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記憶喪失剣士と金髪JK  作者: 不二ノゾミ
第一章
5/6

死闘


ーーハイルの森 戌の正刻


『さらば、不運な子供よ』


闇を纏う黒き竜は青い炎を大きな口の中に含み少女を狙って一気に噴射した。


少女は諦めたように倒れ込んでいた。


炎が少女を襲う瞬間に少女の姿が消える。


『迷子かクソガキ!? 』


口角をあげ悪意たっぷりの笑みで少女を抱きかかえた青年は竜の背後に立っていた。


竜が怒りを露わにしたように唸りをあげ振り向き様に炎を吐き出すが簡単にアレンはそれを簡単に躱してみせた。


『立てるか? 』


そういってそっと少女を下ろす。


『なんで.....'』


『別にお前を助けに来たんじゃありませーん!夕食を採りにきただけですぅ』


動揺する少女に顔を歪ませ挑発するように変顔を披露するアレン。


そんな二人をよそに黒き竜は先ほどより巨大な炎の塊を噴射する。


アレンは鞘から抜いたいぶし銀の大剣で炎を一刀両断する。


『う、嘘......』


目の前のマジックのような攻防に少女は息を呑む。


アレンはそのまま凄いスピードで竜に駆け寄り懐に入った瞬間、真っ二つに巨大な身体を切り裂いた。


大量の血飛沫があがりあたりは真っ赤な水溜りができていた。


『ははっ、まるで血の海だな』


『あんた、何者なの?』


昼に一悶着あった男が自分よりも何十倍も大きな竜をあっさりと殺した姿を目撃し少女は愕然としていた。


『ただの剣士さ、記憶喪失のね!』


『記憶喪失!?剣士?』


『おう!だから素性とかわかんないし、何者とか聞かれても困る』


『ねえ、ここって日本なの!?てか現実なの!?』


少女は意味不明な状況に何から把握していいのかわからなくなってしまった。


『ニホン? ってのはわかんないけど、ここは現実だぜ!夢でもなんでもねーよ』


少女は困惑を隠せず、腰を抜かして座り込んでしまう。


『わっけわかんない!!』


『まぁ、折角の火竜だしさ鍋にして食おうぜ! 帰るぞ!なんも食ってないんだろ? 』


『うっ......』


『俺はアレン、アレン・ローンだ』


そういってアレンは手を突き出して握手を求めた。


あっけらかんなアレンの態度に不満を抱きつつも空腹に耐えられない少女は頰を膨れさせながら突き出された手を掴む。


『私はーー』


『おい待てよ、誰の許可得て鍋にしようってんだ? 』


少女の声を搔き消すように高い女声が暗い森に響き渡る。


アレンは少女を庇うように後ろにし気配のする方へ剣を構える。


張り詰めた空気の中、闇から姿を現したのは漆黒のローブに包まれた小さな身体で黒に赤いメッシュを刻むように染めた長髪をなびかせた少女の姿だった。


鋭く燃えるような赤い瞳はアレンを捉えるように睨みつけていた。


『てめえがハカを殺ったのか? 』


ゆっくりと近づいてきたローブを纏った少女はナイフをアレンの心臓部に突き立てる。


『あーあのトカゲは俺がぶった切ったぜ、もしかしてお前のペットか? 』


アレンは不敵な笑みを浮かべながら底意地の悪い声で目の前の少女を見下ろす。


その直後、アレンは大剣を振り下ろした。


ローブを纏った少女は後方に高くバク転して身軽に避ける。


『私はオズ・ストランド、その命もらうよ』


『アレン・ローン、それはお断りだ』


2人はお互いの名を名乗った後に再び戦闘を開始した。


『なんなの、こいつら』


少女は2人の攻防を見て後退りしていく。


オズは地面に手を突き、立方体のガラスのようなものを繰り出していく。


『ん?これは結界か、厄介だな』


アレンはめんどくさそうにそれをうまく避けていく。


『へっ、私の本命はこっちだ!』


気を取られているアレンの隙を突くようにオズは少女めがけて突っ込んでいく、それを防ごうとアレンが長いリーチを生かした大剣でオズを攻撃する。


オズはうまく結界を展開し斬撃を防いだ。


『この小娘になんか用か?』


『ちょっと野暮用でね、その娘を連れて帰んなきゃいけないんだ』


オズは女の方を指差してそう答えた。


『もし、その娘を渡してくれたらさっきの件は不問にするよ?あいつは私の命令無視した罰が下ったということでね』


オズは続けてアレンに交渉を持ちかける。


『悪いがそれはできない』


アレンは少女を庇うように一歩前に出る。


『私、あなたのことなんて知らないわ!』


少女はオズに向かって強気な口調で言い放つ。


『知らなくて当然、一方的に容疑をかけてるんでね!』


オズはそう言うと同時に大量のナイフを2人に投げつける。


アレンはそれを大剣で全て防ぎ、その大剣で反撃する。


オズが体勢を崩した瞬間にアレンは一気に間を詰めて大剣を振り下ろすが、間一髪で交わされ片腕を結界に閉じ込められてしまう。


『勝負あったな、なかなか楽しかったよ』


そう言ってアレンの肩を叩きオズは少女の元に駆け寄る。


『じゃあ、娘はもらってく』


そう言うと少女の両手を結界で拘束した。


『クソッ!動け!動けっ!』


アレンはどんなに力を入れても結界から手を抜くことができなかった。



『ありがとう。私は大丈夫だからもう闘わないで』


震える声を振り絞った少女は悲しい顔で笑ってみせた。

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