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誰しもが  作者: たこみ
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第四話 潜在する

「今回ばかりは本当に頭にきた」


 枕元の腕時計で時間を確認した津田さんは、良い子のみんなは絶対に真似しないようにって感じ?とふざけて言うので、一瞬この話はやめにしようかと思った。


「やられたからにはやり返してやりたいわ」


「警察には相談したんだろ?」



 眠気をこらえた声の津田さんは、早くこのクイーンサイズのふかふかのベッドで深い眠りに入りたそうにみえる。


「したってムダよ。ずいぶん前から何かあるたびに相談してるのに警察は何もしてくれないから犯人は捕まらないままだもの。今日なんて朝家を出たら庭の植え込みに大量の生ゴミが不法投棄してあったわ」



 津田さんは吸い始めたたばこを私に渡すと、お父さんに仕返ししてもらったらどうだと言った。

 私が言うのもなんだが、彼は健康に気を使っているのだからたばこなんてやめればいいのにといつも思う。


「私偶然見たんだけどね」


 たばこを一口吸うとそれを津田さんに返した私は、守の彼女の話をした。


「守くんて道路を隔てたところに住んでる子だっけ?」


「そう。この間守と会う予定もないのにうちの地元にいたのよ。変じゃない?」



 退屈を覚えた人特有の表情をした津田さんは、自分の首筋を揉みながら下を向いて欠伸をすると、たまたま行き先が華の最寄りの駅だったんじゃないのか?と言った。


 彼の面倒臭そうな返答に肩を落とした私は、急に冷めた気持ちになってそうねと呟いた。


「守の彼女って誰もが好感を持つような女性だし、そんなことするわけないわよね」


 相談に応じたのならもう少しやる気を見せろよと思いながら津田さんに背を向けると、私はベッドの中に潜り込み、眠りに入ろうとしているフリをした。



 この人は、あくまで欲求不満のときに性的喜びを与えてくれるというだけの存在なのだ。







 新しいスマホのケースを買ってやると約束すると、崇はようやく口を開いた。


「よくわからないけど、気の利く女性だと思うよ」



 駅前のバス停留所で崇を見かけた私は、落書きや生ごみの犯人の手がかりを探ろうと彼に近づいていった。

 今朝は雨で駅まで自転車で来なかったので、節約したいが今日は帰りもバスでいいやと思ったところだった。


「それと、相当兄貴に入れ込んでて、四六時中電話がかかってくる」


 それを聞いた私は信じられないと思った。


「押しの強い女性ひとなの?」


「どうだろう。わかんないけど男の趣味がバグってることは確かだね。だって兄貴だぜ」


 理解できないという顔の崇を横目に、欠点がなさそうなところが気に入らない女だなと思った。

 

 

 バスを降りて家の近所を歩いていると、私は無い知恵を絞って崇にボソッと言った。


「あんた彼女に目を覚ませって言ってやんなよ」


 すると崇はそんなことは絶対言わない。この間も兄貴に家族ででかしたと言ったばかりだからと返してきた。



「あのさあ、彼女は一見私みたいにいい加減な人間じゃなさそうだけど・・・」


「華!」


 崇が声を押し殺して私の腕を掴んだので私は言葉を詰まらせた。


「何・・・!?」


「うん・・・、今誰かあの辺りの電柱の陰からこっちを見てた」


「え!?」


ぎくっとした私は崇が指差した方角にある電柱の辺りを凝視したのだが、その人物の影も形も見当たらなかった。



「何だろう・・・。華、誰かに恨みでも買ってるわけ?」


「な、何言ってるのよ」


 やはりターゲットは自分なのかと思った私は、口ごもり目が泳いでしまった。



 もう時間も遅いので、私たちはいつもの近道を通らず、交通量の多い道路を喋り過ぎなくらいお互い話し続けて帰宅した。


 そうでもしないと怖くてしかたなかった。






挑んできますね~

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