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ムッツ

 勝つまで繰り返される。

 負けたら悲劇の中に放り出される。

 勝つまで救い出されはしない。


 むしろ、救い出されるようなことはないというわけなのか。

 負けたらいけない、勝たなければいけない。

 そうしたら救い出されるというよりも、僕が実力で抜け出したという方が正しいくらいに思えるじゃないか。

 だったらだれも、どうしたって、僕を救い出してくれるようなことはないというわけだ。

 だって、そうじゃないか。


 ”勝敗ヲ決メナケレバナラナイノダロウカ”


 そんなことをどうして僕に尋ねるのか。

 知りたいのは僕だ。聞きたいのは僕だ。


 ”セッカク掴ンダノニ、擦リ抜ケテイク、喜ビヤ幸セ。楽シイ記憶”


 離れないように強く掴んだら、放さないように強く掴んだら、喜びも幸せも楽しさも、強く抱き締めていられるのだろうか。

 包み込んでもらえるのだろうか。

 楽しい記憶に、柔らかく包み込まれるだろうか。


 ”手ニ入レルコトサエ、何時シカ諦メテシマッテイタ”


 諦めてしまっていたものを、手に入れるどころか、離さないでいたいと願っているのだ。

 だから邪魔をするな。

 邪魔をされている? いいや、僕は励まされている?

 僕は何を願い何を捨てたのだろう。


 この惨状からただ眼を逸らしたかった。

 未来を見るのでも過去を見るのでもよくて、僕は今を見ていたくなかった。

 けれど眼を逸らしているのもいけなくて。

 ならば僕はどうしたらよかっただろう。僕はどうしたらよかろう。


 ”今度コソ、勝ッテミセル。必ズ勝ッテミセル”


 こんなに明るい言葉を投げ掛けてくるだなんて、どういうつもりなのか。

 苦しい。苦しい。

 近付いてくるのが苦しい。

 この苦しい声が、僕と似ているところが苦しい。


 僕と近付いてくる。僕に似てくる。

 そんなことはしないでくれ。

 苦しくって仕方がないから。


 繰り返されるところから少しずつ先へ進んできている。


 ”愛ヲ得テ、幸ヲ得テ、思イ出ヲ抱エテ”


 僕は先へと進んできているんだ。

 勝利が本当にあると信じて。

 勝利は目前であると信じて。


 結局、今までは、僕が逃げていただけだから。

 それくらいわかっているから。それがもうわかったから。

 僕は先へ進むことを決めた。

 この声の正体はわからないままなりも、そうしたら少しずつ怯えることもなくなってくるんじゃないだろうかって。


 権利がないなんてもう言えない。

 考えて、ちゃんと進んでいかないと。



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