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誰しもが  作者: たこみ
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第一話 制御不能

 どうかしていた。



 窓の外のくすんだねずみ色の空を見上げながらそう思った。


 欲求が満たされたという満足感はあるが、どう考えても間違いだった。



 大きな溜め息をつくと、私は隣で寝息をたてている男の顔を覗き込んだ。


 この素人童貞っぽい顔をした大浦守おおうらまもるは幼稚園のころからの同級生で、私が使い走りをさせていた男だ。


 小さい頃から気が弱く、大人になった今でも私に話しかけてくるときには『おごるからさ』という台詞を言ってくることが多い。


 守は常にぼーっとしていて運動神経も悪く、漫画の世界みたいに犬に追いかけられたり、ドジなので糞を踏んだり、怪しい磁気ブレスレットを買ってしまったりする鈍くさいヤツだ。



 よりによってそんな守となぜベッドを共にしているのかと、ところ狭しと棚に並べられているDVDやら本を見ながら私は再考した。


 酒に酔っ払って守の家を自宅だと思い込み、自力で二階に上ったことは覚えている。



 先ほどまでの雲が流れていって日の光が窓から差し込んできたときには服を着たまま守とセックスしたことも思い出してしまっていた。



 考えてみたら勝負パンツじゃなかったなと思ったが、相手が守だからまあいいかと安心した。



 昨晩は誤ってしまったが、通りを隔てたところに私の家はある。


 幼稚園から始まった私と守との付き合いは守の大学進学の時点で途絶えたものの、最寄りの駅から同じバスに乗り合わせることがあるので一応はまだ続いている。


 私は短大や専門学校などにも入ることなく、なんとなくフリーターをしている。



 親同士は仲が悪い。


 うちの父親が守の父親から学生時代にカツアゲしていたことがどうやら原因らしい。


 守には私と関わらないようにしろと言ってあるようだし、一緒に帰宅する姿を目にすると守の父親は耐えがたいという顔をして悪態をついてくる。


はなちゃん、ゴメンネ。なんかうちの親がいつも・・・」


 守はそういうとき決まって申し訳なさそうな顔をして謝ってくるので、私は平気だよとその都度言う。


 

 すぐそこに横たわっている守の寝顔に目をやると、コイツ尾を引かないだろうかと思った。


 責任を負うなどと言い出したら厄介だ。


 悪いヤツではないのだが、この男の未来の花嫁になるのだけはゴメンだ。



 脱ぎ捨ててあった下着や服を掴むと、時間を確認するために守の携帯を手に取った。



 私は携帯を持っていない。


 電話がかかってくることがイヤなのではなく、月々の料金を支払えないだけだ。



「十時か・・・」


 微妙な時間だなと思っていると、眺めていた携帯が突然鳴ったので少し肩が上がってしまった。


 待ち受け画面を見ると、非通知になっているが取り合えず出てみた。


「もしもし」


「・・・・・・」


 長い長い沈黙の後、プツリと電話は切れた。


「なんだあ?」


 携帯に向って眼を垂れていると、守がもそもそとベッドの中で体を動かしている。


「みゆき・・・」


 守の口から出た言葉は明らかに私とは違う女の名前だった。


「へ・・・?」


 守を覗き込むと、彼は慌てて寝ぼけながらも、あ、いや華ちゃんと私の名前を言い直した。


 きっとすぐに私がかっとなるので怒られると思ったのだろう。



 守に女がいる、いないは興味の対象外なのだが、その相手のことをちゃん付けではなく、呼び捨てにしたりするのだなと意外に思い、少し見方が変わった。


「無言電話だったけど」


 守の隣に座ると私は携帯を投げて返した。


 なぜだかごめんと言いながら携帯を見つめていた守は首をかしげた。


「昨日のって夢じゃないよね」


「・・・・・・。それってiPhoneいくつ?」


 面倒なので話をそらした私に、守は華ちゃん、と深刻な声を出してくるので鬱陶しくなった。


「うるさいなあ。そこの使用済みのゴムを見れば、したかしてないかぐらいはわかるでしょ!」


 本棚の横に置いてあるゴミ箱を顎でしゃくりながらそう言うと、守はお仕置きをされた子どものようにしゅんとなってしまった。



「なかったことにしよう!」


「でも・・・」


 守が口答えしてこようとするので、それ以上言うとあんたの親にばらすよと言うと、彼はわかったよ、と力の抜けた声をだした。


いいお話になるよう頑張ります♪

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