ヨッツ
もう止めてくれ。もう言わないでくれ。
諦めるのが正解だというのか。それなら諦める。
諦めるから、これだけはもう止めてほしいんだ。
この”声”それだけが、僕には苦しくて、苦しくて。
”愛? 愛? 愛? 愛?”
止めろっ!!
愛は愛だ。
どうして僕は愛を語ることすら許されないというのだろう。
愛は愛だ。
それのどこに文句がある。
”愛シテ愛サレテ、愛サレナクテ”
愛が失われて行ってしまうことが、必然であるように言うのだ。
僕の体を包む返り血は、こんなにも赤々と燃えるような色をしているというのに、それなのにどうして愛を否定されよう。
それを持っていないと僕が言われなければならないだろう。
何も間違っていない!
僕は、間違っていない……。
”過チノ山ハ、ボロボロト崩レ始メテイタンダ。全テ重ナッテシマッタ”
知らない。僕はそんなものは知らない。
何か、過ちの山とは何か、僕は知らない、僕はそんなものを知らないと言っているのだ。
崩れるなら崩れてしまえ。全部、壊れてしまえ。
崩れ始めているのなら、それはきっといいことだ。
過ちの山など、崩れ去ってしまえ。
全て重なるってどういうことだよ。
そもそも僕は何を……。
正と愛と生と相。
なんだそれは、知らない、それを知らない。
”馬鹿メ。重ナッテイルモノヲ、見テミロヨ”
不気味な笑い声まで聞こえてきそうなものだったので、僕は耳をきつく塞いだ。
音なんて少しも入って来ないように、全てシャットアウトするように、全力で潰す勢いで僕は耳を塞いだ。
耳なんてなくなってしまえとすら思った。
どうせ僕は言葉を発することはできないのだ。
どうせ僕にはものを考える権利などないのだ。
それなら耳なんてあってもなくても構わない。
むしろない方がよっぽどましなくらいではないか。
”結局ハ同ジナノガ、マダワカラナイノカ? 結局ハ、繰リ返サレテイルノダトイウコトガ”
わかっている。わかっているよ。
いくら僕だってそれくらいのことはわかっているって言っているじゃないか。
結局は全て繰り返されているばかりなのだと、よくわかっている。
でもわかっているからって、それを僕にわからせて、それで何をどうしようというのか。
もう、わかっているから……。
わからないのか? その問いに、わかっていると答えたなら、悟らせようとする声はなくなるのだろうか。
口に出して問いに答えなければいけないだろうか。
それとも、わかっていると主張したところで、わかっていないと棄却されてしまうのか。
わからないよ。
そうしたら、わかっているかもわからない。