる、いや、歴史をいじることになるの。」

「誰の?。」

「辻堂夫妻の夫の方よ。」

「えっ。とすると、辻堂詩音さんのお父さん?。」

「おじいさんね。それから、正確にいうと、辻堂詩音さんのお父さんはいないわ。」

「田山宏さんとか?。」

「彼は戸籍上の父だけど血が繋がっていないし、彼女が母親から虐待を受けた中学生の時に、身元引き受け人になった他人よ。」

「えっ?。だから、普通の父親より若いのかなあ?。」

「でも、今は関係ないわ。繰り返すけど、過去に介入するのだから、慎重に。これからやることは、辻堂泰造さんの過去の中でこだわりのあることを探し当てること、それから彼の罪を自覚させ、許しを宣することよ。うまくやってね。」

「こだわりのあることって何なの?。何も言われていないよ。」

「私は貴方に伝えたのに⁈。」

「いつ?。」

「ここへ来る途中で心に浮かんだはずよ。私についてこられなければ帰れなくなることも、これからしなければならないことも。」

「虫の知らせ?」

「そうともいうわね。」

「言葉で語ってくれないかなぁ?。」

「言葉では伝えられないから、初めから心象で伝えたのに…。」

「せめて、『言葉だけでは伝えきれないから』といってほしいね。言葉を使いきれないの?。」

「貴方、私のことをバカにしているの?。」

「いやいや、そ、そんなことはないです。可愛いですよ。」

 雄二の答えはフォローになってはいなかったが、別にバカにはしていなかった。雄二は目の前の不思議な女子高生が、あまり賢くないのだなと勝手に心の中で同情していた。淑香も雄二の心の中の言葉を知って、浅はかな思いを持つ男だと考えた。


 さて、路地裏の一軒の中を、二人は恐る恐る覗き込んだ。そこは「辻堂」という表札が掲げられ辻堂夫妻の家らしかったが、家の中には来客があるようだった。

「勇助。貴様も俺も落第生だったから、行くところがないといわれたな。でも、良かったよ。お前も再び将校になれて、もう来月にはプノンペンだな。」

「そうだな。そういえば、泰造、お前の泰造という名前は、隣国タイの国家を造りあげるという意味にちなんだのか。」

「今となってはそう言えるのかもしれないな。」

「俺たちは、三中まではそのあと同じ師範学校に行くはずだったよな。教育を志したのだが、まさか同じ船で前線に行かされるとはな。」

「うむ。」

「しかし、泰造、お前は戦闘機乗りからまた内地で再教育されたんだよな。これからは偵察機付きの通信、整備担当将校だろ?。」

「そうだ。前は修武台というところにいたんだよ。エンジン分解は得意なんだが、他の奴が整備したのは必ず故障だって言うからよ。もう乗れる戦闘機も無くなって、いまでは練習機も無くなったと言うから、俺の後輩達も大変な思いをしているらしい。俺は、というと、今から向こうへ行ったら、第五の司令部付き偵察機の通信と整備を担当するらしい。」

「それでも俺たちは士官学校だろ。その中で、やっぱり貴様は優秀だな。」

「いや、俺は五十七期の落第生だった。他の同期たちは先に散っていった。俺は置いてきぼりにされ、トイレ掃除さえもまともにできなかった。」

「俺もそうさ。」

「では、いくか。」

 そう語り交わしながら、三人が玄関の引き戸から出て来た。


 辻堂という若者の傍らには妊婦らしき若い妻が立っていた。しかし、それはどうみても辻堂夫妻の今の妻ではなく、別の若い女、祐子だった。

「泰造さん、千人針をお持ちになって。この石は、私とこの子の名前を書いて祈りを込めたものよ。この石板をこの中に縫いこんでおきますね。」

「勇助、貴様は千人針をどうした?。」

「俺はもうここに巻いてあるのさ。」

 勇助はおどけるように自分の腹と胸を指差している。それをみて、祐子は気を引き締めるように静かに言葉を引き取った。

「私はここでお待ちするのね。銃後の守りはお任せくださいね。」

 こうして彼らはそれぞれ行くもの、残るものがそれぞれの道を歩んでいた。淑香と雄二は彼らの旅立ちの風景を二階の物陰から覗きながら、顔を見合わせていた。

「泰造さんのこだわりのあるものがわかったわね。」


 ………………………………………………


 淑香と雄二は暗い地下道を歩いていた。

「僕たちは元のところへ戻ってきたのかな。蒸し暑いよねー。」

 雄二は再び蒸し暑い空気を感じて、不安と期待とが混じった言葉を、前を進む淑香へ投げかけた。しかし、聞こえないのか、淑香は別のことを独り言のように言っている。

「暑さというより、湿度のために表皮から水分が蒸散しないのね。水分がただダラダラ流れるだけ。」


 しばらくすると、強い雨音が聞こえてきた。雷雨なのだろうか。しかし、外は見えない。突き当たりには急な登り階段があり、先を行く淑香は階段の途中で止まってしまった。思わず淑香の臀部を押し上げると、淑香は悲鳴をあげた。

「貴方、何をしたの?。」

「ごめん、尻が頭の上にあったから、ちょっと手で押し上げてしまった。」

「そんなことではなくて、…その…打撃ではないけれど、衝撃を与えないで!。」

「そんなことはしていないよ。ただ黒髪が綺麗だから、そればかり考えていて、思わず君を助けようと思って………。」

「そんなことを考えて私に触れるから、このわけのわからない器官が過剰に応答するのよ。貴方が一緒でなければ、こんな水の袋のような身体組織を使って移動なんてしないのに。」

 そこで、雄二が先に立ち、板を外して上がると、蓋のように塞がっていた板は床板だった。それとともに外の雨音が共鳴している場所に出た。そこは大きな伽藍のようだった。

「ここはミャンマーのカテドラルよ。今はみんな帰らされて誰もいないはずよ。でも、もうすぐ勇助と若いミャンマーの娘が来るわ。………。」


 淑香にはこれからどうやら二人に告げることがあるらしかった。特に若いミャンマーの娘の心を奪った勇助には、自覚なく罪深い行動をたしなめ、責任を自覚させる必要があるという。雄二はこのカテドラルでの下僕として、二人を淑香の入り込んだ小部屋へ導く役を命じられた。

 雨がやんだ頃、淑香の言う通り、神妙な顔をした二人がやってきた。彼らは雄二を伺い見ながら自己紹介をしていた。

「コーユースケユースケ。」

「マールインルイン。」

 雄二は手招きをして暗いカテドラルの中を先に歩き、淑香の待つ小部屋へ導いた。彼はそのまま二人が受けていく告白の次第を黙って見守っていた。

 ふと気づくと、淑香が雄二を起こしていた。雄二は式の途中からカテドラルの古い椅子で居眠りをしていたようだ。

「さあ、次のところへ行くわよ。」


 ………………………



 サイゴンは、ヤンゴンやプノンペンに比較して過ごしやすい。未だ三月になったばかりで雨季になっておらず、やや暑さは緩むものの、やはりスコールは来ていた。辻堂泰造は、今夜も同じ夢を見た。


 辻堂泰造はこのところ、高級士官の移送業務を繰り返していた。今日も、サイゴンの航空基地から無言のまま下士官の居室へ帰ってきた辻堂泰造は、疲れてそのまま寝入っていた。彼が横になっている寝台の上には、スコールの大雨の音が響いている。

 その中でまた幻聴のような声が聞こえ始めていた。それらは十七歳ほどの若い男、つまり雄二の声だった。雄二は、栄養失調の捕虜らしくか細い声を出し、幻の中の捕虜の英国人将校が必死で頼み込む姿を演じていた。

「許してくれ。マニラに送致しないでくれ。ここで、一生懸命働くから。」

 しかし、幻の中で泰造は、短く一言だけ発していた。

「搭乗しろ。」

 泰造は唸るように返していた。

「許す?。なんだそれは?。」

 英国人将校は訴えた。

「このままマニラに行けば、船で送られることになる。それでは私の命がない、と分かっているんだ。」

「…」

「お願いだ、頼む。」

「…」

「私は…見殺しにされる。」

 ようやく泰造は口を聞いた。

「ならば死ね、私はそんなことに関知しない。」

 幻聴の中の泰造はそう切り捨てていた。泰造は自分のその言葉に驚いて目覚めた。いつもと同じだった。


 泰造は寝台から起き上がり、水を飲むためにヤカンのある食堂へ、豆電球のついた細い廊下を歩いて行った。窓の外はまだ雨が降っている。


 泰造は窓際の椅子で座り込んでいた。泰造は黙り込み、いままで目の前で繰り広げられていた悪夢を考えていた。今夜も、昨夜も、その前も…。このまま寝ればままた始まってしまう。泰造は、この半年ほど、もう何回もその悪夢を見ている。


 しかし、今日は様子が違った。しばらく経つと、雨音に紛れて、夢とは別の若い男の声が聞こえて来た。この部屋には誰もいないはずなのに………。

「彼は昨年の九月十日に能登丸で亡くなったぞ。」

 泰造は思わず反論した。

「俺にそんなことがわかるか。俺はただ彼らをマニラに送っただけだ。」

 窓の外から若い女、淑香が入ってきた。彼女は白い羽衣のような布を翻して泰造の近くへ降り立った。

「そうかしら。ならばあの時、何故送致を遅らせなかったの?。彼はシリアの残された民だった。そう、あなたに任せられた仕事なら、時を分かち合い、遅らせることもできたわ。そもそも、あなた方は愛すなわち慈悲を知らないのかしら。愛を注がれていないのかしら。いや、私を遣わした方はあなた方に確かに愛を注ぎ、赦しを与え、復活の命までも約束しています。すでに慈愛の秩序はあなた方のところに来ていたはずよ。それなのに、これは何事でしょうか。愛を、福音を分かち合う神を知らない人間たちは、今のように野獣よりも恐ろしい者になるのです。それでは貴方は数えられていないその他の人間に成り下がってしまいます。むしろ、あなた方は神を知っているもののはずではないですか。」


 泰造はかろうじて聞いた話を理解した。

「今日本は戦争をしているのだぞ。俺だけがやっているわけではないのに、俺だけが責められるのか。」

「いいえ、救われるはずの貴方だから、問われているのです。この戦争で、帝国民は全て罪を犯しました。このことにより、貴方達を含む帝国民一人一人の罪が子孫に三代四代まで問われることになります。それは、今後も帝国民を奴隷に陥らせる罠となり呪いとなるでしょう。」

 泰造は及び腰になってつまづき、食卓をひっくり返した。

「俺は……。何もしていない。ただ、移送していただけだ。」

「何故に?。誰の名によって?。何のために?。」

「そんなことは知らない。」

「そう、そう言って帝国民は、いや貴方や知識あるリテラシーの高い者たちは、皆見ていながら悟ろうはしませんでした。それ故に、今までもこれからも帝国民を奴隷に陥らせる罠となり呪いとなるのです。」

「でも、なぜ俺のところへ?。」

「あなた方だけは恵みを得ているのです。それゆえ、あなた方は将来の二代目はともかく、三代四代まで罪を問われることはないことになります。しかし、貴方は初めには拒んだから、貴方の孫の代にあなたは無力感を覚えるでしょう。しかし、それであっても、必ず速やかな助け手が用意されています。それは、山形の子供の仲間たちになるでしょう。そのようにして貴方がたの子孫は、試練を乗り越えて希望をもたらします。」

「山形か?。そういえば身重のルインはサイゴンの海軍病院に移送された。でも、勇助はヤンゴンに戻されることになっている。その山形に何かあったのか?。」

「今はまだ。しかし、貴方は知っているはずです。彼が戻されるミャンマー戦線が危ないことを。それでも山形を送っていくのかしら?。」

 そう言って若い女は、勇助を置いて窓から消えていった。

「俺は……。俺はどうすればいいんだ?」

 泰造はその自分の言葉でまた目覚めた。夢だった。


 泰造がサイゴンの基地へ戻ると、百式の手入れが待っていた。一回の飛行ごとにエンジンや過給器、通信機など全ての付属機器を分解整備することにしており、その日のうちには基地上空を飛ぶことにしている。この夕刻もそんな飛行をしていた。

 百式の通信機が微かな反応を示した。それは、泰造の組んだ受信機で、増幅回路がその受信感度を三十倍にしていた。そこへ普段の通信とは異なる調子の通信が入ってきた。聞こえてきた通信は、は普段日本陸軍が使う規定とは異なっていた。馴染みのない軍人なら連合国の通信と思ったかもしれない。しかし、それはかつての南機関が作ったミャンマー式通信コードであり、知らぬ者には暗号であっても、馴染みのある泰造は反射的にコウンの通信だと悟っていた。それは、この日ミャンマーへ山形勇助派遣されることへ反対するコウンの個人的な通信だった。

「今、ミャンマーは、国中全てが日本軍を敵としようとしている。なぜ今になって勇助を送ってくるのか。」

 通信はミャンマー国内の不穏な空気を知らせていた。しかし、司令部へ行っても上官である継父の信造が進めた人事にどう組みしたら良いか、手立てはなかった。

「父上、その段になっての再度のお願いです。撤退しつつある今になって勇助だけがミャンマーへ行かされるのは、取りやめできませんか。」

「彼は優秀な陸軍情報将校だ。友軍の撤退のために働き、必ずお国のために死ねるだろう。」

「しかし、なぜ彼だけを………。」

「貴様、上官、いや、父に向かって意見するのか。」

「彼は生きていてこそ役に立ちます。どうか………。」

「生きて役に立つ?。あいつはミャンマーの小娘に心を許していたじゃないか。あういう衒いはせいぜい死なせて役に立たせるしかない。」

 これ以上の議論によって、今密かにサイゴンに潜ませている勇助の身重の妻を目立たせてはならなかった。


 その夜のうちに、泰造は勇助を海軍病院の補助施設にいるルインの元へ連れて行った。ルインはもう直ぐ臨月であった。

「ユースケ、お腹の赤ちゃんが今日もお腹を蹴ったのよ。」

「男の子かな、元気がいいな。」

「男の子?。それなら、名前は汰欣タゴンね。」

「もう名前を考えたのか?」

「私も男の子のような気がしたのよ。だから、男の子の名前だけ考えていたの。」

「そうかあ、これで安心だな。」

 勇助は自らに言い聞かせるように低い声でゆっくりと話し終えた。そした、ためらいつつも意を決したように早口で語った。

「ルイン、俺はミャンマーへ戻ることになった。」

 ルインは何をいっているの?という表情をした。次第にこわばった顔からは、全てを悟ったかのような目から涙が出ていた。

「軍の上の人たちの指示ね?。」

 だから断れない。だから逃げられない。無口なままの勇助は視線を下にしたまま黙ってしまった。ルインはそれに我慢ならない風に勇助の手を揺すっていた。横にいた泰造は、早く切り上げさせようとして、口を挟んだ。

「彼が行けば、多くの情報が分析できる。そうすれば多くの仲間が救われるんだ。」

 その言葉に、勇助はゆっくり泰造の方を振り向いた、いつもと変わらぬ表情だったが、何かを言いたそうな目をしていた。しかし、ルインは泰造が今まで見たことのないような眼で泰造を睨んでいた。

「なぜなの」

 彼女はそれしか言わなかった。


 泰造は、格納庫から司令部付きの百式を繰り出した。サイゴンの空港から、プノンペンを経由してでミャンマーへ送り届けていた。しかし、制空権を失っていたこの時は、勇助を落下傘で送り込むしか手段はなかった。

「泰造、俺一人だけのために飛行機を用意してくれて、すまなかったな。」

「いや………。」

 泰造は口が重かった。死ににいくことがわかっているはずの勇助は、涼しい顔をしていた。間も無くヤンゴン上空だった。

「では。妻をよろしく。」

 そう言って勇助は三月の暗闇の地上へ落ちていった。


 …………………………………… …………


 勇助を送り届けてから、数日後、軍の通信から帝都が大規模爆撃に見舞われたという知らせが届いていた。

「帝都が?。」

 泰造は本土から遠いこの地で敗色が濃くなっていることから、泰造がなんとなく予想していたこととはいえ、恐れていたことが現実になっていた。ショックなことだった。しかし、続報には泰造にとってより身近な地名が出ていた。

「被害地域は押上以南の深川、木場一帯の帝都下町地域。復旧作業にあたる軍および警視庁によれば、被害地域はほぼ全滅。死傷者、行方不明者多数。生産拠点は全て……。」

 呆然となった泰造の顔には、明かりに照らされた電文の文字が泳いでいた。

「深川、俺の家、我妻祐子、我が子武史。」

 泰造は悪夢を繰り返し思い出すように、独り言を繰り返した。

「深川、俺の家、祐子、武史 ……。いや、きっと大丈夫だ。」

 泰造は、何もわからないまま、また、あえて考えないようにして前線と司令部、また、航空第五師団などとの情報交換業務に忙殺された。


 勇助を送り届けた後、泰造はルインのところへ行く気持ちにはなれなかった。なぜなの、と短く呟いた後は黙ってしまったルインが、心も口も閉ざしていることは容易に想像できた。しかし、会いに行かなくともルインのひと言は泰造に問いかけ続けた。それは実際には語られていない言葉だったが、泰造にとっては現実だった。

「なぜ、勇助をミャンマーへ送ってしまったの?。何故、何故?。」

「許さない、絶対に許さない。」



 その夜、泰造は夢を見た。その夢をルインも見ていた。ルインの目の前に、厚い布に包まれた赤児を抱いた青白い女がたった。勇助が日本に残してきた女のように見えた。その女は、そっと寄り添う白衣の男女に付き添われて踵を返そうとしていた。ルインは思わず声を掛けた。

「勇助は行ってしまったわ。もうここにはいないわよ。」

 その女は立ち止まってルインの方を振り向いた。

「 勇助さん?。ああ、彼もここに居たのね。」

「そう、もう、彼は生きて戻ってこないわ。」

「彼には未だ死んでいないわ。それに貴女には息子さんもいるじゃないの。」

「でも、貴女の勇助は、行ってしまったのよ。」

「私の?。」

 その女は困ったように微笑んだ。

「私のではなくて、貴女の愛する人ね。でも、私の愛する人のために、これからのことを見ていてください。」

 その女は、そういうと、そのまま二、三歩進み、ある男の前に立った。彼は、あの泰造だった。ルインは、これは何事だろうと考えつつ見守った。

「泰造さん、貴方に武史を見せにきました。」

 泰造は目を覚ました。

「祐子、ここへこれたのか?。どうやって?。」

「特別にこの淑香さんたちに連れてきてもらったの。」

 横にはあの白い羽衣を着た女と男が立っている。あの雨の夜の男女たちだった。泰造は身を起こして祐子の抱く赤子をみた。よく眠っているようで、泰造が抱いても武史は目を覚まさなかった。ふとみると、赤子の下腹に鋭い木片が刺さっている。

「なぜ刺さったままにしておくんだ!。ダメじゃないか。」

 泰造は思わずその木片を抜くと、傷痕から血が流れた。

「いえ、もういいのよ。私たちは、お召しになった方のところへいくのですから。そこで、また立つ日を待って休ませてもらうことになっています。」

「お前には傷はないのか?。」

「無傷ではなかったわ。多くの咎が私にあったわ。でも、もういいのよ。」

 ここで、泰造は何かに気づいたようだった。

「武史は息をしていない。」

「そう、私もよ………。ここにいる私と武史は単なる影。貴方の脳に語りかけていたの。もうさよならね。」

「ま、待ってくれ。何があったんだ?。どうしたんだ。」

 ふとまわりがあかるくなり、辺りには誰もいなかった。泰造は木片を握りしめたまま呆然としていた。

  三週間後、泰造のもとに祐子と武史が発見されたという一報があった。


 ………………………………………………


 既に四月となり、サイゴンは雨季になる直前の最も暑い季節になった。ルインのいる部屋へ、強い日差しに照らされた外から熱気のようなゆるい風が吹き込んでいた。その風に嬲られるように、ルインは死んだように眠っており、その横には今朝生まれたばかりの男の子が眠っている。


 夕刻になり、赤ん坊はぐずり出していた。ルインは疲れ切った体を起こして赤ん坊を抱え、乳を含ませていた。ルインにとっては幸せを感じるひとときであった。

汰欣タゴンや。お父さんは帰って来ないねえ。」


 その頃、泰造はぼんやりとしたまま愛機百式の格納倉庫へ歩いてきた。しかし、完全に閉めたはずの格納庫の扉は隙間が空いていた。

 布をまとった若い男が百式の操縦席を覗き込んでいる。

「だ、誰だ?。」

「シー。静かに。」

「?。」

「先程から通信が途切れ途切れに入ってきています。あなた方の周波数帯ではないですし、言葉ではない記号を伝えています。」

「これは、我が軍最高機密だ。何故それを知っている?。」

 操縦室の通信機は普段とは異なる諜報モードに既に調整済みだった。その通信はかつての南機関が作ったミャンマー式通信コードに基づくものであり、以前コウンから受けたものと同じだったが、今では勇助と泰造しか知らぬ暗号であった。内容は「英軍グルカ兵がミャンマー国内へ侵入を開始し、日本軍が既に撤退しつつあること、勇助が取り残されていること、我々が日本軍の廃棄した滑走路を英軍向けとして整備しているから、明後日未明三時に空港へ勇助を必ず取りに来い」という一報だった。しかし、妻や息子を奪われた今、仲の良かったコウンの通信も耳に入らなかった。

「何をためらっているのですか?。」

 その声の方を振り向いたが、もう誰もいなかった。


 その夜、泰造は暗闇に紛れてルインの部屋を訪ねていた。コウンの連絡をルインに伝えるためだった。既に遅い時間であり、蚊取り線香の煙が立ち上る部屋で、ルインは赤ん坊とともに眠っていた。夢を見ているのであろうか、彼女は譫言のように勇助の名前を度々呼んでいる。

「勇助は行ってしまったわ。」

「もうここにはいない。」

「もう、彼は生きて戻ってこないわ。」

 その言葉は、妻と子を失った泰造の心に現実の苦しみをあたえ、また彼自身が彼女の最愛の家族を失わせたことを思いださせた。


 ルインは夢からようやく目覚めた。そして、人の気配を感じて慌てて起き上がっていた。ルインは少々はだけながらも赤ん坊を抱えた。その姿に、泰造は思わず涙を流していた。

「彼が生きている。しかし、彼は敵の中にあってルインに匿われている。」

 ルインはその言葉にすぐに反応していた。

「やっぱり」

 泰造は彼自身が勇助を送り込んだことがあり、ルインの前に立っていることは辛かった。妻たちや戦友たちを死に追いやり、泰造や将校達がまだ生きていた事実は昼も夜も、彼を苛んでいた。ここまで来たにしても、もう生きる気力を失っていた。泰造は黙し続けて、絶え間ない呻きに骨まで朽ち果てていた。その時、泰造はただ心の中で誰かを呼びもとめ、嘆き叫ぶような祈りのみで歩んでいるだけだった。

「俺のしたことは………。」

「もういいの。」

 ルインは言った。

「貴方の奥様に会ったわ。」

 泰造はその言葉に驚いた。祐子は泰造に会いに来てくれた。そのことをルインは知っていた。

「貴方は一人になってしまったのね。」

「私はヤンゴンへ必ず彼を迎えに行く。この命に代えても。」

 しかし、あくまで隠密行動だったため、いつ行くとは、言えなかった。また、帰って来られる保証はなかった。


 ……………………………


 その日、泰造は、五月のスコールの中に百式を飛び立たせた。燃料タンクには、満タンのガソリンが充足されているにもかかわらず、百式は雲を抜けて高高度に達していた。

 コウンの通信によれば、ヤンゴンの空港は英軍グルカ兵が襲い来たものの、ミャンマー側が先に占領しているということだった。既に滑走路が再建されているが、まだ防空陣地もなく、照明もないという報告だった。

「北極星を背にしてそのまま着陸し、滑走路の端部でユースケを乗せる。チャンスは一回のみ。」


 タイの上空で悪天候の雲の上に出た。ヤンゴンに達して北極星を確認すると、再び雲の下へ。悪天候の中、泰造は操縦士の勘を頼りにまっすぐに降下していった。上空へ差し掛かると、対空陣地はまだできておらず、やはりまだ対空兵器は機能していないことが見て取れた。泰造はエンジンを極力抑え、翼のフラップをいっぱいに広げて百式を静かに着陸させた。


 滑走路の端部に達して機体を転回させて止めると、豪雨の中、密林から二人の人影が走ってきた。

「スピットファイア戦闘機一個編隊がこちらに向かってきている。逃げ切れ。」

 コウンは勇助を機内へ押し込み、泰造に声をかけた。

「我が友よ。ありがとう」

 泰造と勇助は、顔を向けたコウンにそう声をかけ、再び飛び出していった。雨の中、警報が響き渡り始めた。やはり、気づかれていた。左から、発砲音が聞こえてくる。しかし、機関砲ではなく、ただの歩兵の自動小銃らしかった。泰造は勇助がまだ風防を閉じきれていないにもかかわらず、百式を飛び立たせていった。


 百式は、飛び立って暫くは雨に打たれながらも真っ直ぐに巡航していた。次第に雲は晴れて行った。しかし、タイ国境に差し掛かると、右手に戦闘機の群れが見えていた。

「あれはやはりスピットファイアだな。逃げ切れるか?。」

「ああ、あいつらの航続距離は、短い。この機体を持ち帰る気もないから、南の海へ達することができれば充分だな。」

 しかし、少しばかり、飛び立つタイミングが遅かった。数機の編隊は百式の速度を凌駕しており、百式はじりじりと距離を詰められていた。時折エンジン部を狙うように、スピットファイアの20ミリが機体をかすめている。

 泰造は、勇助に言い放った。

「どうせ、俺の子孫なんてもういない。子供が生まれたお前はここで落下傘で降りろ。俺はあいつらを巻く。どうせ俺は………。」

「何を言っている。逃げきるんだ。」

「そう、逃げ切るのです。」

 いつの間に乗り込んでいたのか、泰造の肩の後ろから若い男女が語りかけた。勇助はいつの間にか眠っている。

「あんたらの仲間が俺の子孫は救われるとかなんとかいっていたよな。しかし、俺の家族はみんな死んでしまったじゃないか。」

「貴方は信じていないのか。」

「いや、信じているさ、俺の命は勇助のためのもの。その勇助の子供達が俺の子供だ。」

「貴方の体から出た子供が貴方の子孫となり、三代目が勇助やその子供達に救われるのです。貴方自身も逃げ切らなければなりません。」

 そう言われた泰造が思わず反論しようとして振り返ったが、そこには誰もいなかった。気づくと、追撃機は数機のみになり、機関砲の命中しかねない距離まで近づいていた。そう思った瞬間、百式はさらに上昇を始めた。

「付いて来られるか?。」

 高高度に達すると、次にはマイナスGをかけたまま急降下を続け、また上昇を繰り返した。泰造はそれによって燃料の消耗を意図したのだが、英軍機はエンジンの不調を起こし、全ての敵機がついてこられなかった。

「もう、大丈夫だ。」

 しかし、百式はいつの間にか右エンジンを撃ち抜かれていた。

「勇助、大丈夫か?。」

「ああ。」

「もう、この機体は持たない。しかし、燃料はもうほとんどなくなっている。不時着させよう。」

 そういうと、泰造は、高高度から百式を落下させていった。

「待てよ。もう敵機はいないんだろ。戻れないのか?。おい。」

 後の声は聞こえなかった。すでに高度は数メートルであった。


 ………………………………………………



 雄二は再び地上への隘路を戻っていた。淑香の後を追ってのみ帰れる道だった。

「貴方、あの出口を出たら、もう、問題なく戻れるわ。」

 梯子のような階段を降りる行程の途中で、淑香は下を指差して叫んでいる。淑香より先に降りている雄二は首を横に振った。

「いや、このままついていくべきだ、と虫の知らせが教えてくれている。」

「そんな知らせはないはずよ。別の何かと混同しているわ。」

 ついていくべきだというのは、確かに虫の知らせではなかった。たぶん執着心なのかもしれない。しかし、淑香の教える通りに従うべきだということも、頭ではわかっていた。たぶん、あとは一人で普段の生活に帰るべきなのだろう。しかし、それでは淑香を失ってしまうという確信があった。

「あなたが執着する限り、私はもう自由に動けないのよ。わかっているの?。それとも、御使みつかいに心を奪われたというの?。お願いだから、私のことは忘れて。私自身がこの体に縛られていると、正常な判断と活動ができなくなるし、貴方も人生がめちゃめちゃになるわよ。」

「『戒めとしてこれからしばらく貴方は私から心が離れなくなる』と宣言したのは、君じゃないか?。」

「でも、その前からこの状態じゃなかったかしら。ねぇ、私のことは、もう忘れていいのだから。」

 しかし、雄二は態度を変えなかった。淑香は、降りる速度を上げた。立ち止まって足下ばかりを見ていた雄二は、何事かと上を振り向いたところへ、淑香のフレキシブルなシューズが雄二の手を踏んでいた。雄二が進めなくなっているにもかかわらず、淑香は強引に降りてきた。雄二が慌てて手を引くと、滑り落ちた淑香の身体は雄二の肩を跨ぐ形で、二人は固まってしまった。淑香の長い髪が雄二の鼻をくすぐる。さらに淑香は業を煮やして雷を落としたが、雄二は飄々と言ってのけた。

「僕たちが見てきた人間はいずれも動じなかった。泰造さんも、勇助さんも、それにこちらの世界の民生だって。なぜなら、捨て身だったから。それが突破力だった。もう、僕は何があっても動じないよ。」

「少し誤解があるわ。貴方の勇気と強さは、初めからそなわっていたものなの。だから、そのことは今学んだことではないはずよ。なぜなら、貴方にはいつも、世の終わりまで共にいてくださる方があるから、その強さがくるの。私が原因ではないわ。だから、私に執着することは、論理的ではないわ。」

「そう、僕はもう君しか見えないから。」

「もうしらないわよ。」

 淑香は雄二の執念にほとほと困り果てながら、元の教会の玄関へとたどり着いた。

「仕方ないわ、とりあえず現代にもどって、現代のタオの海へ行きましょ。」

 少し傾きかけた夏日の中を、二人は戻っていった。

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