第一話 成り立ち
昔 数え切れない程昔、ある所に少年が誕生した。
その少年に親は居なかった。そしてそこには誰も居なかった。本当に。
来る日も来る日も辺りを彷徨い続けた。
歩くのも嫌になった丁度その時、大きな街を見つけた。
神様達が住んでいる街を。
少年は歓喜した。
まず、神の街で働いた。働いてお金を稼いだ。瞬く間に膨大な量のお金が転がり込んで来た。
一緒に働いていた者が嫉妬した。自分の給金に対してあいつの量はおかしいぞ、と
だが、それは仕方が無かった。
その少年の美貌に神々が骨の髄まで魅了されていたのだったから。
他のものの数百倍や数千倍払ってまで興味を引こうとした。
女だけでなく男でさえも魅了した。
別にそれは狙ってやったことでは無い。自然とそうなってしまったのである。
その少年を妬む者も多かったが、段々そういう者達でさえ魅了されていくのであった。
貯めたお金で家を建てた。凄く立派な家を。
神との交流を楽しみたいが為に家を建てた。
週に一度、盛大な夜会を開いた。
少年は飢えていたのだ。色々なものに。起きると誰も居なくなって周りから人が消えていた。話す相手も心配する相手も憎い相手も全部、存在すらしていなかった。
だから、話し掛けられたのが嬉しかった。愛してくれたのが嬉しかった。喧嘩をふっかけて来てくれたのが嬉しかった。
働くのも好きだった。怒られるのも、褒められるのも。
全部が全部大好きだった。
だから少年は大きい家を造ったのだ。
毎週、色んなものを観られて満足した。
その大半が少年への求婚だったが、そんなもの気にしない。
全て断った。少年にはまだ人を好きになるという感情が無かった。
あったのならどう話が転んだのか、誰にも分からない。
とにかく、周りに尽くした。お陰で喧騒が収まり、復讐が無くなり、餓えるものが居なくなった。
いつしか、そんな存在を王として崇め始めたのであった。
王として崇められても、優しい心を忘れず、全員に尽くした。
そんな王に周りも本心から慕っていた。
王は全ての神を愛していた。争いが起これば仲裁をしに行く、それほど愛していた。周りが傷付くのが嫌いだった。そのため王としての威厳を必要な時以外は絶対に出さなかった。
そうこうする内にそこは平和で誰も争う事が無い理想郷と変化していった。
この幸せが取り壊されることが無く、何億年 何十億年 いや、一生続いて欲しかった。
だが、現実は厳しかった。永遠の幸せが外の奴らによって壊された。
みんな哀れにも侵略者によって無慈悲に殺されて行く。
王に力は無かった。誰一人守れ無かった。美貌だけ目当てで独りだけ生け捕りにされた。女王陛下に献上するようだった。
物扱いされる屈辱はあまり無かった。だが、王には今まで持った事の無いような感情が芽生えた。それは、一種の憎しみ。生まれて初めての。
女王に会うと一目で気に入られた。
ずっと籠の中に入れられていたが、女王は気に入り過ぎて檻から勝手に出したりもした。
よく話に付き合わされた。
だがこちらは相手に対して大変根深い怨恨の情を抱いていたので一度も口を開かなかった。
女王はこの少年に大変執着する。その執着っぷりは異常を通り越して笑える程だったという。少年の美貌は相手の人格を変化さしてしまう程の効果があった。
誰一人近づけなかった。ちょっとでも近づいた者は即座に首を斬られた。それは、唯一の実の血縁の妹であっても例外では無かった。少年に隠れて会いに行こうとしたことがばれて殺された。
そんなある日、女王は少年に何か欲しいものはないか、と聞いた。何でもいいぞと。
少年はやっとのことで口を開いた。
『あなたを殺せるだけの力が欲しい。』
その声は今まで聴いた事の無いような美しい、綺麗な声だった。
だが、僅かながら声が震えていた。
ここは強いものが周りを取り締めるといった強いものが全てという所。女王はここで一番強い。
しかし女王は命ごと全ての力を少年に渡した。
その力を受け取った少年は侵略に来た者を全て根絶やしにした。
最終的に殺し過ぎて誰も居なくなった。殺せば殺すほど力がとんでもない程に膨れ上がった。
途方もない力を手にしてしまったのだ。
ほぼ全ての神の力。
力は手に入れたが少しも嬉しくは無かった。
凄く虚しい。誰も居ない。またあの頃に戻った感覚だった。
何かを忘れるため、自身の力をひたすら増加さしていった。
来る日も来る日も。
少年が全てを忘れるぐらいの間。
力を求めた理由を忘れた。自分が存在している理由も忘れた。
何もかも。
全てを忘れた少年は自分のことをミカエラと名乗った。
そして沢山の宇宙を創り、沢山の星を創った。
その星の一つに自分と同じような肢体を持つ人間を誕生させた。
ミカエラは常に人間達を監視した。
出来立ての熱々の星が誕生して少し時間が経って冷め始めた頃に生命の源をそこに落とした。
初めは小さな生き物だったのが時間が経つにつれて争うことを覚えた為に陸地で、誰も居ない所へ移動する者が現れ始めた。
段々、陸上にも進化した個体が現れ始める、空を飛ぶ者。草木を食う者。動物を食う者。
争い事が絶えなかった。結果これまでより知能が高い生き物が現れ始めた。その者はただ単に力だけでなく知能を使うことによって様々な食べ物を得た。
生物が常に気を付けるものがもう一つある。
それは、まとめて言うと環境。
その星は自身よりも大きく赤い星に捕まえられていた。ここの宇宙が誕生した時に生まれ、四つに分裂した内の一つの力によって。
結果、この星は黄色く輝く星の周りを回り続け、光の当たる時間が長い所は暑く、短い所は寒い。といったようになった。
そしていきなり大気の関係で流れてくる風が乾燥したものになり、そこは元々草木が生い茂っていたのだが、枯れ始めた。
そこの木にへばりついていた知能の少し高い者は木が無い状態でどうやって生きていこうかと考えた。
最終的に敵を何時でも見つけられ遠くを見渡す為に背筋を伸ばした。
そこからが爆発的だった。
食べ物を料理し始めた。自分より大きいものを大群で捕まえたり、武器を作ったりした。
みんなが団結するために一番偉い者が指揮を執った。大きい者が小さい者を取り込み、小さい者は大きい者に服従した。
その光景を観て、心に何かミカエラは感じるものがあった。
地上に降り立ち、力を出さず、人と少しの間共に過ごした。
すぐに争うが、悪い奴も良い奴も基本的に面白いと思った。
人と接することによって何か満たされていくものがあった。
少しの間、離れると星が消えていた。正直驚きだった。
争いが原因だった。争いの為に技術力を昇華させていった。
驚きの言葉しか出ない。
滑稽に思いつつ、少し心に引っ掛かるものがあった。
もう少し、人間と居たかったなと。
ミカエラは別の宇宙に前と同じような環境の星を創った。
同じ様になる為に星に生命の源を落とすところから始めた。
以前と同じようにしたが、変更した所がある。
それは気紛れで力を一種類と幾つか標準模型を増やしたりしたことだ。
同じ様に進化し、遂に人型まで来た。
ここまでは、完全に同じだった。
だが、人型が第五の力を扱うようになってから以前とはまるで異なった様子となった。
こちらの人型は第五の力ばかりに頼って四つの力を利用しようとはあまりしなかった。
人は堕落していく生き物だ。どんどん楽な方へと逃げていった。
結果、前創った星のようにはならず、破壊力の凄まじい兵器は開発されなかった。文化も永らく停滞したままだった。
それはミカエラにとって嬉しい事でもあった。星が壊れないということに関して。
壊れてしまったとしてもまた創り直せば良いだけのこと。それが僅かながら面倒というだけのこと。
第五の力の星に遊びに行った。
沢山の人々や亜人を何となく助けた。自分の為に。
助ける度に何か思い出して来るものがある。
幻想的な力を使い人類を助けていくと人類がミカエラを神として崇めた。
大きい宗教が出来た。ミカエラを唯一神とする。
時間が経ち、二つの派閥に別れた。
それがユーセルとホッセル。
どちらかがミカエラの本当の名前。
ただ、成り立ちを知るのは実際ミカエラを見たことがある超上層部の連中のみ。
ミカエラはめったに人前で姿を見せない。
なので、正直消えたとしても分からない。
いつからかミカエラは長い眠りに着いて、頑丈な透明なもので出来た棺に入っているらしい。
それを所有しているのは、ユーセルかホッセルかのどちらかだ。
どちらもこちら側に居ると主張している。
両者は今日も争っている。
落としたものー アミノ酸類たっぷりの隕石。
四つの力ー 重力 電磁気力 強い力 弱い力